第二百九十五夜『幽霊の外見-Ancient Roman-』

2023/03/31「前世」「ガイコツ」「業務用の恩返し」ジャンルは「サイコミステリー」


 二人の青年が山の中、重そうな一つの荷物を運んでいた。

 時刻は深夜、もうすっかり暗い時間帯で、二人は携帯端末けいたいたんまつのライトを使い、周囲を確認しながら進んでいた。

「なあなあ、ふと思ったんだけど、なんで幽霊ゆうれいって太ってる奴とかハゲ頭の奴が居ないのは何でなんだ?」

 青年の片割れが、携帯端末で足元を照らしながらに落ちない様子で、連れに尋ねて行った。

「ああ、それはな。幽霊は実は実在していなくて、あるのは幽霊はこう言う姿だって言う民衆のイメージだ。」

 疑問を提起した方の青年はおどろき半分納得半分の様子で、解説をしている方の青年の言葉に耳をかたむける。

「そうか、幽霊は存在しないのか……けど確かに、幽霊はこう言う物ってイメージってのは良く分かる。幽霊は大体こう言う格好だって説明も無しに同じ格好をしているもんな」

「まあそう言う事だ。何で幽霊はみんな似た様な格好しているか説明にならないし、もっと言うなら、全部の死者が幽霊になるならこの世は人間よりも幽霊の方が多くならないとおかしいし、それに加えて原始人や丁髷ちょんまげの幽霊が居ないのもおかしいからな」

 その解説を聞いて、疑問提起をした方の青年は吹き出した。

「原始人の幽霊! そりゃあいい! こりゃ笑いぐさだな! だけどよ、幽霊にも寿命が有って幽霊として生きてられないってのは?」

 疑問提起をした方の青年の言葉に、解説をしている方の青年は無感情に返す。

「それはそれでおかしい。戦国時代のよろいを着た幽霊が居る事の説明にならないし、戦国時代が幽霊の寿命のギリギリと言う過程をしても、世界大戦の幽霊を追いやって幽霊像のスタンダードになる理由が見つからない」

「なるほどなー、とにかく幽霊は思い込みとか先入観で、実在はしないって事か」

 疑問提起をした方の青年は腑に落ちた様な仕草をし、二人は荷物を運ぶ歩みを山の奥で止めて、その手から重そうな荷物を下ろした。

 荷物は大型のバッグで、中には恐竜の死体が入っていた。いや違う、恐竜の死体は頭部だけで、頭部から下の体格や前肢ぜんしや骨格は完全に哺乳類ほにゅうるいのそれ……もっと具体的に言うと、人間のソレであった。

「コイツ、化けて出るかな?」

「さあな、俺は出ないと思う」

「でもよ、山の奥で頭部だけラプトルな人間の幽霊が出た! ってうわさが立ったりしたら面白くないか?」

 そう語りかける青年の顔はへらへらと悪ふざけ然とした笑みを浮かべており、もう片方の青年は無味乾燥むみかんそうな表情を浮かべていた。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る