第三百十五夜『何も無い場所-WATCH OUT!-』

2023/04/22「晴れ」「彗星」「最後の脇役」ジャンルは「ホラー」


 皆さんはねこが、何も無い場所をじっとながめていたなんて経験は無いだろうか?

 二十世紀の物理学者、フェレンゲルシュターデン博士がこの現象に対し、猫は周囲よりも温度が低い一点を知覚する事が可能で、太陽のかげった日の室内で温度の対流が発生した時、その様を観察していると言う仮説を立てたが、結局有効な実験結果は得られなかった。

 実際の所、なんて事は無い。あれは人間には聞こえなかったり見えなかったりする現象でも、猫の可聴域かちょういきであればとらえる事が出来る事に起因する。もしくは、何もしていない状態がたまたま、何も無い場所を凝視ぎょうししている様に見える。主に、この二パターンが実態であると言える。

 要するに多くの場合、猫がぼーっと考え事をしているか、或いは屋根裏でネズミが歩いている音か何かを気にしている……つまりは研究に値しない、つまらない事象であると言える。

 そもそも人間の可聴域は、他の動物と比べて極めて優れているとは言い難い。人間の耳に犬笛は聞こえないし、ウサギの様に聴力に特別優れた生物でもない。それこそ猫は動く物に対して高い視力を持つ生物であり、目で羽虫か何かが今まさに留まったのを凝視していると言う事もあるだろう。


「メーデー! メーデー! ダメだ、この星の猛獣もうじゅうは手に負えない!」

「待ってろ、すぐに向かう!」

「ダメだ、危険すぎる! 母艦ぼかんに帰って体制を整えろ!」

「全くどうなっているんだ、この星は!? 知的生命体の方は我々を知覚出来ないのはいいが、あのネコとか言う猛獣は適確に我々を攻撃してきやがる!」

 猫は羽虫を捕まえるかの様な動作をしたが、飼主は特に気に留める事も無かった。

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