253.ツッコミが脳天直撃

「それじゃあ、まずはこの空間の保護魔法を強化しましょうか」


 アルマジロちゃんが昇華するのに今のままではこの空間が耐えられない。


「俺が結界を張る」

「そうね、お願いするわ。

この子の魔力は土の気が強いから、水の気の力が強いラグちゃんが抑え込むのに最適ね」


 フワリとラグちゃんが銀色に発光しながら室内を一周すれば、小学校の教室ほどの広さの室内の気温が一瞬下がり、結界で完全に外から遮断される。


 もちろん私や他の聖獣ちゃん達は別だけれど、ラグちゃんが結界を解かない限り誰もこの空間への出入りはできなくなったわ。


 人も魔獣も聖獣も、魔法の属性によって得手不得手があるように体に発生させる魔力には偏りがあるのがほとんどなの。

今世の私も元々は水と風と聖と闇の属性に偏っていたわ。

他に火と土の属性があって今は鍛えたから偏りが無くなったけれど、普通は鍛えるのも難しいんじゃないかしら?


「これは……凄いな……」

「ほう、力を吸収して無効化するのに特化した結界か」


 男性2人は思い思いに感想を口にしているけれど、特に話し相手になる必要はないみたいね。


 と思っていたら、お父様?


 何故か魔法で炎をゴウッと巻き上げて火炎放射を壁に向かって放ったわ。

別に燃えないし吸収されるだけなのだけれど……。


「ほう」


 目をキラキラさせていつまで放射させるのかしら?

王子が隣でドン引きよ?


「おい、放りだすぞ」

「自由過ぎるよ」

「好奇心旺盛すぎないかい」


 皆呆れた様子で呟くけれど、最後のリアちゃんが羽をバサッと振ると火が途絶えたわ。

火はリアちゃんの18番オハコですもの。

うちの父がごめんなさいね。


「……む」

「お父様、ラグちゃんに放り出されたくなければ大人しく観覧なさって?」


 何だか不服そうなお父様に忠告しておくわ。

孫にこんな子いたけれど、お父様もこのタイプなのね。


 はっ、またまた聖獣ちゃん達と王子が残念な何かを見る目でお父様と私とを交互に見比べている?!


「「「「親子……」」」」


 心外ね。

もう少し良い子よ、私。


「コホン。

さあさ、アルマジロちゃん?」

「ギャ」


 これは早急に話題を変えるべきと判断してアルマジロちゃんに話しかければ、返事が返ってきたわ。


 ああ、この素直な反応が無性に私を癒やしてくれる気がもの凄くしちゃう。


「だいぶ私の魔力と馴染んだわね。

これから私と契約をしましょう?」

『けいやく?

どうするの?』

「私の付ける名前を受け入れてもらえる?」

『どんななまえ?』

「「「!!!!」」」


 あらあら?

聖獣ちゃん達が一斉に息を飲んだわ。

何かあったのかしら?


「そうねアルマジロだから次郎ちゃ……」

「その子は女の子だろう、ラビ!」

「んぅいたぁ!」


 リアちゃんのクチバシ・チョップが刺さったわ?!


 思わずしゃがみこんで頭を高速で擦って痛みを緩和する。


 リアちゃんは頭から飛んで絶賛パタパタ中よ。

素早い……。


「やはりな」

「ノー・ネーミングセンス……」


 ラグちゃんに続いてキャスちゃんもジトリとした、物言いたげな視線を投げてくる。


 ノー・ネーミングセンスじゃなくて性別を間違っただけよ?!

男の子なら太郎か次郎かポチかポン太じゃない?!


 それにしても痛いわ。

渾身の一撃ね。


「ツッコミが脳天直撃……そ、そう……女の子だったのね……」

「私の後継なんだからね、ラビ。

わかってんだろうね」


 ど、どうしてかしら?

顔の前をパタパタ飛んで静止する小鳥ちゃんが、牙を剝いてガルガル威嚇する肉食獣に見える?!


「公女……」

「ラビアンジェ……」


 ど、どうしてかしら?

向こうの男性陣も呆れた目を向けるわ。

何だかお父様の視線が1番納得いかない。


『なまえは?』


 くっ、つぶらな瞳に罪悪感をかきたてられちゃう。

渾身のダメージに心が痛むわ。


「そうね……あなたは本来なら水に落ちた時に命を落としても不思議ではない状況で逞しく生き残った子……ディアナはどうかしら?」


 生命力や月を象徴とするローマ神話に出てくる女神の名前よ。


「パクリでもノー・ネーミングセンスなラビにしては上出来だね」


 キャスちゃん?

褒めてくれてるのよね?


 ラグちゃん?

後ろでこっそり安堵したようなため息を吐いたわね。

ちゃんと聞こえたんだから。

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