過去のKACの作品
遂に財布が空になって、ここに戻ってきてしまった。(KAC20203お題)
僕の名前は、
今日は僕のとある一日の紹介をしたいと思う。
僕は冒険をしている。
もっとも世界中を飛び回っているわけではなくあくまで僕のいる国を見て回っているのだけれど。
ちなみに僕のいる国は倭という島国だ。なかなかに面白い国だ。お寺や神社はやはり生で見るのに限ると思う。
さてそんな僕だが1つ問題があるのだ。
旅に必要なのはやはり資金がいる。このご時世、人情だけで何とか食べ物や宿が賄えるほど甘くはない。
そして僕の出身の家は実は意外と、いい家なのだ。何を隠そう、僕の実家はこの島国で言えば一番有名なのかもしれない。
そしてそんな家に生まれれば、当然厳しい教育を受けることになる。
それが嫌で、僕は家を飛び出し自分探しの旅をしてきたわけで。
いや、そろそろこの話はやめよう。これ以上は長くなりそうだ。
それより今目の前にある問題をどうにかしないといけない。
お財布が空、そして実家の前。ここまでくれば聡明な人なら気づくかもしれない。
そう。僕は自分で『こんな家嫌だー』と言っておきながら、お金ちょうだいというなかなか図太い話をしに来たのだ。
然し、言うまでもなくそんな都合のいい話はないだろう。
今は実家へと向かっているが、恐らく一歩でも家に入ったら、使用人が飛んできて速攻で捕まってその後はお仕置き。その後僕は監禁されることだろう。
「やっぱりやめようかな……」
進行方向を180度変える。いわゆるUターン。
そうだ、別に僕は稼げないわけではない。バイトくらいは何度か経験がある。それで何とか賄ってもいいが。それもそれで気が進まない。
「いやでも……・」
働きたくないわけではないのだが。今は旅をすることがすごく気に入っている。だから一つの場所にとどまりたくない。すぐに旅立つので3日だけ働かせてくださいと言うのは、その店に大変失礼だろうと個人的には思ってしまう。
帰ろうとさっきUターンしたにも関わらず、またUターン。結局360度回転しまた、実家への道を歩き始める。
「うう……」
本当に気が進まない。アニキは怖いのだ。
いや悪い人ではない。その家の長として今は忙しい日々を送っている。
しかしそれをお手伝いしない僕をさぞ恨んでいることだろう。
「だめだ、だめだ。アニキに捕まるのは」
Uターン、来た道を戻り始める。
そうだ。アニキは怖い。怖いのだ。何をされるか分からない。昔笑顔で『僕の実験台になってよ?』と言われ、一日中、言葉に言い表せない変な術を試されたときは、本気でイカレテると思った。
「うう……でもぉ」
しかし、お金がないのは事実。旅をつづけるためにはやはり本家からいくらか頂戴するしかない。こんな時優しいおじいちゃんがお小遣いをくれたら本当に嬉しい。
「いや、勇気を出せよ俺。いつまでもアニキ怖がってたらだめだ」
さっきまで来た道を戻ってたが。またまたUターン、実家への道を行き始める。
「もしもし、そこの若いの」
「ふぁい?」
「なにしとるんかね」
老人に話しかけられた。見るといつの間にか僕の周りに数人が居て僕を奇異な目で見て来る。
そりゃそうだ。だって、さっきからうろうろうろうろ。独り言を言いながら、Uターンしまくっている僕を怪しまないはずがない。
「ごめんなさい。すみません怪しい者じゃ……」
「ふぉふぉふぉふぉ、気にすることはないぞ……タイキ」
「え?」
なんで僕の名を?
すると老人はみるみる姿を変えた。
ああ。ああああああ。
アニキ……。
「カネがないんだろう? 僕の新しい術の実験台になったら、お小遣いをやるぞ?」
拒否権はない。ていうかなんで見つかった。
実家までまだ1キロはあるはずなのに。
アニキは俺の手を掴む。もはや俺に拒否権はない。
「タスケテ……」
「おかえり」
アニキに引っ張られる。
先ほどまで簡単にできたUターンはもう許されないようだ。
うわああん。
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