第13話 知りたい

 朝の魔法騒動から時はどれだけ経っただろうか。1時間も経っていないだろう。どうにか収まり、そのことを知るのはリリと幹人とリズ、そして世界を見つめ続ける太陽と当事者の自然だけ。

 ふたりと一匹はまるで何事もなかったように街へと入り、食材を買っていた。

 街の住民たちは王都や隣りの村との取引に使う金の数字程度の文字しか分からず、リリにはある程度の文字が読めるのだという。

 材料をそろえたリリと幹人は並んで歩く。リズはリリの肩に乗り、幹人に可愛らしい視線を向けつつも肩には乗り移らないでいた。

 幹人の質問にリリは答えてゆく。曰く、誕生日など分からないらしい。夏が来たら来た、冬が訪れたら訪れた、それだけ分かっていればあとは冬の王都の祭りの歓声と賑わいを見届け聞き届け、そして終いに響く鐘の音と共にひとつ歳を取るのだという。

「どうして急にそんなことを?」

 訊ねられて当然のような顔で答えよう、そう努めるものの、頬は熱くて赤くて、心から恥ずかしさが湧いてきて息は詰まる。それを押し切るように、どうにか答えた。

「リリ姉のことが……もっと、知りたいから」

 顔を逸らして細々とした声で恥ずかしそうに答える幹人を見て、激しくニヤついていた。

「おやおや嬉しいね、幹人がそんなに私に興味を持ってくれていること、光栄に思うよ」

 そう言って微笑んで、幹人に語る。好きな食べ物など気にしていない、そんな余裕があるのならば今頃街に住まう人々は読み書きの練習に励んでいるであろう。まったくもってその通りだった。美味しいと美味しくない、それが軽くわかる程度。幹人の驚愕の視線にリリは羨ましいと思うほど、それほどの価値観の差があった。リリは街では魔女としては慕われるそうだがまずモテないという。

「確かに鼻は少し低いしあまり際立った綺麗さはないけど……普通にかわいいと思うけど」

「見た目的にぽっちゃりした子がモテるの。いっぱい食べられるくらいに豊かだと思われるから」

 世の中金か、内心そう毒を吐いて話の続きを聞き続ける。

「ああ、でも性格的には頑張りやな子が大大大人気! 仕事も手伝ってくれて一緒に生きてくれるステキな女の子だってさ」

 リリは言葉を続ける。

「ああ、魔女の子孫たるこの私はそういうの嫌いなんだ、価値観のズレかな」

 幹人は頷いて続きを聞き届ける。

「かわいい男の子がいい……キミみたいなね」

「待ってからかうのやめてよ!」

 照れが止まらず溢れ出る。熱くて恥ずかしくて、どこか愛おしいその想いは早くなくなって欲しくあり、そしていつまでもあってほしいものでもあった。

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