第百十三夜『木になる写真-FATAL FRAME-』
2022/09/03「陰」「告白」「ゆがんだ殺戮」ジャンルは「王道ファンタジー」
二人の青年が山の中、重そうな荷物を運んでいた。
時刻は深夜、もうすっかり暗い時間帯で、二人は携帯端末のライトを使って周囲を確認しながら進んでいた。
「なあ、俺らが子どもの頃はまだ心霊写真ってたくさんあったけど、最近めっきり見ないのってさ、あれ何でだ?」
青年の片割れが、携帯端末で足元を照らしながら腑に落ちない事がある様子で、連れに尋ねて行った。
「ああ、あれな。昔はカメラの性能も悪いし、機能も多角化していなかったからだ。今と昔ではカメラのシャッター速度も違うし、ピンボケや反射も起きにくい」
「なんだそれ、心霊写真の正体はカメラの機能だってのか?」
「まあそうなるな、例えば今のカメラは妙な反射を取り上げないし、昔のストロボの様に強い光も発しないから埃や水滴に反射して人魂の様に写真に写ったりしない。理解できたか?」
「ああ、分かった。分かったけど、それ聞いてがっかりだぜ、心霊写真がカメラの機能不全だったなんてな」
「まあそうなるな、例えばこうやってカメラを人に向けると顔認識機能が働く、俺の携帯端末ではカメラが顔だと思ったものが黄色い枠に収まるって形式だな。そして今のカメラは性能が良いから、人間が木目を人間や霊と見間違える事は無い」
そう言って解説をしていた方の青年は、疑問を提起した方の青年の隣に立ち、インカメラを起動し、画面を見せて説明した。
「いや、これ後ろの木にも黄色い枠がかかってない? カメラも木を人間と見間違える事があるんじゃん!」
確かに、その携帯端末は木の幹を人間の顔と認識していた。そして、その木の幹は見ると苦悶の表情をあげた人間の顔の様に見えた。
「すげー、これ写真を撮ってテレビ局に送らない? 世間の話題を総取り間違いなしだ!」
パシャリ、機械音。彼のカメラ画面には、無数の黄色い枠が画面に表示されていた。撮った写真はなるほど、木の幹然り、枝や木の葉の造形しかり、そこら中に人間の顔の様に見えるものが無数に映っていた。
「やめておけ」
「なんで? 霊障とか祟りとかそう言う奴? でも俺はそう言うの、これまで一度も見舞われた事無いんだよね」
「いいや、そっちじゃなくてだな……」
二人は、運んで来た重そうな荷物を山の奥に置いた。まるで人が一人倒れた様な、重い音がした。
「悪事ってのは誰に、どこから、どういう風に、どういった経緯で露見するかは分かったもんじゃないからな」
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