3.人類の楽園と王国の“剣”。

 Q.───物語とは、何だろうか?




 【少年】は思う。


 物語とは、創作フィクション然り、実話ノンフィクション然り、人から人へ伝えられるもの。


 それは、後継への助言であったり、戒めであったり。


 それは、“こう在れば良い”という先導から思想の継承。


 それは、“そう成れば良い”という願望から空想の共有。


 人類が産み出した生き延びる為情報伝達の手段の一つでもある。


 そして時に、人の心を支える糧となるものでもあった。


 【彼】が愛した、心の拠り所。




 Q.───人生とは、何だろうか?




 【鳥】は答える。


 人生とは、歩いた先で振り返れば在る足跡だ。


 進まなければそれはなく。


 唯一無二、一度きりにしか起こり得ず。


 過去も今も未来にも、人が在る限りその数だけ増え続ける。


 痕跡を消しても、誰もが忘れ去っても、在った事実は消えないもの。


 ──否、そうであって欲しい・・・・・・・・・と姿を持たない【誰か】はすがる。




 Q.───運命とは、何だろうか?




 【竜】は嗤った。


 運命とは、辿り着いた結果である。


 足掻いた者が、怠けた者が、進み続けた先で手に入れた答えだ。


 故に必然、故に当然。


 何故ならば、立ち止まってしまえば


 新しき【何か】と巡り合う事などないのだから。






 【賢者】は言う。


 「運命は決まっている」───否。


 「運命は変えられる」───否。


 運命さだめとはよく言ったものだが、【私】はそれに“否”と答えよう。


 例えその問いに正解が存在したとして、

 “定まって間もない未来だった今”に誰が

 ──丸を/罰を答えを決め──付けられる?






 故に私は──永き命の器を、捨てました。


 人の身へと堕としたのです。




「恩ある神よ、天上の御方よ。」


「約束を違える事を、どうか御赦し下さい。」




 あの時得られなかった答えを得る為に。


 次は間違えたりしないように。


 大切な人達を護る為に。



 そして私は地上へと昇った・・・


 もう一度“御前”と笑い合えたら、それだけで私は幸せなのだから。











 これは、大切な誰かを想うが故に、


 運命に抗う者達の物語だ。











 *****






 天高く、鳥が飛ぶ。

 地には様々な生き物が大自然に生き、そこら中を闊歩する。

 勿論、水中にだって彼等は息づいていた。


 そして……人間もまた、その世界に生きる者の一つだ。




「見付かったぞッ! 振り返るな! 進めェーッ!!」

「目標、誘導隊に接近中! そのまま罠へと誘導続行します!」

「立ち止まるなーッ! 死にたくなくば走れーッ!」


 大きな地響きが辺りを揺らす中、馬に跨がった鎧姿の人間達が森を駆ける。

 剣を振り回して目の前から襲い来る生い茂った木々の枝をぶつかる前にふるい落としながら疾駆していくと、暫くして森の中にある広い空間へと出た。

 馬で駆ける彼等はその広場へと向かいそして中心を避けるように二股に別れて向こう側へと走っていくと、背後から聞こえる地響きは近付くように激しく大きくなっていった。

 そして唸り声と共に現れたそれにぶち当たられた立派な木々は、人2人分もある厚みだと言うのに、グシャン! と呆気なくも他愛もなくへし飛ばされていった。

 


「あがッ!!?」


 グシャン、ともう一度鳴り響いた音と共に、飛ばされてきた木の幹は一人の人間へとぶつかる。

 衝撃はすぐに止まず、暫く宙を真っ直ぐに飛んで馬と共にその向こうの別の大木へとぶつけられたその身体は着地点で木片や馬の下敷きとなりひしゃげ潰れてしまった。


「…怯むなッ! 来るぞ!!」


 一瞬だけ彼を見遣ってその人間達のリーダーである男は歯を食い縛ると、現れたそれを睨み付ける。




「ゴオォアァ……」




 牙を剥き出しにした分厚い唇から唸り声と生臭い不快臭のする息が吐き出される。

 人間よりも三倍も四倍も大きな巨躯には極度に盛り上がった筋肉が腕や脚を太く見せる程に筋骨粒々で、大きく分厚い皮膚に覆われた手には荒く磨かれた巨木の棍棒を地に引きずらせて背後に線を描いていた。

 ギョロりとした目玉は血走り此方を見下ろして、剥げた頭には血管が浮き出て血流が流れている様が目に見えてグロテスクなイメージを与えてくる上に、全身が苔の様な、それでもって薄汚くも思える緑の肌に獣の皮で簡単に身を包んだ人型の怪物が姿を現した。

 それは広場にて此方に武器を身構える小さな人間達を一瞥すると、背をそらしながら大きな鼻の穴を開き勢いよく息を吸い込み始めると、




 ──ガアアアアアアアアアアアアアッッッ!!!!!




 轟音響く、咆哮を上げた。


「トロールが動き始めるぞッ!! 気を緩めるな!!!」


 剣を掲げたリーダーが負けじと声を張り上げる。

 対し残りの人間達は「ハッ!」と揃って声を上げれば、連携の取れた動きに合わせて馬の上で身を屈めて万が一の攻撃に備える体制を取る。


 そして存分に吼え終えたそれ──“トロール”と呼ばれた巨大な怪物は、手に持った棍棒を振り上げて此方を睨み付ける人間達に迫ろうと大きな足を一歩、二歩と進めていく……が、


 ──ガシャッバリバリバリバリンッッ


 突如足元の地が崩れ落ち、その巨体は現れた大穴へと収められていく。


「ガアアアアアアッッゴアアオオオアッッ!!」


 巨人は驚愕の表情で咄嗟に落ちまいと太い指で地を掻いてはもがき耐えようとする。

 しかし自重に地面の方が耐えきれず、掴んだところから土が崩れてしまってトロールはもがき続けながらもゆっくりずるずると滑り落ちていく。

 暫くして振り回していた腕の指先すら見えなくなった頃。

 馬から降りて恐る恐る穴を覗き込めば、穴に沈んだそれは大きく突き出た腹がガッチリと穴を塞ぎ身動きが取れなくなっているのか上半身を左右前後に振り回して足掻きもがくトロールの姿があった。

 そして彼等は驚異は無くなったと判断すると、思わず緊張感が解れてしまい安堵と共に歓声を上げた。


「やったぞ!! トロールを捕らえられた!!!」


 剣を掲げて喜びに声を張り上げる人間達。

 互いに抱き合ってあの巨人相手に無事でいられた事に喜ぶ者もいれば、中には絶命した者へと駆け寄り涙を流す者や彼に覆い被さる馬の死体や大木を退かそうと肩に力を込める者もいた。


 各々が其々の思いに浸っていると、彼等の後ろで足音が近付いてきた。


「何を騒いでいるんだ、与えた仕事は終わったのか?」


 静かに、そして少しだけ苛立ち混じりに吐かれた言葉に、その声に気付いて慌てて姿勢を正した人間達は直ぐ様腰を直角に折り曲げてその人物へと頭を下げる。

 漸くその姿を現した人物は豪勢な出で立ちだと言うのにズボンのポケットに手を突っ込みマルサラカラーの髪を掻き乱して、言うなればガラの悪い態度で男達へと近寄ると穴底からの唸り声にしかめっ面の眉間に更に皺を寄せて溜め息を吐いた。


「なんだ、まだ終わってねェんじゃん? さっさと仕留めて終わらせろよ、ったく……。」

「ハッ! 申し訳ございません、殿下! …しかし、仕留めるのは……。」


 気怠げに吐き捨てる目の前の人物に、リーダー格の男は始めはハキハキと返事を返したと言うのに後から段々と声音をくぐもらせていく。

 じとりと睨み付けて口ごもる部下に「何だよ、何か文句あるのか?」と怒気を孕ませる事で部下達が怯え始めると──、


わたくしが“殺生”を控えよと命じたのです。それが如何なさいましたか、兄上!」


 とてもよく通る、一等歯切れの良い女性の声が辺りに響き渡る。

 兄上と呼ばれたその人物は心底嫌そうに口元を歪ませて声がした方を振り返れば、場に似合わない高貴な出で立ちの純白なドレスを身に纏った見目麗しい少女が、開いた扇子で口元を隠しながら切れ長の目を薄めて此方を見遣っていた。


「ミネルヴァ……何でお前が此処に?」


 問われて“ミネルヴァ”と呼ばれた少女は肩にかかった兄と同じマルサラカラーの髪を後ろへ払うとウェーブがかったその長髪を靡かせて、ぱちんと閉じた扇子を兄へと向ける。


「アルクレス兄上、此処は私に任せて御自身の職務に戻っては如何でしょう? もうすぐ御兄様・・・の式典も始まります。貴方とて暇ではございませんでしょうに。」

「嗚呼そうだよ。国中の警備に、疑わしきは先に釘を打っておく為の用心リストの洗い直し、それからゲストの迎え入れルートの安全確認…他にもあるがそれが俺の仕事で、“今”だってそうだ。……やけに時間がかかってると様子を見に来てみれば“これ”だしよ…あいつら程度であのデカブツを仕留めるなんざ、事前に報告があれば任せる事はなかったんだ。故に、俺が此処にいて何が悪い?」


 そっちのが職務妨害だぞ、と言わんばかりにじとりとした目が彼女に向けられる。

 そして腰に携えられた剣の柄に手を添えるアルクレスを相手に、涼しい顔をしたミネルヴァは扇子に隠した裏側でにまりと口角を吊り上げると怯むこと無く再び口を開いた。


「確かに、彼等に大型の“魔物”の相手は少々荷が重かったやも知れません。そして貴方の剣技があればそれは容易いでしょうが、態々王族が自ら配下に与える様な雑務を行うなど言語道断。人知及ばぬ“魔族”の事であれば我等只の人間よりも、もっと適した人材がいらっしゃるでしょう?」


 彼女の言葉にアルクレスはぴくりと肩を揺らす。

 暫く睨むような、見詰めるような、曖昧の眼差しを向けたのち舌打つと大きく溜め息を吐いて剣から手を離した。


「……チッ……あっそ。“あいつ”が居るならさっさと言えよ……嗚呼クソが、来て損した。」


 腹立たしいと言わんばかりに後頭部を掻く。

 そして渋々踵を返して彼は“元の場所”へ帰ろうと足を前に出した瞬間、突然地震が彼等を襲った。


「グアアガアアアアーーーーッッ!!!」


 穴より響く轟音。

 それを中心に今度は地が避けていくのが彼等の視界に映った。


「今度はなんだ…!?」


 いきなりの出来事に部下達は慌てふためき、リーダー格の男は咄嗟にアルクレスとミネルヴァを背に大穴との間に立ち直ちに剣を構える。


 地震は治まらず、大地が裂けては更に振動がより激しく大きくなっていく。

 遂には地割れより突然巨大な岩の剣先が勢い良く地中より飛び出たかと思えば、それは連鎖して徐々に徐々にスピードを早めながら自分達へと向かって来るではないか。


「トロールの“魔法”よ!! 皆を即時退避させなさい!!」

「全員退避!! 即刻退避せよ!! あれを食らえば死ぬぞ!!」


 ミネルヴァが声を張り上げて指示を、そしてリーダー格の男も負けじと部下へと叫ぶ。

 しかし見れば襲い来る巨大な岩波に混乱を起こし怯えきった彼等は散り散りに、挙げ句恐怖の余り動けなくなる者までいた。

 直ぐそこまで岩波は襲い掛かってきて、何人かの部下の足元が崩れ始める。

 悲鳴が上がり、彼等は皆此処までかと絶望に青ざめた。


「危ない!!」


 咄嗟に、閉じた扇子を掲げたミネルヴァは念じる・・・事に集中しようと対象を見遣った時だ。




 ──ガチャンッ




 鎖の音が響くと同時に、それは彼女の背後から現れた。


 疾風と共に一つの人影が高く飛び上がり、その手にした刃の無い柄から淡くも鋭く輝く光の剣先を出現させて、空中で翻しては地上で狼狽える彼等へとそれを大きく振り被る。

 瞬間つむじ風が彼等の周りに巻き起こり、風圧で部下達が四方へ吹き飛ばされると間髪入れずに彼等がいた地面から鋭い岩の刃が宙を刺した。

 そのまま空中に身を投げ出していたその人物へと向かう岩の刃に、それ・・は脇へと引いた光の剣の先を突き合わせる様に真っ直ぐ差し込むと岩はの剣先から轟音を轟かせながらくだけ散っていく。

 その勢いを利用してまた跳ね上がると、身を翻し大地へと着地をすれば直ぐ様駆け出していく。

 彼が走った場所からは次々と岩の刺が噴出していくが、足先から光の粒子を散らしながら尋常ではないスピードで駆けるそれには届くはずもなく先回りして突き上げられた岩柱ですら剣一振りで薙ぎ払われてしまいその足を止める事が敵わない。

 轟音と地響きで他の誰もが動けない中、剣を片手に襲い来る岩を何度と砂の山の如く容易く払い除け、それは遂に大穴へと辿り着いた。

 そして躊躇いなく穴へと身を投げたそれを、トロールは忌々しげに見上げる。


「……はあああッ!!」


 一閃。

 光の柱を纏いながら振るわれた剣先はトロールを縦に線を引いていく。

 衝撃に、見開かれた目は何度か痙攣するとやがて大穴の中で大きな音を立てて怪物は崩れ倒れていった。

 

 そして見ているだけだった彼等は、静かになった大穴を見詰めて傍らに立つ彼が手に携えていた光の刃が消え失せるのを見ると勝利を確信し歓声を上げた。


「やった……やったぞ!! 王国の“剣”がトロールを倒したあああっ!!」


 絶望的だったあの瞬間より生還出来た事に、王族を前にしているのも忘れ彼等は腕を振り上げ肩を抱き合った。

 喜びを口にしてはしゃぎ回る声に、しかめっ面のアルクレスは煩わしげに舌打つと再び踵を返して帰路を辿り始めるのをミネルヴァが開いた扇子に隠した口で呼び止める。


「ほら、貴方の出る幕はないでしょう?」


 言われてじとりと妹を睨み付ければ、得意気な笑みを返されたので「クソ妹め」と悪態付いて背を向けた。

 その間際、大穴のそれ・・へ一際忌々しげな眼差しを送ると、彼は汚れの無い剣を腰に携えたまま、一人自分が暮らす“国”へと帰っていった。


 そんな後ろ姿が見えなくなって彼女は小さく息を溢すと喜び騒ぐ彼等の間を縫って大穴へと足を運んでいく。

 思っていたより距離があって、運動が得意な訳ではない彼女は少しだけ額に汗を滲ませながら大穴を覗き込んでそれの名を呼んだ。


「アーサー。」


 下方へと降りていた小さな影がびくりと身体を揺らすとその身体に繋がれていた鎖が擦れて金属音が大穴の中で木霊する。

 丁度剣身の無い柄を腰のホルダーへと仕舞っていた最中だったのか、声をかけられて驚き手元が狂ったらしいそれを手の内で踊らせては落ちる前にと慌てて抱き止めた。

 “アーサー”と呼ばれた、装飾も何もない素朴というよりは見窄らしい衣服を纏う手足に枷を付けた男はゆっくりと此方を見上げる。

 彼の目の前には身体が穴に嵌まったまま動かないトロールが肩を上下させながら眠っていて、それを視認するとミネルヴァは再び口を開いた。


「後は貴方に任せます。どうしようと好きになさいな。」

「……!」


 その言葉に彼の不安そうに伏せがちだった目が、ローズブロンドの前髪に隠された奥で見開かれて大きく頷く。

 多分何か返事をしているのだろうが気の弱い彼の事だ、その小さな声が距離のある此処まで届くことはなかった。


「ただし、終わったら私の元へ直ぐ戻りなさい。良いですね?」


 念の為の指示を口にすれば何度か縦に首を振って、彼はトロールの身体に触れてその硬い皮膚を撫でた。

 すると彼の掌より淡くエメラルドグリーンに輝く光が漏れだし、それがトロールの身体を包み込んでいく。

 身動ぎしたトロールが身体の痛みが引いていく感覚に微睡みながら大きな目蓋を開いては自身に触れる存在を見下ろしているのが上からでも解った。


「…………。」


 此方の事などすっかり忘れているのか彼は上には見向きもせずに、トロールへと彼の唇が僅かに動くのが視認出来た所で彼女には何を話しているのかを知る事は出来ない。

 再度暴れる様子もなく、寧ろ自らよりもずっと小さな手に分厚く大きな指を触れさせているトロールを横目にその場を立ち去ろうと足を進めていくと、目の前にリーダー格の男が不安そうに此方を見詰めていた。

 彼の後ろでは未だに部下達が胴上げしたりとまだ収まっていないらしい様子でいるというのに、どうしたのかと見返せばその男は「あの、」と口を開いた。


「なんでしょう?」

「あれを自由にさせて……本当に、大丈夫なのでしょうか?」


 あれ、とは?

 その疑問は直ぐ様解き明かされる。

 リーダー格の視線の先は大穴、恐らくはそこにいる人物の事を指しているのだろう。

 そして彼の思惑を察した彼女は、心底うんざりとした思いで肩を落とすと”なんだ、これでもまだ縛り足りない・・・・・・のか”と天を仰いだ。

 それに気付いているのかいないのか、恐怖を感じているらしい震えた声音で男は続けて話す。


「噂に聞いた通り、凄まじい…御力でした。初めて目にして……助けて頂いたのは理解しているのですが、私にはとても……恐ろしくて……!!」

「そうでしょう、あれは国を護る“剣”として今まで散々躾られて・・・・きたものですから。しかし貴方は、あれが自分に刃を向ける事があるかもしれない、と……そう御考えで?」


 ミネルヴァの言葉に、男は息を呑み露骨に動揺を見せた。

 それに対して彼女は鋭い目を細めると、扇子に隠した口で静かに告げる。


「そうね、もし恨みを持たれる・・・・・・・ような事が身に覚えがあるのでしたら、我が身を振り返ることです。」


 突き放すような、冷ややかな言葉に男はいよいよ震え上がり冷や汗をだらだらと流しながら狼狽えた。


「私に言えることと言えば、それくらいかしら。」


 そんな彼に軽蔑の眼差しを送り、横を通り抜けて彼女は去っていった。




 ──この世界には幾多の生物が息づいている。


 犬、猫に始まり、馬、鹿、鳥に魚。

 幾つもの種類を広げながら彼等は自然が与える数多の生存競争に強いられた中を懸命に生き抜いていた。


 そしてそれは人間も同じくして。

 世界の生態系において頂点に君臨する彼等の種族は、その高度な知恵と念密な社会性を持って、非力ながらも他の生物を利用そして使役し武器や堅牢な建物を作っては身を守り他の種族を圧倒してきた。


 しかしそれは別の世界でのお話。


 此処は魔法と幻想が息づく、科学だけでは理解し得ない世界。

 そこには人間達の不可能を可能とする“魔力”と呼ばれる未知と奇跡を象徴とする力の根源を糧に生きる種族達──その総称を、“魔族”と名付け、天・地・海の様々な場所で数多の種類を持つ彼等が猛威を振るう、強者が蔓延っていた。


 人間達はそれらに対抗するべく、国を作り、武器を作り、策を用いて彼等魔族への対抗するも、彼等が持ち得るのは圧倒的な力だけではない。

 魔力を源に自発を可能とする奇跡“魔法”を扱う彼等に人間達は敵う筈もなく、そんな怪物達と常に隣り合わせの現状に人々は日々いつ襲ってくるか解らない脅威に恐れ震えながら過ごしていた。


 そんな彼等の元へ、ある日希望の光が射し込んだ。

 それは、人の身で在りながら奇跡の力“魔法”を使い、強靭な肉体と常軌を逸した力と知恵を持ってして人々を守護する存在──勇者の出現だ。

 彼を始めとして人々は魔族の脅威より身を守る術を手に入れ、やがて世界中に人々は散り、新たなる国を築き、そして人々自身で魔族に対抗する術を手に入れられる様になっていった。


 そして、かつて勇者がその力を貸し数多の知恵を授けられたとされる国は今や世界最大の国となり、最も人口が多く、最も安全で、云わば人類の楽園とも呼べるその地に人々は親しみと敬意を込めてこう呼んだ。




 ──我ら人類の都、“スケルトゥール王国”と。




 偉大なる勇者を崇めたて、そして彼より得た恩恵により武力を誇り技術を誇った栄光あるかの国は今、その頂点の突然の死去による代替わりに国内外共に皆期待と不安に浮き足立っていた。

 既に僅かながらにも各地で混乱が生じ始めている中、人類の最先端を走る国としての面目もあってトップ不在を長くする訳にいかずに先代国王が残した三人の兄妹達は各地様々な分野で走り回って多忙を極めていた。


 末妹、“ミネルヴァ”は先代が残した杜撰な国費の整理と調整、そして不必要な雑費の使用先の再確認と必要があれば差し押さえや徴収の管理、そして兄二人の補佐を。


 次男、“アルクレス”は先の事件・・で起きた人員削減による貴族や大臣などの国内の要人への各持ち場への再振り分けや、度々見掛けられる様になった謀反への対処や始末、警備の調整や軍の再編成を。


 長男、“ソロモン”は急遽執り行う事となった国王職務の引き継ぎや国内外問わず各要人への顔合わせと話し合いの場の日程調整、説得、そして必要があれば言いくるめるなど。


 各々が部下や国を巻き込み、国の明日の為にと奮闘していたのだった。


 そして迫る“王位継承式”に備えるべく、要心に越したことはないと王宮を離れる訳にはいかない兄二人を置いて国内各地へと足を運び現地の様子を直に確認をし終えて、漸く国の中心たる王都への帰路を進む馬車の中第一王女にして末妹たる彼女“ミネルヴァ”は溜め息を吐いた。


「ああもう、辛気臭くて敵いませんこと! どうして貴方を外に出せなくて、馬車の中に引き入れなくちゃいけないのかしら?」


 彼女が不満たらたらに、大袈裟に声に出してみれば、いつものように目の前の人物が身を縮込ませて「ごめんなさい」と呟いた。

 馬車の車輪が小石を踏みつける度に上下に揺れて、同時にがしゃんと耳障りな音が聞こえる度に彼女の苛々は募っていく。

 そんな彼女と二人きりで向かいの地べたに座る彼は俯いて、苛立ちを見せる彼女に対してビクビクと震え縮込まろうと身動ぎするとまた鉄が擦れる音が響いた。

 彼の手や足には先程よりも重厚な枷が付けられており、それは背後にある馬車の壁へと繋げられている。

 煩わしい音を奏でるそれは彼の力を恐れる者達への譲歩案であり、目下彼女の苛立ちの一番の原因でもあった。

 鉄臭くて敵わないそれは、彼女が彼を自由に連れ回すのに決して必要な物ではない、寧ろ邪魔で仕方無いのに彼の事で後ろめたい・・・・・奴等はこうでもしないと直ぐつっかかって面倒な事になるのでそんな彼等に態々用意させたものだ。

 こんな臆病者相手に此処までするのも馬鹿馬鹿しく感じつつも、その喧しい口を塞ぐ為に、側に置いた彼を鎖に繋ぐしかなく同時に目を離す訳にもいかなくて仕方なく側に居させていたのだ。


「謝らないで。貴方のその何でもかんでも謝る所、本当に腹立たしいの。鬱陶しくて仕方がないわ。今すぐ止めて頂戴。」


 こんなことで苛々してしまっても仕方がないと、文句も言えない彼に当たってしまった事に反省しつつも度重なる疲労からか起きる頭痛に額へと手を翳し眉間に皺が寄ってしまう。

 他人の顔色を酷く気にしてしまう彼はそんなミネルヴァの様子に気まずそうに口をつぐむと揺れた馬車が鎖を揺らして一際喧しく金属音を打ち鳴らし、慌てて鎖が鳴らないよう抱えようとしては、音が気に障ったのか不快そうに顔をしかめる彼女を見て思わず謝罪が口から溢れてしまった。


「ご、ごめんなさ、」

「アーサー……アーサー・トライデン!!」


 するなと言い付けた無駄な謝罪が遂に頭に来て、少しでも声を張り上げればアーサーと呼ばれた男は涙を浮かべて震え上がり必死に身を屈めて謝罪を繰り返す。

 情けなく、みっともなく頭を下げて遂には地べたに伏せて震えるこの男の姿に、更に苛立ちが沸き上がった彼女は彼の胸ぐらを掴み上げると烈火の炎の如く怒りに燃えた鋭い目付きで彼を叱咤した。


「貴方、それでも勇者ですか!? 良い加減しっかりなさい、この“腰抜け”!!」

「ひ、ぃぁ……!!」


 “勇者”とも“腰抜け”とも呼ばれた彼…“アーサー・トライデン”は今にも溢れ落ちそうな程目に涙を溜め込んで震える唇から掠れた悲鳴を上げる。

 これが先程、あの巨大なトロールを一人で退治したとは、初見ならば到底信じられない事だろう。

 ……そう、この酷く臆病な泣き虫の男こそ、かつて人類を魔族から救い幾多の困難を退け知恵を与えて我等に平和をもたらしたとされる“古の勇者”の後続である、神が人類に与えた身を護る為の要“二人目の勇者”だ。

 それだというのに、国が犯した罪・・・・・・が形成したこの男の惨めな姿を見る度に、この胸が張り裂けそうな程怒りと悲しみが彼女の胸の内に沸き起こる。

 平手で打とうとしたそれを振りかざしては降ろさないまま、怯えて頭を抱え「ごめんなさい、ごめんなさい……っ」とばかり口にして止まない彼を見下ろしては悔しさの余り唇を噛み締めた時だった。


「御止めなさい、ミーニャ。アーサーが怖がっているだろう。」


 不意に馬車の外から聞こえた声に、彼女は思わず「きゃっ」と小さくも恐れではない悲鳴を洩らす。

 それは先程までと違い可愛らしいささやかな声で、その時に怒りすら吹っ飛んでしまって替わりにその頬を赤らめながらその声がした方へと振り向くと、いつの間にか帰還を終えたのか窓を覆うカーテンの隙間からちらりと見えた景色は何日か振りの漸く辿り着いた、彼女が暮らす見慣れた場所だ。

 ゆっくりと開かれた馬車の扉の向こう側には、短い銀髪を春風に靡かせて此方を見詰める青年が穏やかな微笑みを浮かべていた。


「ソール御兄様……いらしていたのですね! 御兄様に御迎えして頂けるなんて、ミーニャはとても嬉しゅうございますわ……!」


 その姿を見てうっとりと恍惚の表情を浮かべていると、彼女の降車に手を貸そうと差し出されたそれに感極まって火照ってしまった頬を両手で包み隠してしまう。

 つい乙女みたく照れてしまったものの、思い切って自らの手を重ねると流れるように手を引かれて、見取れてしまう程優雅にエスコートしてくれる彼に彼女は目も心も釘付けになっていく。

 そしてまるで恋人みたいに腰を抱き上げられてくるりと翻しては丁寧に、優しく地に足を付けさせて貰うと至近距離で自分を愛おしげに見下ろす憧れの兄の顔に、ミネルヴァの薄く桃色が仄かに彩られた唇からは堪らないと言わんばかりに甘い吐息が溢れた。


「公道整備の任、お疲れ様。魔物が居たと聞いたのだが……怪我は無かったかい?」


 そうして薄く真っ白なグローブに包まれた掌が、ミネルヴァの白いオペラグローブに包まれた手を引くと彼はそこに口付けを落とした。

 嬉しさの余りくらりと気が抜けてしまいそうになるのを耐えきり、熱の籠った眼差しで見詰めると彼女は頷いて口付けを受けた手を胸に抱いた。


「ええ、ええ…! 勿論、怪我無く帰還致しましたわ……!」


 彼女の言葉に安堵の表情を浮かべる彼へ、ミネルヴァは続けて声をあげる。


「もうすぐ御兄様の王位継承式ですもの。最ッ高の式典にするべく魔物だろうと敵襲だろうと、この私“ミネルヴァ・フォン・スケルトゥール”が何人足りとも御兄様の邪魔などさせませんわ!」


 そうして自らの胸に手を当てて誇らしげに、彼女は高らかに宣言すると彼は微笑ましげに小さく拍手を送った。


「そうかい、ミーニャは頼もしいなぁ。勿論私からも、頼りにしているよ。我が麗しの妹、ミーニャ。」

「はい! ですから大船に乗った御積もりで、御兄様は式典に備えてくださいませ。私、御兄様の晴れ姿をとても楽しみで、楽しみで…ずっと心待ちにしておりますの。きっと歴代国王の中で一番素敵な御姿なのでしょう……ああっこのミネルヴァ、待ち遠しくて堪りませんわ……!」


 両頬に手を添えて彼女はうっそりと目を細めて想い耽る。

 そしてまた兄の名を呼び心踊る談話を続けようと口を開こうとした時、後ろであの耳障りな鎖の音が擦れ鳴った。

 そちらへと視線を移した兄に釣られて彼女も振り返って見れば、まだ馬車の中で鎖に繋がれたままのあの男が日の光が眩しそうに瞬きを繰り返しながら顔を出していた。

 すると彼女の横を通り過ぎてその捕らわれな男へと歩み寄った兄は、ミネルヴァと変わらずその人物にも手を差し伸べると彼女の時とはまた違った、穏やかな笑みを浮かべた。


「アーサー、御帰り。」


 只それだけ。

 それ以上何を言うでもなく彼は手を差し伸べた相手に囁くと、その相手であるアーサーは苦笑で返した。


「……ただいま、ソロモン。」


 ガチャ、と彼の後ろで鎖が突っぱねた音がした。

 アーサーは彼──ソロモンと呼んだミネルヴァの兄である男の手を取らないまま馬車の中から見下ろすと、彼もまたそれだけ口にして再び唇を閉ざしてミネルヴァへと視線を送る。

 恐らく鎖をどうにかして欲しいのだろう。

 身動きが取れず困ったような視線を受けるも、最愛の兄であるソロモンの気がそちらへ移ってしまった事に少しだけ嫉妬心を刺激されたので彼女はついそっぽを向いてしまう。

 そんなことをしていると枷に気付いたソロモンから手を伸ばしてアーサーの手を自ら取ると悲しげに手を撫でて労った。


「すまないねアーサー、本当は君にこんな仕打ち許したくないのだけれど……痛くないかい?」

「大丈夫、だよ。…うん、これくらい、なら…もう慣れっこ、だし……。」


 吃りがちな彼の言葉により一層悲しげに気を落とすソロモン。

 それをまた「ごめん、失言した…!」とまた謝ってアーサーは慌てふためく姿にいよいよ頬を膨らませたミネルヴァが手に持った閉じた扇子を掌に打ち付けて大きな音を響かせた。


「み、ミネルヴァ……?」


 不安そうに自分の名を呼ぶ彼の目と視線が合う。

 あの柘榴の瞳には兄にエスコートされ未だ少々心が浮き足立っている彼女の胸の内を見透かされているようで、今の彼は先程と違い怯えは少なくまともに話せそうだということに少しばかり思う所があるものの苛立つ要因がなくなって丁度良いと彼女は告げる。


「貴方、仮にも御兄様の親友を名乗るのなら、もう少しシャッキリなさいな。口を開けば、やれ“ごめんなさい”だの“すみません”だのと……良い加減聞き飽きましたの。…次口にしたら、この後の“授業”を増やしますので。」


 悪しからず、と残してちらりと見遣れば彼の顔は蒼白へと変わっていく。

 よく見ればその手は側にいたソロモンの服にしがみついており、助けを求めるようなそれに彼は苦笑していた。


「い……嫌だ……!!」

「あらそう。でしたら口に気を付けることです。簡単な事でしょう? …さ、枷を外しますので貴方も早々に馬車を降り──きゃっ!」


 馬車に揺らされ続けた疲労なのか、足元を踏み外して倒れそうになるミネルヴァ。

 咄嗟にソロモンは駆け寄ろうとするも、“ガシャンッ”と一際大きな破壊音と共に横を疾風が走った。


「……っと、」


 気が付けばソロモンの隣に誰も居らず、倒れかかったミネルヴァの身体はふわりと持ち上げられて、計らずも身を委ねる事となった相手を見上げた。

 ローズブロンドの少し長く伸ばされた髪が風に拐われて、普段見られない前髪下に隠されていた柘榴色の瞳が自分を見下ろしている。

 瞬きする度に瞳の奥に映る星が瞬く硝子玉みたいな目が、久し振りに見る事が出来てつい眺め入っていると、折角ぱっちり開いていた綺麗な眼差しが気まずそうに伏せて逸らされてしまう。

 何となく残念に思っていると前髪を吹き上げていた風も収まっていったことで、愈々それは隠れてしまった。


「……勿体無い。」


 ぼそりと呟く。

 折角見た目は良いと言うのに、此処の環境が彼を随分と変えてしまった事が悔やまれる。

 ミネルヴァは元々の彼を知る訳ないが、古の勇者もそうだったという彼の“ローズブロンド”の髪に想いを馳せる彼女はアーサーの腕の中で無念の想いに溜め息を溢してしまった。


「あの……降ろして、良い…?」

「ええ結構です、御勤め御苦労様。感謝致しますわ。」


 視線に耐えきれなくなったのかだらだらと脂汗を流しながらひきつった表情で許可を求める言葉を口にするアーサーに、すんと静かな表情へと切り替えた彼女が扇子で口元を隠して承認の言葉で返す。

 ゆっくりと足元に気を配りながら彼女の身体を降ろすアーサーの役目は“王族の護衛”だ。

 過去に色々とあって監視役とその指導役を兼任する彼女と主に王国内での行動を共にする彼は、“三人”の王族に身の危険が迫れば直ぐ様動けるように躾られている為にそれは考えるよりも先に行動を起こすように成っている。

 故に、この時も彼は思考するより先に身体を動かした訳で──、


「…………あ、」


 ミネルヴァから離れた彼の顔は青く染まる。

 何かと思い、震え始めた彼の視線の先へと振り向けば察したらしき困り顔のソロモンの隣に何かが粉々に砕かれたらしい金属屑の山が床に散らばっていた。

 瞬間彼女の脳裏に浮かぶのは、先日枷の支給先へ送った代金の額とそれが利用された期間の短さ。

 更には現在の国費で利用可能な金額にその内で式典に使われる額と、残った額で遣り繰りする為のスケジュール。

 忌々しい古株爺連中の非難の声と要求と……それから、それから。


「…………あれ、今朝下ろしたばかりのものですよね?」

「……は……はい……。」

「……何で、ああなっているのでしょうね?」

「……こっ……壊して………しまい、ました………っ」

「アーサー……あれの金額、知っています?」

「ぞ、存じて……ございません……!」


 マルサラカラーの波打つ髪がふわりと風もないのに靡き始める。

 ただならぬ雰囲気を醸し出す彼女を目の前にしてガタガタとバイブレーションすると共に大粒の涙を目尻に込み上げたアーサーは足がすくんで地べたに尻餅を付いた。

 それに迫るように閉じた扇子をゆっくりと、何度も掌へと打ち付ける彼女は穏やかな笑みを浮かべて普段しないような猫なで声でアーサーの名を呼んだ。


「ええ、ええ、そうでしょうとも。国費に関しては私の務め。貴方には関わりの無い事ですもの、知らなくて当然です。それでも良いのです。」


 ピシャリ、掌を打って一回目。


「勿論、私も鬼ではありませんので……転んでしまいそうな所を救って頂いたのですから、今回は目を瞑りましょう。…ええ、仕方の無い事なのですもの。貴方は悪くありませんの。」


 ピシャリ、再び鳴らして二回目。


「只……これだけはよぉく覚えて欲しいのです…………ねぇ、アーサー? これで一体、幾つ目・・・なのでしょうねぇ……?」


 バッッチンッ!!

 掌が赤く腫れるのも御構いなしに、扇子が強く掌を打ち付けられる。


「ごっ、ごめんな、さ……!!」


 そこまで口にして、アーサーは「しまった」と身体を強張らせた。

 顔を伏せてゆらりと身体を揺らした彼女が、低い怒気を孕めた声音でアーサーに告げる。


「言い付け、破りましたね……?」


 ゆっくりとアーサーに差し向けられた扇子の先で、パチリと電流が走ったように見えた。


「ミーニャ! 落ち着いて、気を静めなさい。彼も悪気が有った訳ではないのだから……この兄のお願いを聞いておくれよミーニャ、アーサーを怒らないであげてくれ…!」


 慌ててアーサーとミネルヴァの間に立ち塞がり、ソロモンは僅かに焦りを見せながらも声をかけて宥めようと必死になるが、ゆらりと持ち上げられた彼女の表情は恐ろしく穏やかに微笑みを浮かべていた。


「ええ、ええ、ですから、私は怒りはしませんの。只少し、考えを改めた・・・だけですのよ?」

「考えを、改め…?」

「はい。なので……今からの“授業”は“私の”ものに致しますね……先生・・?」



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