第3話【急募】優しい部下ってどこに落ちてる?俺、全力で拾いに行くよ?
「んで、一人でここに来たと」
「は、はい……」
場面は変わって廃城。俺は一人で突っ込んできた勇者パーティーの僧侶さんをデコピンで仕留めた後、その僧侶さんに何故一人で突っ込んできたか話を聞いていた。
ちなみに拘束はしているが肌を傷つけない魔法による拘束なので女性の好感度が上がるはず!手元にロープが無かったのは内緒だ。
話を聞けば俺の何の意味も無いジェスチャーを『四日後に村を襲撃する』と勘違いして早急に対策を立てた結果、間髪入れずに襲撃したらワンチャン倒せるんじゃないかってのと、失敗しても神官一人の犠牲だから替えが効くっていう……
なんとも
「なんともまあ……分の悪い賭けをしたもんだ君は。死ぬのが怖くないのかねー」
「私の死が人類の勝利へと繋がるのならば死など怖くありません!」
「そう言いながら顔が青いぞ。あんまり無理すんなー」
全く、人間ってここまで追い込まれてたっけ?魔族領にいたときに気になって情報を集めてた時は戦力は拮抗していたはずなんだけど。
とはいえ、だ。俺としてはまたとないチャンスである。彼女を上手く利用できれば食料が手に入る……!俺はどうすれば良いか考え始めた。
(うーん、隷属できる魔法もあるけど人間だったときの倫理観がなぁ……)
「あの……?」
(銀髪青目の巨乳神官ちゃんって流石ファンタジー最高!……って違う違う。もがく度に揺れるからちょっとチラ見してしまった)
「えっと……」
(でもこのまま逃がしたら待ってるのは餓死の未来だもんなぁ……どうすっかな、これ)
「魔族さん!」
「はっ!すまん考え事をしてた。どうした?」
思考の海に没頭していた俺を彼女が呼び戻してきた。なんだろう、ボッチの期間が長すぎて人から話を聞くってことが出来なくなったのかな俺……
「これから、私を、どうするつもりですか……?」
「あ?んー……今それを考えてたんだよねー」
「というか、初めて会ったときと随分印象が……」
「そうだっけ?まあこっちが素。魔族って舐められたら負けみたいな風習あるから、自然と敵対するときは威圧感を出す様になってしまったんだよねぇ」
マジで舐められたらいくらでも舐め腐ってきやがるからなあいつら。人類は劣等種とか思ってるのもこれが原因。
一回子供の魔族にパシらされそうになったときは流石に反省して威圧感だすようにした。
「私がここに来た以上、覚悟は出来ています。慰み者として使われ殺される事も……覚悟……して……!」
「出来てないじゃん!?ごめんねなんか決断迫らせるようなことしちゃって!?」
泣いちゃったよ僧侶ちゃん……つーか慰み者!?無理無理、こちとら彼女いない歴イコール前世の人生プラス年齢だぜ?百年超えてるんだよ!
女性抱く経験どころか手を繋いだ経験も無い……あ、でも女性を拘束する経験は今し方したよ!ド変態だね俺!?
「うーん、まあ拘束したままで悪いけど取引しない?」
「ぐすん……私に人類を裏切れと?」
「まあ、魔族に手を貸すって意味では人類を裏切ってるのかね?人は傷つけないけど」
「……どういう意味ですか?」
おーおー、不思議がってる。まあそうだよなぁ……魔族って好戦的なやつがおおいから、悲鳴が聞きたいってだけで捕まえた人間を拷問したりそれこそ慰み者にしたりするやつもいる。
というかそっちの印象ばかり人間側に伝わって一般魔族さんとか俺みたいな人間大好き変人魔族さんに迷惑かかるんだよ。反省しろ魔族!はい、俺魔族なので反省します。
って、違う違う。人を傷つけない魔族ってのが人間側からすれば珍しいんだろうと思いつつ、当初の目的……飯の確保の事を彼女に話す。
「お金あげるから食料買いたいんだよ……ここ見てみ?何にも無いだろ?」
「確かにそうですね……」
「人間よりは丈夫とは言え、魔族だってご飯食べなきゃ餓死してしまうんよ。どうせそちら側もここを獲りたいだろうし長期戦になるのは目に見えてるからね~」
「それでは一旦魔族領に戻ればよろしいのでは……?」
「ばっかお前、そんなことしたら魔族側に殺されるわ!人間ごときに逃げ帰った魔族の恥!とか言われてさ?」
「部下に買いに行かせれば……」
「泣いて良い?いや、もう泣くよ!?部下なんていないんだよ!変人魔族とか言われて子供にパシらされそうになった弱い魔族の下には尽きたくないんだってー!うわあああああん!!」
実際に目の前で言われたんだよそうやって!魔王様からの命令で仕方なく部下募集したらつば吐かれましたからね!?俺もう大号泣。
廃城で拘束されている美少女神官と側で四つん這いになって大泣きしている魔族とかいうシュールな光景がそこにはあった。
俺が泣いている中、神官は顔を青ざめる。
(彼のような魔族が……弱い?だとすれば魔王は一体どの程度の力を!?勇者様、どうやら私たちはとんでもない存在を敵にしているのかもしれません……っ)
「ち、ちなみにですが貴方のような魔族はあとどれぐらいいらっしゃるのですか?」
「グスン……え?部下が一人も居ない惨めな魔族ですか?俺しか居ませんよ?」
「そうではなく!貴方のような強さの魔族はどれだけいらっしゃるのかと聞いてるんです!」
「強さかぁ」
俺は僧侶ちゃんの質問を聞いて首を傾ける。実は正直なところ、一対多数の戦闘に置いては俺より強い奴はいない。あの魔王でさえも俺より一対多数の戦闘は上手くないのだ、意外だろ?あの人は一つのモノに集中すると他のモノが見えない性格だからなぁ……
だが逆を返すと、一対一の戦闘に置いては俺以外にも強い奴はいる。それは勇者達が今まで倒してきた魔族の中にもいた。
「俺みたいな、は分からないけど俺以上の強さを持った奴ならぱっと五人は思いつくぞ」
「そんな……」
あ、絶望してる。大丈夫だよ、囲んでタコ殴りにしたら勝てるやつらばっかだから。一回幹部達で隠れてガチバトルしたとき、最後俺に向かって三人全員飛びかかってきたけど三十人ほど分身して木の棒でペシペシ叩いてやったら勝ったし。
そこからしつこくあいつらタイマンしようって言ってくるのだけはマジで勘弁願いたかった……幹部として内政が忙しかったんだよ!
まあ、今じゃどうせ俺は勇者に倒された事になって魔王様が俺の代わりに誰か空席に置いてるんじゃない?魔王様は弱い魔族嫌いだったし、俺が排除できてラッキー程度に思ってるんじゃないかなぁ。
「って、そんなことよりも取引の話だよ取引の!」
「えっと、食料を買ってこいというお話でしたよね?」
「そうそう。んで、やってくれる?」
頼むから受け入れてくれ~。俺には死活問題なんだ、ここで飲んでくれないともう後は街を襲うかバレるの覚悟して変装前提で街に忍び込むかの二択なんだよぉ……
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