第十六夜『現代物理学並びに量子論から見た時間の連続性に関する仮定と命題-Clap Your Hands-』
2022/05/26「光」「見返り」「輝く大学」ジャンルは「SF」
ここ数日大学はお祭り騒ぎだった。新しい学術的発見があったのだから無理はない。
廊下ではマナー違反の研究生が
「信じられるか?なんと
この大発見は我々にとって有史以来の大発見だった。ただし、有史以来と言っても時間の流れなんて不規則的な物なので、言葉の
そもそもこの大学は設立こそ大分前だが、飽きっぽい
妖精達のやる事と来たら、人界を覗き込んで面白そうな
かく言う私もチェンジリングでこちらへ来た人間だ。もっとも、妖精達は人間を浚って気づかれなかった事は
私の目的は、チェンジリング等と言うふざけた行為へのアンサーだ。私は今ここに生きているが故に
私が妖精の世界に連れ浚われたのは丁度物心がついた頃だ、私は肉親の事はよく覚えてない。ただ、私の妖精の両親は私の事を猫可愛がりし、人間が妖精の世界で生きて行けるようにと心を砕いてくれた。私は妖精の両親の子供がどんな妖精だったか知る由も無いが、向こうで幸せにやっているか不幸でいるか想像もつかない。ただ、両親が言うには今でも達者に暮らしている確信があるらしい。
だから私がやるのだ。私が妖精達に形而下の事を啓蒙し、そこから正しい観測や文化を教える。計画は難航したが、私の肉体は既に妖精のそれに近づき最早仙人の様になっていた。弱音を吐く事はあっても諦める事は絶対に無い。
事実こうして妖精達に人界に関する啓蒙を行なう事は成功した。次は妖精達に何を教えるべきか、何を研究すべきと吹き込むか、そう考えるとワクワクで夜も眠れそうにない。当面の研究課題としては、人界とこの世界の帳が薄くなったり厚くなったりする事について研究する事にしようか。
この世界には人間は少ないが、自分が人間だと言うバックボーンを持っている人間は全くと言っていいほど居ない。だから私が成さねばならぬのだ。
妖精なんて居ないと、そう呟く度に妖精は一人ずつ消える。それは嘘だ、主観の違いに過ぎない、妖精なんて居ないと呟いた人間に妖精が見えなくなるだけだ。
科学が発展すればするほど、妖精は消えていく。バカめ、ならばグレムリンの存在はどうなる?
監視カメラの普及により、世界は妖精の存在を許容出来ず、結果として妖精は絶滅した? いいや、違うね。俺はここに居る。
俺は紛れもなく人間だが、幼い頃神隠しになって妖精の世界を見た。妖精は俺の両親だった。そこでの経験は未だに夢に見る。
夢で妖精の事を見ると言う事はつまり、俺は妖精と言う非現実と脳が接続されていると言う事だ。故に、俺は人間でありながら妖精の性質を持っている事に他ならぬ。
俺は妖精の絵を描き
俺にとって妖精は現実であり、飯のタネで、正しく夢の中で俺の両親だった妖精こそが俺の本当の両親と言っても過言ではない。それに比べて俺の両親は酷い物だ、しきりに学問の道を進めと、自分達の家や親の職業を勧めて俺の関心や才能を全く見なかった。誰が化学だの何だの理解が及ばない物にとっつくものか、と家を飛び出した。俺にはこの生き方が合っている。
今日はどんな絵を描こうか、俺は目を閉じてこの世ならざる風景を眺めた。
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