ep.1 ある女の子達の出会い



 人は別の世界に住んでいる人とは関わりたくないものだ。


 いつもクラスで一人寝ているふりをして、時間を潰している人。

 いつもクラスで本を読んでいるをふりをして、時間を潰している人。

 いつもクラスで一人の席の前にたむろって、時間を潰している人。

 別のクラスに行って、時間を潰している人。


 自分にとって、自分の人生は自分が主役。そんなのは当たり前であって、性格は違えど皆が皆、自身の心の中で思っているだろう。


 他人が死んだってどうでもいい。他人が話しかけてきたってどうでもいい。自分は自分。他人は他人。いつも私はそうやって、自分の空間を創り出している。


 特に変わったことはしない。

 校内では賑やかな話し声が聞こえ、外は静か。そんな昼休みの一時。


 私が腰を掛けるのは誰もいない、体育館の裏。そこにある階段。ちょうど目の前にある桜の木の葉っぱが、今や緑色に染まり夏の始まりを告げていた。


「はむっ……」


 朝急いで作った手作り弁当の中から、少し失敗し崩れている卵焼きを口に入れる。ほのかな甘みを感じ、飲み込む。


 私がぼっち飯を食べ始めたのはいつからだろう?

 いや、そんなことを自分に問いかけるのはよそう。心が痛くなるだけだ。


 今度はタコさんウインナーを口にする。


 中学校ではうまくやっていたと思う。小学校からの友達がいて、ボッチだった私でもそれなりに話す相手がいた。


 でも、親の都合で行くはずだった高校を諦め、知らない土地で知らない人達に囲まれて高校生活が始まった。


 まだ連絡を取っている友達は……いや、正直関係値的に友達と言っていいのかわからないがここは友達、としておこう。


 その、連絡を取っている友達は一人だけ。

 連絡と言っても特に送り合っておらず、最後のメッセージは今から3ヶ月前の2月に送られた『がんば!』という、高校生活の励ましの言葉だけ。


 私が既読して、返信せずそのまま放置しているのが現状。すぐ返信すればよかったのだが、どうすればいいのかわからず気づいたらそのメッセージは3ヶ月前。


 高校生活1ヶ月が過ぎ、GWが終わった月曜日なのに、私は一人誰もいない場所でお昼ごはん。

 これまで話しかけられ、友達になれるかもしれないチャンスはあったが私は一歩前に進めなかった卑怯者なのだ。

  

「はぁ……」


 深いため息が出た。

 一人の寂しさには慣れていたつもりだったが、いざ本当に一人になると心にスッポリと穴が空いた気持ちになる。

 

「誰かいないかな」


 私と仲良くお話してくれ、だなんていう傲慢なことは願わない。けど一緒にいてくれる人。喋らなくていいから、隣りにいてくれる人が欲しい……。


 顔を下に向けため息をついていた時、突然地面に人影が映った。ミニスカートが黒い影になっている。


「あんた、こんなところで何やってんのよ」


 声をかけられたので顔を上げたが、反射的に首を下に向けてしまった。少ししか見えなかったが、不良そうな長い金髪。耳にピアスを開け、睨めつけるような鋭い瞳。

 明らかに私と住む世界が違う女の子だった。


「ねぇなんか言いなさいよ」


 怖くて顔を上げられない。

 何かしちゃったのかな?



 この時の私は、まさか住む世界が正反対の女の子とと言い合うような関係になるなんて思いもしなかった。

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