第5話 追記

 満月には神秘的な力があるという。その話は嘘か本当かは永遠の謎。こんな話が出るのはやはり月という存在が、見る者に何かの影響を及ぼしているからなのだろう。それは心動くほどきれいな見た目からか、もしくは、何かの魔力を秘めているからか。

 ある者は、何かいいことが起こるような気がする、と心躍らせ、またある者は、災厄が訪れる日だ、とその夜を怯えて暮らす。

 さて、なぜこのような話をしたのか。その理由を話そう。

 こんな都市伝説がある。満月の夜、何もなかったところにいきなり現れる喫茶店。外見にはこれと行った特徴はないが、その喫茶店を見た者は、なぜかその店に必ず入ってしまうらしい。

 ここまでは、この都市伝説を知りうる者が皆口をそろえて言う。しかしここからの結末が、人によって違うのだ。

 ある者が言うには、その喫茶店を訪れた人間は、その後自分が最も望んでいることが現実になり、その者は幸せな未来を歩むことができたと言う。

 しかし、別の者は、その喫茶店に入った者は、二度と帰ってくることはなかったと言う。魔女に食べられてしまったのではないかという話まである始末だ。

 どれが本当の話かは結局のところ分からない。

 そして最後にこれだけはまた一致するのだ。

 その喫茶店は、大きな悩みを持つ者の前に現れ、時空の法を犯し人の未来をよくも悪くも狂わせると。

 そして、その時の自分が望む未来への選択と行動がどれほど重要なものだったかは、それを選ぶ時にはまだ知る由もないのだと。

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