第三百五夜『何十何年経っても目が覚めず-a weakening-』

2023/04/11「昼」「扉」「輝く大学」ジャンルは「指定なし」


 うちの大学にはちょっとした七不思議がある。

 内容の多くの他愛ない物で、ごく短い期間しか存在しなかった学食の幻のメニューだとか、廊下ろうかに幽霊が出るだとか、そもそも七不思議なのに七つ無いとか、そんな感じだ。

 ただ、その中に一つだけ剣呑けんのんな物がある。うちの大学にある封鎖されたとびらは何が有っても絶対に触れてはならず、触れたら死んでしまうと言う物だ。

 これもうわさ範疇はんちゅうだが、何でも度々たびたびあの扉に触って死ぬ学生が出るらしい。

 真相はなんて事は無い、無鉄砲な酔っ払いが酒を飲んでいい気分になり、その勢いで夜の校舎に乗り込んで、封鎖された扉を無理矢理開けて、扉の向こうへ跳び出したのだ。

 ところで封鎖されている扉だが、勿論封鎖されている理由は勿論ある。封鎖された扉の先には、何も無いのだ。通路も、部屋も、階段も、何も無い。あの扉の先には以前は通路が存在したが、今現在は何も存在しない。故に、その酔っぱらった学生はそのまま地面へと落ち、そのまま体を打って死んでしまった。その時の話が大袈裟おおげさな教訓話としてのこっているのが、この七不思議の一つと言う事だ。

 しかし、あの扉を度胸試しかペタペタと触る学生は未だに多い。そりゃあそうだ、人間は絶対に触ってはいけないと言われると、触って見たくなるものだ。

 しかし扉に触る学生は多いものの、扉を破る学生は一人も居ない。全く、絶対に触るなよ! 絶対に触るなよ! と耳元でささやき続けていると言うのに、誰一人道連れになってくれる人が居なくて俺はほとほと困り果てている。

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