第三百二十八夜『ご希望の品・裏-catch some zzz’s……-』

2023/05/06「黄色」「墓場」「冷酷な魔法」ジャンルは「大衆小説」


 今日と言う今日は堪忍袋かんにんぶくろが切れた。私が何にいきどおっているかと言うと、鬱陶うっとうしいコマーシャルの数々だ。

 テレビを観ればコマーシャル、動画サイトを視聴してもコマーシャル、電車やタクシーに乗ってもコマーシャルを見せられるし、鬱陶しい事この上ない!

 無論コマーシャルがあるから番組や動画サイトは存続できているし、商行為や社会が機能きのうしていると言うのも理解が出来る。だが鬱陶しい事には変わりがない!

 中でも一番嫌いなのは、画面のこちら側を指で突くコマーシャルだ。指で操作する機械のコマーシャルなのは理解出来る、しかし客足り得る視聴者に指を突きつけるとは何事だ! こんな企画にゴーサインを出した連中全員、椅子に縛り付けて何度も何度も指で眼球を突き刺す寸止め行為でもしないと、私の鬱憤うっぷんは絶対に晴れない! 文字通り目には目をと言う奴だ!

 まあ実際にそんな事をしているひまは無い。何せ私の憎悪の対象はコマーシャル全般なのだ、一企業一企業に突っかかってまわるなど、それこそコマーシャルの様に時間の無駄むだと言う物だ。

 そこで私は、一つの素晴らしい考えを思いついた。取りい出したるは一つの鏡、コイツを使って自分で自分に催眠術さいみんじゅつをかけるのだ! その内容は以下の通りだ、お前はコマーシャルを見かけたらコマーシャルが終わるまであらががた睡魔すいまおそわわれる!

 今日は素晴らしい日となるだろう!


 卓上に鏡とコンピューターが置いてあり、椅子にただただ眠っている男が居た。

 彼は一見安らかに眠っている様に見えるが、文字通り永眠していた。

 彼の目の前にあるコンピューターには、新しい商品を知らせるバナー形式の黄色い広告が表示されていた。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る