254.誓約と契約と祝福
『わたし、ディアナ!』
「気に入った?」
『うん!
ディアナがいい!
ありがとう!』
すれてない、とっても素直な反応が何とも可愛らしくて癒やされるわ。
ああ、この背面の硬い甲羅とは真反対のフワフワな腹毛に顔をダイブ……。
「「「ラビ」」」
いつの間にか私達を取り囲むように宙に浮く聖獣ちゃん達はどうしてこんなに目ざといの?
「私と契約してくれるかしら?」
『そしたら、いっしょにいられる?
おかあさんみたいにいなくならない?』
平静を装いながら両手を脇に入れて向かい合い、コツンとオデコ同士をくっつけて、誓約の為の魔法陣を全ての属性分足下に出現させる。
王子が息を飲み、お父様は……興味津々な雰囲気を醸し出しているわ。
もちろん今はスルーよ。
「ええ。
死が私達を分かつまで、私はあなたを育み、あなたと共に生きましょう」
これはこの子が聖獣になる為に使う魔力と生命力を私から補填させる為の強力な誓約魔法。
これによって、もしこの子が昇華を失敗すれば私は連座で命を失う事になる。
『うん!
ずっといっしょ!
うれしい!』
カチリと遠くで音が鳴る。
その言葉に反応するかのように私達の魔力が絡み、結びつく。
誓約が結ばれた。
「ええ、私もよ」
けれど純粋に喜ぶ幼いこの子が真実を知る必要はないわ。
それに前々世、ラグちゃんを昇華させる時も奥さんとキャスちゃんが手伝ってくれた。
あの異母兄のせいで人間全てを拒絶したラグちゃんに難航したあの時と違ってこの子は素直だし、きっと上手くいく。
「魔法師団長、何故あんなにも強力な誓約魔法を?
聖獣との契約に必要なのか?
あれは魔力だけでなく……」
「既に聖獣となっている者との契約とは違うからでは?
私も初めて見る。
魔獣から聖獣へ昇華する事を具体的に書いた文献を見た事はないが……そもそもあの魔法陣を出現させられるだけの魔力量と魔法の使い手でなければできないのなら、それも頷ける」
「危険は?
誓約の文言も不穏だったが……」
「他の聖獣達が手を貸すなら未熟な魔獣でも何とかなるのでは?」
2人の話をそれとなく聞きながら、全ての魔法陣にそれぞれの属性に絞った魔力を通して起動させる。
色とりどりになった円陣は淡く光りながら足下で私達を中心に回転し始めた。
「私の後に続いて自分の名前で、自分の意志で宣誓して」
『うん!』
2回目だけれど、やっぱりかなりの魔力と集中力を持って行かれるわね。
けれど私と契約する聖獣ちゃん達皆が支えてくれているのを感じるわ。
前回よりずっと楽ね。
「我、ディアナを命の限り守り支え、共に在り続けると誓う。
我が名ラビアンジェ=イェビナ=ロブールの名にかけて」
お父様の言う通り、私は祝福名を持って産まれたわ。
理由はわからないけれど、ベルジャンヌの祝福名をそのまま引き継いでいた。
「イェビナ……」
お父様はもしかしたら気づいているのかもしれないけれど、そこで驚いている王子も気づく事になるかもしれないわね。
『われ、ラビアンジェ=イェビナ=ロブールをいのちのかぎりまもりささえ、ともにありつづけるとちかう。
わがなディアナのなにかけて』
魔法陣が個々に光を増していく中、ディアナが続ける。
ディアナの瞳の色が赤から金の散る私と同じ藍色に変わり、これで正式な契約によって私達は結ばれた。
ここからよ。
グッとかなりの魔力が消費され、白金に光る魔法陣が先に付けてあったリコリスの紋からディアナに吸収される。
『すごい……』
「聖の祝福をディアナに」
再び魔力が消費され、今度は黒銀に光る魔法陣が吸収される。
「闇の祝福をディアナに」
反発なく受け入れてくれているから、私の事はちゃんと認めてくれているのね。
これだけでも前回のラグちゃんよりずっと楽。
ラグちゃん、すまなそうな顔をしないで?
王族の血を引いていただけあってベルジャンヌの魔力量は今の私と同じくらい。
何よりあの体に宿っていた魔力は最初から全ての属性に均等で偏りのない適性度だったから、元々ラグちゃん聖獣化成功の大きな勝算はあったのよ。
『ラビアンジェ……』
そして次に水の青銀と風の緑銀と続けていけば、徐々にこの子が不安そうな顔つきになっていった。
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