第4話【急募】女の子の好感度を上げる選択肢

「……それ、私がお金を持って隠れたら貴方は終わりなのでは?」


 僧侶ちゃんが痛いとこ突いてくる。そうなんだよなぁ、今僧侶ちゃんを逃したら俺は大変困る。あくまで『俺』は困るのであって『魔族』にとっては街を襲えばそれで済むんだけど。


「確かに俺は困るよ?でも最悪街を襲えば良いし」


 ニヤリと悪そうな顔をして遠くの方を見る様な顔をして俺は告げる。まあ嘘なんですけどね!俺みたいな小心者が街なんて襲えるわけねーだろ!誰かしらに狙われながら生きるとかストレスでハゲるわ!?


 どっかの街滅ぼしたら人間から嫌われるぞ。ソースは今のうちの魔王、だって全世界から嫌われてるし。


 最近頭髪が薄くなって娘に『お父様と洗濯物一緒にしないで!』とか『近寄らないで!加齢臭が移りますわ!』って言われて娘にも嫌われて凄く落ち込んでたぞ。酒の席で愚痴ってた。


 まあそんな魔王の親子の近況なんか置いておいてだ。なんだかんだ言って俺も魔族だからこういった嘘をつけば真実味が増すだろうと思って言ってみたわけだが……


「あ、あくまで仮定の話です!本気でするわけ無いですよ持ち逃げなんて!」


 凄いビビってる。やった!女の子の好感度を代償に食糧問題を解決出来たぞ(泣)!なんで俺ってモテないんだろうね、魔族だからだね!?


 でも魔族からもモテないよ?なんでだろう?「アインス様ー!」なんて黄色い声聞いたことも無いよ。俺、一応四天王の1人なのに。


「んじゃ拘束解くぞー。暴れるなよ?またデコピンしないといけないのは勘弁だからな?」


 フリじゃ無いぞ?美少女に手をあげたら俺にブーイングが来るんだよ。誰から来るんだって?誰から来るんだろう……?


 俺は魔法で拘束していた僧侶ちゃんを優しく下ろす。廃城に捕まった美少女を助け出したっていう状況はなんともテンプレで好感度が上昇すると思うんだけど、美少女を廃城に捕まえたのも俺なんだよね。マッチポンプ以外の何物でも無いね!?


 ビクビクと体を震わせてこちらを見上げる僧侶ちゃん。うん、俺の好感度は塵に等しいね!


「だから、やってくれるかな?」


 俺は極力笑顔で僧侶ちゃんに優しく語りかけながら近づく。僧侶ちゃんはその分離れる。近づく。離れる。近づく。離れる。俺、落ち込む。


 露骨に嫌がられてる……!はぁ、やっぱり僧侶ちゃんはあのクソイケメン勇者のヒロイン様かぁ。ここから彼女とフラグを立てようにも、好感度が下がるイベントしか起きねえ気がするぜ。


 どこかに俺に優しい女の子居ないかなぁ。あれ?産まれてこの方優しくされた覚えがねえ……!?


 どちらにせよ俺は脅迫している立場の人間の敵、『魔族』。僧侶ちゃんは脅迫されている立場のに人類の希望『勇者』パーティーの1人。縁が無かったと言うことで。


「は、はい……!ややや、やらせていただきます!」


 顔を真っ青にして僧侶ちゃんが何回も頷く。こうして俺の食糧問題は解決する(予定)のであった。



 笑顔で行ってらっしゃーいと僧侶ちゃん(名前聞くの忘れた)を送った後、取りあえずお城を修復しに戻る。僧侶ちゃんが突撃してきたもん、まだ屋根の修理が終わってないんだよ!


「うーん……民家の廃材引っ張ってきたはいいけど、つぎはぎだらけの城っていうのもなんかダサいよなぁ」


 穴の開いた所に補修として廃材をあてがいながら一人愚痴る俺。ひとりぼっちの期間が長かったからね、独り言なんてデフォで出ちゃうもんね!


 なんだろ、泣けてきたな。ひとりぼっちで頑張ってさ?四天王的な立ち位置の一人になってさ?今やってることといえば廃城の修復作業だぜ?あーもう壁にどでかい穴開けやがって!ちゃんと直す人のこと考えて壊してくれないかな魔王様さぁ!?


 ここは廃材じゃ埋められないから魔法で新しく壁作るか……俺は穴に向かって手を向ける。時空魔法で直すのも良いけど、魔力めっちゃ使うから疲れるし……土魔法にするか。


 土魔法は良いぞ。地味だが役に立つ魔法が多いのだ。魔族のやつらは火力重視!とか見栄え重視!とかの魔法を好むので、土魔法使ってる奴を馬鹿にしているがこういう地味な作業には土魔法の汎用性は高い。


「魔力を練り、放出する。大事なのはイメージ……」


 俺は昔に習ったとおりに目を閉じて集中する。目を閉じる必要は無いが、こっちの方が魔力を練ることに集中しやすいのだ。


 魔力、それは人体や空気中に含まれる物質であり……まあ、ぶっちゃけ酸素と同じようなものだ。地球には無かった物質がこの世界ではある。ほんと、ファンタジーだよ。


 でも酸素と違う点は、「任意的に自由に体内で動かせる」というところ。これが魔力を練る、という行為に繋がるのだー……って、一人で脳内授業して何やってるんだろう俺。生徒?そこにいるガレキ君しかいねえな?


 気分は無限に下がっていくが、修復は完璧。それはもう惚れ惚れするほどに完璧だね!壁のデカい穴なんて最初から無かったレベルに綺麗に直ったよ、うん。


「魔法ってくっそ便利だよなぁ。このまま城なーおそ」

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