第三百四十八夜『気になる写真-FATAL FRAME Ⅱ-』

2023/05/28「水」「橋の下」「増える流れ」ジャンルは「大衆小説」


 すっかりと辺りが暗くなった深夜、二人の青年が車橋の下の水場に居た。二人は丁度、他人には言えない様な短期アルバイトを済ませたところで、一仕事終えて一服している最中だ。

 ところで繰り返すがここは車橋の下で河川の横で、二人は一仕事終えて一服している最中だった。そんなこんなで二人の青年の内の片割れは携帯端末けいたいたんまつをいじっていたのだが、その時カメラのシャッター音がしたが、水音や丁度通りかかった自動車の音で気が付かなかった。

 もっとも、シャッター音が耳に届いたとしても、二人は特に気に留める事も無かっただろう。携帯端末の誤タッチなど気にする事は無いし、この頃はシャッター音を用いた架空請求詐欺かくうせいきゅうさぎも少なくない。だからどうしたと無視するのがこの二人なのだが、それはこの話の本筋ではない。


 しばらく後、二人の青年はもう一人、飾り気の無いシンプルな黒のイブニングドレス風の姿をしたすみを垂らした様な黒髪の女性と共に深夜のファミリーレストランに居た。

 黒髪の女性は飄々ひょうひょうとした態度で何をたのもうかとメニューのスイーツを目で追い、二人の青年は片や居づらそうな態度と表情で、方や相方を問いめる様な表情で居た。

(おい、何で俺達はこんなファミリーレストランで打ち合わせをしているんだ?)

(それは、相手方がここを指定したんで……)

(そもそも俺は何でここに呼ばれたんだ? これは俺の用じゃなく、お前のだろ)

(いや、その、何というか俺の用だけどそっちの用でもあると言うか……)

「うん、決めたわ。バニラアイスにするわ、一番シンプルで一番美味しいですもの」

 男二人が小声で会話する中、黒髪の女性は独り言の様な二人に許可を取る確認をする様に宣言をし、しかし二人の反応を確認もせずに注文ボタンを押した。

「えっと、その、今日この場に集まり頂いたのは他でもありません。さる筋からこちらの姉さんに助言頂きたいと考えまして……本日はお日柄も良く、ご機嫌もまたうるわしく、絶好の会合日和かと……」

「今は夜の一時だぞ」

「おほん、では状況の整理をしたいと思います。まずはこちらの写真を見て下さい」

 青年の片割れが携帯端末をふところから取り出す、その画面にはインカメラ機能で取ったかの様な二人の青年が映った写真があった。しかし本題はそこではない、その写真の中央には、どう見てもこの世の存在ものとは思えぬバケモノ然とした人間が映っていたのだ!

 見れば見る程おぞましく、地獄の様な様相のバケモノだ。姿こそ人間に似通ってはいるが、眼窩がんかは木のうろの様に空洞で、皮膚ひふは血でれてしたたっているし、肉は腐敗ふはいしてうじいているしゴキブリが体をっている。しかし何より悍ましいのは、眼球の無い虚空の眼窩にも関わらず、明らかにこちらを見据えて笑っているのだ!

「お、おい! これってこの間の橋の下の……」

「ああ……じゃなくてはい、そうなります。あの時は気付かなかったけど、なんか写真が勝手にれてました。きっと写真が勝手に撮られていたのも、このの仕業に違いないと思っています。あとこう言う写真は、消すと増えるって話を聞いたのと、この写真が残っていてもたたったり呪われたり、この事を相談する為に写真を送ってもマズい事になりそうだと思い、こうしてこの場で相談した所です、はい」

 青年の片割れは緊張したような声色で、青ざめた顔で、半ば片言の口調で抑揚が貧しい様子で言った。一言で言うと、ひど神経衰弱しんけいすいじゃくした様子だ。

「うーん、見せて下さいな」

 黒髪の女性はそう言うと、先程と同じで相手の反応を確認もせずに携帯端末をぶんと奪った。

「うーん、でもこの写真におかしい所はどこも無いわ。。これは想像なんだけど、幽霊のせいでシャッターを切ったって言うのもそっちの彼の勘違かんちがいで、うっかり操作ミスで自分でシャッターを切っちゃったんじゃないかしら?」

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