第百八夜『世界で最も不自由な海-pirate code-』
2022/08/29「空」「犬」「ぬれた物語」ジャンルは指定なし
あなたを他人の秘密を守る事の出来る紳士的な人間、そして偏見や
いえ、そう怖がったり
今日こうして自らの身分を明かしたのは、みかじめ料がどうとか、
うちの船長は口や外面は良く「まっとうな船より食事も給料も多く、何よりも楽しくて自由!」と乗組員にはそう言っているものの、実際のところは規律が厳しい、仕事はきつい、自由気ままに振舞おうものなら拳銃一丁だけ持たせて無人島に置き去り刑、そして何よりカタギじゃない!
私は食うに困ってこの仕事に就いたものの、
板渡らせの刑、ご存知ですか? よく話や絵画に出て来るアレです。アレね、板を渡って飛び込んだのは本人の意思であって自殺だから、それを強要させた海賊達は悪くないって理由で考案されたんですよ。もうイヤだ、この職場!
しかも職場は船の上だから、ペットとして飼えるのはネズミ捕りの猫だけ。犬派の私にとって、つまらない事この上ない!
酒を飲んで忘れようと思うにも、夜になってからは酒も煙草も禁止で、早く寝る様促される。そもそも船上ではいつ補給が出来るか怪しいから、大酒を飲むのは船長含めて全員が禁止。
それからおまけに金銭のトラブルを招くってもんで、サイコロとカードを船に持ち込むのもご法度! 男職場に女を連れ込むのも、不要なトラブルの元だから禁止! 縛り首にならずに悠々と楽しめる趣味と言えば音楽位のもの、日曜日は讃美歌以外の音楽は禁止されているのを除けばですが……
一応うちの船長は海賊行為の免許を持っている公賊ですし、我々が襲うのは国敵の船だけで、一般船員の私に至るまで全員が税金も健康保険もきっちり払っております。しかし、海賊が怪我や病気になるのは普通ならば勿論海の上、栄養失調に陥ったり傷口が
因みにうちの船は保険が充実している様な事を言ったばかりですが、死亡保険だけはありません。戦死すれば故郷に金が払われるなんて甘い事考えず、死ぬ気で海賊行為に励めという事ですね、ハハハハハ! はぁ……
税金と言えば、海賊の給金は平等と先程言いましたが、それは
こんな職場とっととやめたくて貯金をしているのですが、先程も言ったように退職手続きには金と時間がかかる。具体的に言うと海賊行為のノルマがある訳でして、船員としてのノルマを果たしてないなら退職出来ないと言う契約なのです。
それなら大型商船を優先して襲おうと、一般船員で頭数を揃えて上司に直談判した事もあります。しかし上司の連中、カタギじゃないシノギを長年こなして来た事はあって口がうまい。
「金が欲しけりゃ大物を狙えばいい。確かに言うのは簡単だが、それには危険が伴うんだぜ? そういった船は船員も装備も充実しているし、失敗したらうちはこの不景気の
そう言われて、やりましょう! と断言できる船員は居ませんでした。本当にままならない職場と言う他ありません。
だからこうして陸で酒を飲んでいる訳なのですが、こうして居ると人間が海の上で生きているのが馬鹿馬鹿しく感じられますよ。所詮、人間は陸の上でしか生きていけないのですから!
世の人は大衆食堂や酒場の仕事は地獄の様な労働だと言いますが、私からしたら本当に羨ましい限りですよ……
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます