第二百六十一夜『黒猫の星-singularity-』

2023/02/22「東」「墓場」「無敵の目的」ジャンルは「SF」


 寝苦しい……目を覚ますと飼っている黒猫が胸の上で眠っていた。

 しかし不思議な話だ、何故猫は軽いのに少しずつ重くなっていくのか。どう考えても猫は軽いのに、座り込んだり箱座りをした猫は同じ生き物とは思えない程重い。

 ひらめいた、重さとは一種の力だ。風が吹けばエネルギーが発生し、水が落ちればエネルギーが発生する、ならば猫が座ってもエネルギーが発生するのではなかろうか?

 そうと決まったら善は急げだ、私は早速この仮説の研究をする事にした。

 調べてみたところ、座り込んだ猫の持つ重力は猫の体重以上である事が判明した。これは大発見だ、猫の重さには文字通り無限の可能性が有ると強弁する事が出来る。

 実験を第二ステージへ進める。私は可能な限り大量の猫を一箇所に集めた。これが木星や地球の様に大きい星なら大変だったが、私の暮らしている星は自動車で容易に一周出来る程度の規模きぼだから簡単だ。

 一箇所にこの星中の黒猫をすべて集めた、こうなるともう壮観そうかんだ。この星には黒猫しか存在しない。いつか他の星の猫も飼ってみたいが、それはこの実験には関係ない。

 黒猫達が一斉に座った。すると一種の力場が発生し、地面がメリメリと音を立ててめり込んだ。実験は成功だ!

 猫達が座り込んだ事によって、猫の塊がこの星以上の重さの塊となり、引力は星ではなく猫の塊へと向かった! 周囲の物が猫の塊に向って落ちて行き、猫の塊は更に大きくなった! 私も例外でなく、私もまた猫の塊へと落ちて行き、猫の塊へ飲み込まれた。

 もうこうなると誰にも止められない。黒猫の塊はこの星全てを飲み込み、やがてブラックホールとなるだろう。好奇心、猫を殺すと言う奴だ。

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