第三百三十一夜『ささやかな願いと一発の解決-Wishboard-』
2023/05/10「晴れ」「金庫」「正義の高校」ジャンルは「時代小説」
俺の両の手の中には、ズシリと重い金属で出来た開かないカラクリ仕掛けの箱があった。金属で出来てはいるが
その祖父だが、
開ける事にしたと言ったが、言うは易く行うは
俺は
本当に暇さえあればだ。俺は高校では何時でもパズルをいじっている変わり者扱いを受け、けれども事情を知る友人達からは
しかし俺は箱を理由に
そんな日々が続いたある日、箱が
箱の外枠がカラカラと金属音を立てながら外れ、中から
俺は目がハッキリと
「なんだろうな、この指輪……何か記号みたいな物が
俺は何と無しにその指輪を付けると、その
『願いを言え。その
今度は息遣いではなく、声が聞こえた。
「アークを開けた者? あんたはこの箱そのものか何かか? 願いを言えってのはどう言う事だ?」
俺は
『そうだ、私はその
ダメだ、自分で自分が置かれている状況が理解出来ない。息を大きく吸って、吐いた。この声は自分を箱と言っていたが、コイツの言っている事はイマイチ理解が追いつかない。
「……人が実現し得る願いってのはどう言う意味だ?」
『無限だ。不老不死、尽きぬ富、
俺は目だけでなく、スクランブルエッグの様になっていた脳も、声の説明によって完璧に
「今起こっている戦争を……問題を一発で解決出来る様な手段を確立する……ってのは出来るか?」
俺は自分で発した声が震えている事に気が付いた。そんな積もりは無かったのに、まるで
『
そう声が聞こえたかと思うと、俺は見知らぬ土地に居た。読めない文字、見た事も無い建物、会った事も無い家族連れの人々。
何が起こったのかと思って周囲を見渡していると次の瞬間、周囲の景色全てが吹き飛んだ。
そう、景色全てが吹きとんだ。アニメーションで悪漢の息吹で建物や人々が吹き飛ぶのを見た事があるが、それの百倍以上の光景だった。
建物は跡形も無く
その場に居た俺は風を肌で感じたりしなかったが、この場は地獄としか言いようが無い状況になっていた。あちこちで火の手が上がり、俺はこの風が想像を絶する高温である事に気が付いた。
俺はゾンビの様になった人々と、
「おい、何だ……何なんだよコレ!?」
誰に聞かせるでもなく俺は叫んだ。しかし、俺の質問は意外な形で返答があった。
『言葉の通りだ。
「何を言ってるんだ! 戦争を終わらせてくれるんじゃないのか!?」
俺は力の限り声に向って問い詰めた。しかし返って来る答えは最初と同じく、淡々とした口調で、申し訳無さそうな様子とか、そう言った物は感じられなかった。
『戦争はこれで終わる。私に出来るのは人類に実現が可能な手段の伝授や、途中をすっぱ抜いた結果に過ぎない』
「違う! これは俺の願いじゃない!」
『いいえ、これは確かに貴殿の願いだ。貴殿がこれを望んだ
机の上でうたた
全く、何が俺の望んだ願いだ。ただでさえ寝苦しい真夏だと言うのに、とんだ悪夢を見たものだ。
ふと俺は自分の指を見てみると、そこには記号の彫った石が飾られた指輪が
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