第5話 そのご

 ***


「へえ、それが先輩のルーツなんですね」

 氷上高校、私が通っている高校の生徒会室。しかし今は生徒会ではなく、私のゲーム仲間を招待しての、オフ会。つまり、ゲームの中で知り合った人とこうして現実でも交流を深めているところだ。

「まさか、先輩の前に死神がいて、その死神を倒して先輩は現死神となった。恐ろしいです」

 今私は高校二年生になった。成績はいつも学年一位、生徒会副会長を務め、女子剣道部の部長にもなった。と言うわけでかなり忙しくなったが、もちろんレイドルワールドはまだ継続中だ。

 そしていま話しているのが、後輩の、優介と茜。出会いはもちろん向こうの世界で。初めてフレンドに登録した二人でもある。

 こうしてテーブルを囲んで楽しくお話する相手ができて、楽しい時間を過ごせているのもあのゲームのおかげだ。

「僕も速く先輩みたいに強くなりたいです」

「わ、私も、先輩みたいにランキング上位十パーセントのエリート勢に入れるように頑張らなくちゃ」

 私は中央のビスケットをひとかじりしながら後輩たちの決意を聞いた。ゲームの話とはいえ目標にされるのは、少々恥ずかしい。

「優、茜」

 二人の名前を呼ぶと、

「なんですか?」

 と二人きれいにそろえて聞き返してくれた。

「あなたたち、今楽しい?」

 と聞くと、

「とても楽しいです」

「いい感じで楽しいです」

 今度は二人バラバラだったけれど、答えてくれた。

「先輩はどうですか」

 まさかの質問返しが来た。しかしその問いに対する答えは決まっている。

「楽しいわ」

 こうして今楽しい生活を送れているのは、レイドルワールドのおかげだ。

 あの日私は変わりたいと願ってあの世界に入った。それから夢中になった。

そして今、こちらの世界でも毎日が楽しく感じる。

 確かに私は変わった。あの世界で。

 その時会って、私にあの世界を教えてくれたかつての死神には感謝しなければならないだろう。

「先輩、そろそろ行きませんか?」

「おお、いいね。久しぶり先輩の戦いを見られるチャンスだし」

「仕方ないわね、ログインしましょうか!」

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