第三百四十七夜『スノードームを振って-the Globe-』

2023/05/27「星」「悩みの種」「いてつくカエル」ジャンルは「偏愛モノ」


 スノードームを振る。スノードームの中にはカエルが居て、スノードームを振ると雪が降って来て、カエルはたちまちこごえてしまった。


 スノードームを振る。スノードームの中には高層ビルが建っていて、スノードームを振ると津波が起きて、高層ビルは津波に飲み込まれてしまった。


 スノードームを振る。スノードームの中には半透明の怪獣かいじゅうが座っていて、スノードームを振ると怪獣が倒れ込んでしまい、スノードームの中のものはつぶれてしまった。


 スノードームを振る。スノードームの中にはビデオテープが有り、スノードームを振ると何故だかビデオテープは爆発してしまった。


 スノードームを振る。スノードームの中にはうっすらとした島が浮かんでおり、スノードームを振ると爆弾が振って来て、大きなキノコ型の雲を形成して爆発した。


 スノードームを振る。スノードームの中には何かの板と雪に見立てた物が入っており、スノードームを振ると、雪に見立てられた物がれて、それが鏡である事が分かり、鏡にはすみを垂らした様な黒髪の女性が映っていた。


 昔の映画かアニメで見る様な、おまじないの品々を取り扱う小さな小間物屋があった。

 店の中には、飾り気の無いシンプルな黒のイブニングドレス風の姿をしたすみを垂らした様な黒髪が印象的な店主と、どこかナイフの様な印象を覚える詰襟姿つめえりすがたの従業員の青年とが居た。

 店主の女性は段ボール箱の中に並べられたスノードームを振っては中をのぞき、また別のスノードームを振っては中を覗いていた。

「それは何をやってるんですか、アイネさん? 商品のチェックですか?」

 そう尋ねる従業員の青年の言葉に、店主の女性はこう応えた。

「ああ、これはね、ちょっと昔の事を思い出していたの。いえ、これから起きる事について考えていたのかしら?」

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