第九十七夜『何でも溶かす薬液-at the core-』
2022/08/17「夜空」「窓」「最高の運命」ジャンルは「ギャグコメ」
ついに完成した! これぞ日夜研究し、夜も寝ないで徹夜して作った発明品、何でも溶かす薬液だ! これであの問題も解決し、あの夢も実現、私は世紀の発明家として富と名誉がガッポガッポという訳だ!
無論言葉通りの意味ではない。何でも溶かす薬液と言う言葉が是ならば、この薬液が入った試験管が溶けなければおかしい。実際の所、この試験管二本に入った薬液Aと薬液Bが混合して初めて何でも溶かす薬液になるのだ。それと人体並びに哺乳類の肉体も溶かす事は出来ない、私はテロリストではなく発明家なのだ。
私の計算が正しければ、この薬剤Aと薬剤Bを混ぜてもせいぜい溶かす事が出来る質量は床までは到達せず、試験管を溶かして実験台までは到達しない筈だ。
しかし、実験は計算通りにいかなかった。薬剤を混合させたところ、何でも溶かす薬剤は試験管を溶かし、試験管立てを溶かし、実験台を溶かし、床を溶かしてしまった。人体は溶かさないのだから、我が手で受け止めるべきだったが、薬剤がそれらを溶かす早さが上回ったのだ。
次の瞬間、建物がグラグラと揺れ、窓がひしゃげ、天井から灯りが落下し、建物が倒壊した。いや、建物が倒壊したと言うのはいささか非本質的か。
まるで、地面そのものに深い穴が空いて地割れが起った様とでも言うべきか……
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