第二百七十夜『存外な治療法-goblin Marketing-』
2023/03/04「地獄」「目薬」「壊れた可能性」ジャンルは「大衆小説」
地平線の先まで続く赤い大地を、
「毎度の事だけど、商売って本当に訳分からないね。赤カブとニンニクが法外な値段で売れるだなんて……何が
「それに関しては俺もそう思っているよ。ただまあ、ユウは物事を深く難しく考え過ぎているだけだよ。基本的に、相手が欲しがっている物を高く売ればいいってだけの話だからね」
剣を佩いた女性のぼやきに、短筒男は運転をしたまま受け応える。
「でも何だって、その人達は赤カブとニンニクを欲しがってるの? 普通に食べる分には
「その事なんだが、厳密に言うと俺にも全く見当がつかない」
「嘘! ユリウスは何でも知ってるし、ユリウスは仮に知らない事に挑戦するとしても、じっくり調査をしたから挑むんじゃない!」
剣を佩いた女性は、相方の言葉に電流が流れたかの様に低めな全身を跳ねさせながら驚いた様子で言った。
「厳密に言うと知らないってのは本当だ。一応事の経緯は知っているし、ニンニクが流行っている理由も目星は付いている、例えばニンニクは滅菌作用や悪霊除けの効果があるとかさ。ただ、なんで赤カブの
「んー、赤カブとニンニクが好きな人達が転売か何かで困ったとか……?」
ああでもない、こうでもないと頭を
「実はこれから行く地域には、何とか言う活動家が信徒を得ているらしい」
「信徒を得ている活動家って、それカルト教団?」
「何とも言い
「それって結局カルトなのでは?」
短筒男は、剣を佩いた女性の言葉に黙ってしまった。
「……いや、カルトかカルトじゃないかはどうでもいい。そこに資料と、詳細をまとめたメモが」
「自分で読みたくないから説明して? 得意でしょ」
剣を佩いた女性の要求に、短筒男は
「ビシャモン・クローバーと言う運動家、こいつがここ数年の予防接種のせいで感染症にかかると言い張っている。感染症による混乱のどん底で、
「……その感染症って潜伏期間がある病気だったりする?」
「大体五年から十五年程の潜伏期間があって、その
「その予防接種ってのは……」
「三年前から出回っているね」
「ダメじゃん!」
素っ
「そうなんだ、ダメなんだよ!」
「それで、何で赤カブとニンニクが高騰してるの? まさか赤カブとニンニクが感染症の特効薬だって、そのカルトでは言われているの?」
短筒男は笑うのを止めて、少々気恥ずかしそうな、興を削がれた様な顔をし、
「いやなんだ、人がコレから笑いどころを話そうとしている時に、それを先回りして話すのは行儀が悪いと思うぜ」
「いやいやいやいや! 病気に困ってる人には薬を売ろうよ! そんな火事場泥棒染みた事しちゃダメでしょ! もうヨクバリとかゴウツクバリとか、そう言う次元じゃないよ!」
酷く興奮した様子の剣を佩いた女性に、短筒男は
「まあ待て、俺は赤カブとニンニクを欲しがっているけど買えない人に割高で売ってあげるだけ、別にこれは医薬品ですとペテンや
短筒男の説明に、剣を佩いた女性は納得こそしてないが、代案が出せないから黙り込むしかないと言った様子で座り込んだ。しかし到底納得できない様で、座したままブツブツと口の中で唱えている。
「ところで、その予防接種のせいで広まった感染症って何なの? うんう、その話で予防接種が原因で広まった物じゃないってのは分かってる、一応ね」
「ああ、
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