第三百十二夜『給餌と進化-jump the shark-』
2023/04/19「水」「魔女」「希薄なかけら」ジャンルは「童話」
その都市国家の領海、丁度近海と遠洋の中間辺りの位置に小さ目の漁船があり、釣りや漁をする訳でも無くただただ魚に
「なあ、何でこんなんであんな額の金が
「それはな、その仕事をやりたがる人間が少ないから割が良い額なんだよ。加えて船の操縦が出来る人間でなければ、この仕事を受ける事が出来ない」
操舵を担当している青年は、給餌行為を担当している青年が手に持っている
「そうなのか? 俺はあの額が貰えるならやりたいけど」
「ここら辺りの人間からしたら伝統文化に
操舵担当の青年が言う通り、都市国家は質の良い
「ますます分からないな。漁や布が売れるなら、何で餌を海に撒く事に意味があるんだ?」
給餌担当の青年の言葉に、操舵担当の青年は
「この海域な、人喰いサメが出るらしい」
「人喰いサメ?」
「それだけなら珍しくない、問題は人喰いサメが食いっぱぐれると冬眠に失敗した
操舵担当の青年の言葉に、給餌担当の青年は目を丸くして驚いた。
「浅瀬にサメが来て人間を襲う! 本当なのか?」
「ああ、昔は度々あったらしい。それであの都市の人間は、領海ってのは生物みんなの所有する物で人間も例外でないし、領海に住む魚や海鳥も人間と同じと考える様になった」
「それでどうなったんだ?」
給餌担当の青年は作業をする手を
「残飯だ。海から得た食物の内、人間が食わない物は海に撒く。これを習慣化した結果、サメが浅瀬に出没する事はなくなったらしい。きっと残飯を食ったカニやエビと言ったスカベンジャーがサメの餌になり、食いっぱぐれたサメが人間を襲う事も無くなったんだろう」
「なるほどなー、それでこんな訳の分からない仕事が有るのか。ところで、その話って本当なのか?」
給餌担当の青年は納得したような口調で、更なる疑問を投げつける。操舵担当の青年は呆れた口調で返す。
「お前は本当に疑い深いな。いや、別に悪くはないが……何でも
操舵担当の青年の説明に、給餌担当の青年は今度こそ納得した様子を見せた。
「なるほどなー、ところでサメって浅瀬以外にも出るよな?」
「ああ、出るな」
「空を飛んだり、砂に
「ああ、するな」
「あいつらも食いっぱぐれて餌を求めて来たサメなのかな?」
「知らないけど、そうなんじゃないか?」
「なるほど、これは責任重大だ」
「ああ、責任重大だな」
そう言って、給餌担当の青年が魚肉の一片を海面に投げる。すると海面に巨大なサメの頭部が
「今さ、サメ何頭居た?」
「さあな、一頭じゃないのか?」
操舵担当の青年は関心が無さそうな様子で、つまらなさそうにそう言った。
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