452.前世の夢②
「月和と一緒に月見っつうのも良いな!
団子うま!
しっかし……」
夢の続きね。
私が誰よりも良く知る黒目に、白髪混じりな黒髪をした初老に差しかかりかけたばかりの旦那さんが、ニカッと笑う。
私が生んだ3人の子供達は、皆20代前半で子持ちになったの。
だから年下だった旦那さんは、まだまだ若いお祖父ちゃんだったのよ。
旦那さんの視線を追って部屋の奥を見やれば、可愛らしい幼子達が大の字で寝転がっていた。
「ふふふ、今年も孫達は撃沈してしまったわね。
今年もまた2人でお月見だけれど、あの子達の可愛らしい寝息と虫の声を聞きながら、あなたとこうして過ごす時間も幸せよ」
同じように年を感じる手を口元に当てて、クスクス笑う。
今日は十五夜だから、それらしくススキとお団子を飾っていたの。
ススキは孫達と散歩しながら、旦那さんが摘んできたわ。
「ま、まあ、あいつらが爺婆のとこに喜んで泊まるのも、今くらいだろうしな。
俺としちゃ爺婆水入らずを邪魔してくれても……うーん……まあ月見は、今の方が良いっちゃ良い」
「あらあら」
途端、早口になる旦那さん。
素直に気持ちを吐露する妻に照れたのかしら。
17年生きた前世の記憶があるからか、それとも旦那さんの方が年下なのもあってか、初めて会った頃からずっと、この後もずっと可愛らしいと感じていたわ。
年を取っても仲睦まじく過ごせるのは、前世で見ていた政略結婚を主とする貴族とかけ離れた関係かもしれない。
前世の記憶を持ったまま、この世界に転生して暫くは驚きの連続だった。
けれど前世の両親には、疑うべくもなく愛されていると感じながら育つ事ができた。
旦那さんともこんな風に、死ぬまで夫婦として過ごせた事は……素直に心から嬉しいと思える。
運が良かったとも思うの。
子供だけでなく、孫達もこうして遊びに来てくれていたのも、また幸せな時間。
夢の中ではついつい、ひ孫ができるまで先は長いものの、長生きしていればひ孫とも、なんて未来を想像しているわ。
もちろん現実ではこの十数年後、ひ孫だって遊びにきてくれたのだけれど。
旦那さんが先に亡くなった後もそう。
きっと私が寂しくないようにと、家族達は想ってくれていたんでしょうね。
愛しい両親。
愛しい旦那さん。
愛しい家族達。
ただ感情のままに愛し、愛される事も、幸せな未来の時間を想像できるのも、こんなに幸せな事だったのね。
※※後書き※※
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