第三百五十四夜『まじかるバゲージ- Lagrangian point-』

2023/06/03「花」「犠牲」「増える関係」ジャンルは「邪道ファンタジー」


 ついに完成した、これこそ世紀の発明だ!

 これは一見、大き目な普通の手提てさふくろ。しかし、この手提げ袋は中身の重さをほとんど全く感じない魔法の手提げ袋なのだ! 原理は簡単、この手提げ袋の内部は人為的な一種のラグランジュ・ポイントとなっており、まるで無重力の様に軽いのだ!

 アイルランドの英雄、フィン・マックールは何でも収納できる魔法の袋を持っていたと言われているが、これは正に現代のフィン・マックールと言えよう!

 現に、この袋の中には本来であれば、私には両手でも持てない程の重さの内容物が入っている筈だ。しかし、私はこの手提げ袋を楽々持ち運べている。

 そう、この手提げ袋には金属製のダンベルが数本入っているが、この手提げ袋の力を持ってすれば、バスケットに数輪の花が収まっているのに等しい!

 私は酩酊めいていにも似た高揚感を覚え、口笛を吹きつつ手提げ袋をミュージカルの役者がする様に軽快に振り回した。

 その瞬間しゅんかんだった。私の手提げを振り回して頭の真上に手提げ袋の口が来た時、手提げ袋は遠心力が不足し、結果として中身が重力に従って真下に内容物が振って来た。

 即ち、私の頭上に手提げ袋に入れた大量の金属製のダンベルが…

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