第二百六十二夜『毒を食らわば皿まで-ESSEN OHNE GIFT-』

2023/02/23「池」「時間」「新しい城」ジャンルは「スイーツ(笑)」


みなさん、こんにちは。毎度お馴染み、スジモン系動画配信者、虎狼痢コロリ毒座衛門ぶすざえもんでございます。

 普段は裏社会あるあるネタで漫談まんだんをしているわたくしですが、今日は少々趣向しゅこうを変えまして、先日行ったレストランの事でも話したいと思います。


 みなさんは『Gift』と言う完全会員制の料理店をご存知でしょうか?

 外見は荘厳なお城の様で洒落しゃれていますが、それよりも目を引くのはメニューです。

 メニューの一例を挙げますと、ヤドクガエルのバター煮、河豚ふぐ刺身さしみ、ベニテングダケのソテー、豚肉のタルタルステーキ……どれもかの店の看板メニューです。

 ええ、大半のリスナーはまゆひそめるでしょう。ですがご安心を、この料理店の食材は全て特別な手順を踏んだ物で、皿に乗っているものは全て無毒なのです。無論、調理師免許を持った料理人が腕を振るっている訳でして、食中毒なんて万に一つもあり得ません!

 みなさんご存知ですか? ヤドクガエルや河豚は食物連鎖の果てに毒性を取得するのであって、人工池の養殖で育てた個体には毒が無いのです!

 同じくベニテングダケの持つ毒性であるイボテン酸は水溶性なので、やろうと思えば無毒化が出来るとか何とか……いえ、私は実際に厨房に入った訳では無いので、具体的にどうやって無毒化しているかは企業秘密だそうですが……

 豚の生肉も同様で、豚の生肉に関する法律が存在しまして、逆説的に法を守れば豚肉を生で提供しても合法と言う事にございます。

 そんなこんなで、この料理店のメニューはここでしか食せない物ばかり。故に、ここの料理を一度食べてみたいと言う人も居ます。ですが特別な食材、特別な処理をした物ばかりなので桁違いに高く、オマケに提供出来る数も限られている。それ故に、完全会員制料理店と言う形で経営をしていると言う事になる訳ですね。会員でなければ食べたくても、幾らお金を出しても食べられない、そんな料理店と言う訳です。

 さて、私がこの料理店の話をする理由なのですが、私は仕事の縁で『Gift』へ行く事になり、その時豚肉のタルタルステーキを食べる事になったのですが、これが美味い事、美味い事! 仕事の縁で一緒に『Gift』で食事をした相手方さんなんて、コースのメニューをどれも美味しがって皿まで食べそうな勢いでした。

 あの時は私が相手方におごる形で、値段も目玉が飛び出る程高かったです。もっとも、仕事で食べたので領収書を切っておいて、経費で落とすなり請求するなり出来ますが、あの時は本当に値段に驚きました。

 しかし、あの時の相手方さんの食欲は本当に凄かった。皿まで食べそうな勢いと言いましたが、すみません、あれはちょっとした嘘にございます。何と言うべきでしょうか、お代わりを要求したり厨房に入ったりしそうになるのを我慢していると言った感じでした。

 私も相手方さんに、厨房に盗みに入ったりしたら行けませんよ。と、それとなく釘を刺しましたが、あの様子だと仮に厨房に忍び込んで盗みを働いても驚きはしませんね……

 ああそうそう、何でも『Gift』に泥棒が入ったそうなんですよ。不幸中の幸いか、金品は取られる事は無かったそうですが、食材……いえ、まだ無毒化処理が終わっていなくて食べられない食材じゃない食材を盗られたそうです。

 ビワの種をご存知ですか? ビワの種は食べちゃいけないと言う話だけご存知のリスナーも多いとは思いますが、ビワの種にはアミグダリンと言う物質が含まれており、端折はしょって言うと、コレは青酸カリの事にございます。

 そんなビワの種ですが、『Gift』さんは無毒化処理をした後にゼリーにするか、お酒にするか、そんな画策でもしていたのでしょう。まだ無毒化していない事が幸か不幸か私には分かり兼ねますが、とにかく困った話にございます。

 ビワの種を盗んだ輩が何を考えているかは存じませんが、レストランの厨房にあったんだから食べ物に間違いないだろう! と、食べてしまったとしたら、胃の中で毒物と転じた青酸が肺へ血液へと循環して全身に回り、結果として身体中の臓器を機能停止させて壊死させ、最終的に呼吸をしても酸素を取り入れる事が出来なくなって死んでしまうでしょう。

 どこの誰が、一体何にけしかけられたか、私には全く想像も及びませんが、世の中には何を考えているか全く分からない人が居るものですね。

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