正反対の私たち

でずな

ep.0 ある暑い夏の日



「すぅすぅ……」


 隣にはむんむんとした湿気が多い夏の空気に抗うことができず、ひんやり冷たいコンクリートに寝そべっている人がいる。

 金髪に、ポニーテール。そこに寝そべっているだけで絵になる。そんな、ただいるだけで人の目を集める人。


 彼女は私の彼女。こんなことを言ったらおかしいと思うかもしれないが、彼女は正真正銘私の彼女。いや、私が彼女の彼女かもしれないが。

 

 そんな大事な彼女は、額から滝のような勢いで汗が流れており、胸元のボタンが外され、ド派手なピンク色の下着があらわになっている。

 制服のミニスカートを裏返し、モデルのように細い足を生ぬるい風に当て涼しもうとしている。こっちの下着はあともう少しで見えそうな具合。


 いくらこの場所に私と彼女、二人っきりだとしても、こんなに無防備な姿を見せていいものなのか。

 彼女に乙女の心がないのは重々承知なのだが、もうちょっとちゃんとしてほしいところ。

 

「すぅ〜……ふぅ〜」


 大きくお腹を膨らませ、勢いよく息を吐いた。

 物凄く気持ちよさそうに寝ている。こんな夏真っ只中、外にいる私達がおかしいが暑い中でここまで爆睡できるのは私の記憶の中で彼女くらいしかいない。


「暑……いっ」


 気持ちよく眠っている彼女のことを片目に、パタパタ、と胸元のワイシャツで少しでも涼しくなりたいと扇ぐ。

 もう8月。気温は35度を超え、真夏と言ってもいい時期。校内にはクーラーが効いている教室がある。だが外にいる理由は、ただ居場所がないから。いや、ないのは私。彼女はたくさん友達がいて、たくさん居場所がある。対象的に私はなにもなく、あるものといったら彼女と一緒にいる昼休みのこの何気ない時間。気が向けば喋るが、基本は喋らない。そんな関係で私達が彼女、となっているのが疑問に思う人もいるだろう。私も同感だ。こんなので、彼女という関係になっているのが疑問。だが、それでいいとも思っている。二人で何もせず、ただただ一緒の空間にいるということが居場所になるから。彼女との関係は、彼女をしている私の立場だとしても分かりづらい。


「ふへぇ〜」

 

 暑さに耐えきることができず、彼女と同じようにコンクリートの上に倒れ込んでしまった。

 制服越しだが、氷のように冷たい地面があたりつい頬がほころんでしまった。彼女はこんな天国のような場所で爆睡していたのかと。


「あぁ〜……すぅすぅ」


 彼女が寝返ったせいで、耳元に吐息がかかってきた。こそばゆくて、でも息遣いを肌で感じられて嬉しい。

 こんなドキドキ緊張する気持ち、高校に入学した当初は思うとは思わなかった。


 少し関係の縮まり方はおかしかったが、彼女が彼女になったのは、そうあれは春を呼ぶ桜が散り、夏の風が拭き始めた3ヶ月前のこと。

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