第百八十七夜『ダーツが明後日の方向へ飛んで行った-bull’s eye-』

2022/11/30「花」「フクロウ」「悪の才能」ジャンルは「学園モノ」


 登校すると美術の伊藤先生が眼帯をしていた。何でも右目が結膜炎けつまくえんになったらしく、実際のところ伊藤先生は普段から花粉に対して愚痴ぐちを言っている印象があった。

 伊藤先生は花粉症の延長線で目をわずらったと言っていたが、俺には思い当たるものがあったのだ。


 昨晩の事だ、手が滑ってダーツが明後日の方向へ飛んで行った。ダーツと言ってもマジックテープや磁石で作られた安心安全な物ではない、昔ながらの金属製のハードダーツだ。

 高校の近くの雑貨屋で見つけた目を引くダーツ一式で、ダーツボードはフクロウの目を模したカラス除けにも似たデザインで黄色くて目を引く。俺がそのダーツのデザインをマジマジと見ていると、店主が処分品だからと、タダ同然の値段で売ってくれたのだ。

 話を戻そう、とにかく俺は金属製のダーツを投げたが手が滑り、結果として隣に貼ってあった集合写真に刺さってしまったのだ。それも丁度伊藤先生の右目に!


 俺はその事を伊藤先生に話したが、これを笑って流した。伊藤先生はユーモアのある人で、俺の事を頭ごなしには否定こそしなかったが、俺は本気で心配していたので、心の中にしこりが生じた。一言で言うと、憎まれ口の一つも叩きたい気分だ。

「まあまあ、そんな事は関係無いよ。気にする必要は無いから真面目に僕の授業を受けなさい」

「分かりました! 関係無い事を証明するために、今度は先生の左目を狙ってダーツを投げますね!」

 俺は伊藤先生に出席簿の面で頭を殴られた。

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