<秘密> 10

十二月七日。

この日の三時間目の授業は音楽だった。

池島千代の弾くピアノの伴奏に合わせて

子供達は元気に歌っていた。

俺はビデオテープの中で乱れていた池島の姿を

思い出してどうしても授業に集中できなかった。

たしかに

池島は歳の割には若く見えるし綺麗だった。

それでも一色とは親子ほどの歳の差だ。

さらに池島は既婚者だ。

そしてルールに厳しい池島が

不倫というルール違反をしているのは

皮肉としか言いようがなかった。

それに同じ職場での不倫は

発覚した時のリスクを考えても危険すぎる。

「怪談話」で済んでいるうちはよかったが、

現に大吾に秘密を知られている。

思い返してみると、

大吾が死んだ後、

俺達を率先して庇ってくれたのは

校長と一色だった。


『秘密を守る最も有効な方法は、

 秘密を知っている人間がいなくなること』


あの二人にとって

大吾の死はまさに渡りに船だったわけだ。

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