252.親子……
「さあさあ、とっとと終わらしちまおうか。
ここからは時間と集中が勝負だ。
あんた達、邪魔するなり誰かしらに言いふらすなら記憶を改ざんしないとね」
リアちゃんだけじゃなく、この場の聖獣ちゃん達が一斉に部外者2名に冷たい視線を投げる。
「「黙秘する」」
けれど2人共特に気にした様子もなく当然とばかりに声をそろえて返答したの。
お父様、ちょっぴり目が輝いてないかしら?
好奇心旺盛なひ孫がよちよち歩きで飼い猫に突進していった時の可愛らしいキラキラな目を思い出したわ。
もちろん可愛らしさならひ孫と比べるべくもないのだけれど。
うちのひ孫ちゃんはよちよち天使だもの。
お父様……四公の当主や父親である前にやっぱり魔法馬鹿なんじゃ……。
「私達の事は気にせず好きにするといい。
何なら黙秘の魔法誓約でも結ぼう。
さあ、早く」
……何をするのかただ純粋に見たいだけの魔法馬鹿ね、きっと。
聖獣ちゃん達が皆残念な何かを見る目でお父様を……どうしてかしら?
私とを交互に見比べているわ?
「「「「親子……」」」」
呟きがそろったわ。
何故かしら?
いたたまれない。
そこに王子も混ざっているのが無駄にいたたまれないわ。
「ラビアンジェ、しないのか?
時間がないのだろう?」
「……ええ、そうですわね。
誓約魔法までは必要ございませんわ」
お父様は全く気にならないのね。
何だか同類扱いされているのに納得いかないわ。
「……そうか」
残念そうね。
誓約魔法をかけて欲しかったのかしら?
「その鼠のリコリスはお前の施したものだろう?」
「気づいてらしたのね。
左様でしてよ。
元々はヘインズ=アッシェにかけていたものの誓約だけを解いて移行させましたの。
でもお2人に誓約魔法は使う必要は無さそうでしょう?
あまりしつこいとここから追い出しましてよ」
「……む」
はっ、やっと口を噤んだと思ったら聖獣ちゃん達と今度は王子も再び残念な何かを見る目でお父様と私とを交互に見比べているわ?
「「「「親子……」」」」
呟きがそろったわ。
今度はいたたまれなさよりも納得できなさの方が……。
「ギャ、ギャ」
あら、抱えていたアルマジロちゃんが泣き始めてしまったわ。
「ごめんなさいね。
忘れていたわけではないのよ」
キャスちゃんとラグちゃんがふわりと浮いて離れ、誘うように部屋の中央へと進む。
私も進みながら両手で脇に手を差しこんで顔を合わせる。
ポロポロと涙を
『わたし、しぬの?
しにたくない。
おかあさん、いきろっていった』
獣体では話す事はできないらしくて、イメージが言葉となって頭に伝わってくる。
念話とはまた違うけれど……まあ同じようなものね。
「それはあなた次第。
けれど死なないように手助けはするわ」
そっと抱え直して頭を撫でながら紋を通して送る魔力の量を増やす。
この子、やっぱり元々の魔力量は多いのね。
なかなか満たされない。
『あたたかい。
おかあさんのおなかみたい。
あのときはゆっくりねむれたの』
「そう」
『おかあさん、わたしかくしていなくなった』
「そう」
伝わるイメージの中に川辺りが見える。
今よりずっと小さくて、甲羅ももっと柔らかそうね。
母親らしきアルマジロが慌てた様子でこの子に葉っぱを被せて鳴き声を上げながらどこかへ走る。
母親はほとんど魔力が無かったか、出産したばかりで力を使いきったかのどちらかね。
それを追いかけるような足音がいくつか聞こえるから、きっと肉食魔獣に母子で襲われたのね。
この後の母親がどうなったのかはわからないけれど、一晩経っても迎えの来ないこの子はお腹を空かせて川辺りをうろつき、水を飲もうとして落ちた。
ああ、それでリアちゃんの眷族のどんぶらこ目撃談に繋がったのね。
この子は身を守ろうと無我夢中で魔力を使って成長して、丸くなった甲羅の周りも魔力で殻を錬成して覆って閉じこもった。
あの悪魔に拾われたのはきっとこの時ね。
元々の魔力が多かったからできた事。
そして手加減なく必死に魔力で硬い殻を作って覆ったがばかりに……出るに出られなくなっちゃったのね。
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