443.お孫ちゃま達と初心ラブ

「「待って!」」


 早朝。

秘密の小部屋に向かって廊下を歩いていれば、呼びかけられる。

振り向けば、あらあら、何ということでしょう!


 将来は綺麗系間違いなし、いえ、今も綺麗なのは間違いない!

けれど年相応の可愛らしさもばっちり兼ね備えたそのお顔は正に芸術品!


 そんなお顔の男の子と女の子が立っている。


 シュシュで髪を束ねる女の子の髪色は、男の子よりも青みがかっている。

年齢は前世の小中学生くらい。


 2人共とっても愛らしいのだけれど、どうしてかお顔からは必死さを感じる?

それに何故か警戒もされている?


 そうね、わかるわ。

こんなに可愛らしくて、将来が楽しみな外見だもの。

知らない人についてっちゃ駄目……って、声をかけられたのは私の方じゃないかしら?


 ふむ、と改めて観察する。

女の子は翡翠色、男の子は朱色の瞳。


 思わず首を捻る。


 男の子の顔立ちは温和だけれど、どことなく元婚約者を彷彿とさせるわ?

一人称は懐かしの俺様かしら?

女の子はあで可愛らしいお顔だけれど、誰似かまではわからない。


 けれど出自は間違えようがない。

だってこの2人の髪色は、王家由来の銀髪。

その上2人それぞれの髪と瞳は、月が綺麗なあの夜に見た国王と同じ色。

血のルーツが垣間見えちゃう。


 つまるところ、この子達は第1王女と第3王子の異母兄妹。

前々世の私からすれば、区分はお孫ちゃまで良いかしら?

可愛いから良いわよね!

お祖母ちゃん、お小遣いあげちゃっても良いかしら?

それとも今日が学園祭だから、一緒に出店を巡ってご奉仕しちゃう?


 ただ、まだ貴賓が学園に来るには早すぎる時間よ?

朝チュン的な時間なの。

この子達、こんな所にいて大丈夫?


「ロブール公女。

折りいって話……」

「あらあら、小鳥のさえずりが〜」


 王子が意を決したように話かけてくるけれど、折りいってのワードに私の回避センサーがビビビと反応。

気にするほどでもない朝の小鳥チュンチュンに乗っかって、逃走モードをオンにする。


「可愛らしい先客が私を呼んでおりますの。

失礼……」

「えい!」

「へ?」


 王女が気合いを入れて、可愛らしいお手々を私に向かって振り下ろす。


 するとビヨ〜ン、と金色に光るゴムバンド仕様の魔法が跳んできた?!

アイドルに紙テープ投げる的なやつ?!


 お孫ちゃまに紙テープで応援されるお祖母ちゃんも、それはそれで良いのだけれど、ダッシュ走行を決めた直後でタイミングが悪かったわ。

足に絡んで、よろけてしまう。


 もちろんその気になれば切るのも、消すのも、転移するのもできる。


 けれど、ここは学園。

学園祭当日もあってか時折、早朝でも学生達が行き来する。

その上、前世で言えば記憶もハッキリ保てるピチピチ脳の小中学生達だもの。

誤魔化すのは難しい。


 もちろん記憶改ざん精神系統魔法だって、お孫ちゃま達に使いたくもないから……よし!


「あ〜れ〜」

「「えぇ?!」」


 わざとらしく転んでしまおうと行動すれば、お孫ちゃま達には予想外だったのね。

マジかよ的な「えぇ?!」をいただいてしまうわ。


 まあ普通は避けるか、魔法で対抗するものよね。

でも私は今、無才無能なか弱い公女を絶賛キャンペーン中よ。

誰が何と言ってもか弱いの。


 倒れて怪我を装って、まずは保健室へ逃亡しましょう!


 女優魂の見せどころ!

薄皮1枚くらいの擦り傷だって作っちゃう!


 お孫ちゃま達が魔法を使ってダッシュ走行するけれど、王女は間一髪間に合わず。

でもこの年頃の子供にしては、ちゃんと魔法の鍛錬をしているみたい。


 といっても王女の年齢が記憶の通りなら、まだ正式な魔法を習う段階10才ではないような?


 王子は何とか間に合うけれど、まだ成長期序盤ですもの。

私に怪我をさせないよう、私を庇うようにして一緒に転がった。


 王子を下敷きにして体を起こせば、これまた何ということでしょう!


「まあまあ、ショタ萌えキラーを作動させるなんて!

やるやつね!」

「はい?!」


 やっぱり持つべきものは顔の良さ!

私としては中身年齢もあって、イケオジ推し!!

にもかかわらず、うっかり妄想が暴走しそうになるお胸のトゥンク感!

私が押し倒したかのような状況に驚く様も、とっても初心キュート!


 ふふふ、今度の小説ラブは青春爽やか学園初心ラブコメにしちゃいましょう!





※※後書き※※

いつもご覧いただき、ありがとうございます。

フォロー、レビュー、応援、コメントにやる気スイッチ押されてます。

サポーターの方には心からの感謝をm(_ _)m


第1王女の瞳の色を王妃と同じにしようと思っているのですが、以前に書いたような気がするものの見つけられない(^_^;)

書いてなかった?

もしかしたら瞳の色は書き直すかもしれません。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る