214.聖獣プチバトル
「ラビと同じでライェビストの母贔屓が酷いだけ」
「キャスちゃんたら、ぷっくりほっぺが可愛いわ」
「むぅ、ほっぺたツンツンしないでよ」
イヤン!
カプッと甘噛みされちゃった!
痛くないけど、可愛いが過ぎちゃう!
ああ、頭皮で感じる腹毛と腹肉の絶妙なハーモニー的感触に加えて、甘噛み!
萌え死ぬとはこの事か!!
「ラビ、鼻の下を戻しな!」
「んぅいだぁ!」
「変態は止めて!」
リアちゃんはほっぺにクチバシチョップ、キャスちゃんは頭から離脱……。
「泣いちゃいそうよ。
へそを曲げないで?
ほら、お顔も元に戻したから」
「だったらここは私の……フギャ!」
「まあ、キックはいただけないけれど、お帰りなさい、キャスちゃん」
「僕のだ!」
「おのれ、狐!
ラビ、空中キャッチするんじゃ……あふん」
すかさず頭を止まり木にしようとしたリアちゃんに、空中浮遊していたキャスちゃんキックがお見舞いされ、頭皮に腹毛と腹肉を感じる間もなく、バサバサッとかぎ爪キックをやり返そうと飛んできたリアちゃんを両手でキャッチ。
からの、腕に抱え直して顎下のクチバシとの境い目辺りを指先でコリコリしてあげれば、艶めかしいお声が漏れたの。
「ふふふ、可愛いわ。
シャローナは特別よ。
それに今は私のお祖母様でもあるわ」
「だからって、目にあまる」
頭に伝わる振動で、可愛らしいお顔がプイッとそっぽを向いたのがわかる。
もう、腹毛にお顔を埋めて曲がったおヘソごと吸っちゃうわよ。
「でも今回の件が明るみになってもならなくても、遅かれ早かれロブール公爵家としてはシエナを切り捨てるはずよ?
マーキング紋もあるから、ベルジャンヌに絡めてお祖父様が一言言えばお祖母様も頷くわ。
それに残念だけれど……根本的にもう手遅れじゃないかしら」
ごめんなさいね、シャローナ。
ベルジャンヌの死後、まさか貴女がソビエッシュと婚姻を結ばされるなんて。
だから貴女が家族という
「まさかあの時の卵がこんな事に使われるとはねえ」
再び肩に移動したリアちゃんの声にはたとなる。
「お陰で僕達も、契約者のラビも、事が終わるまでは手を出せない」
苦々しそうなお声のキャスちゃんと、沈んだお顔のリアちゃん。
祖父母への感情は霧散する。
「心配しないで。
いくら私が祖母を大切に思う孫や前世の婆心を持つとは言っても、流石に聖獣ちゃん達にそんなお顔をさせたシエナの所業をいつも通りに流したりしないから。
若さ故では済まされないもの。
もちろん今は静観するしかないのも事実だけれど……」
ふむむ、と再び打開策を模索する。
「人もまた、自然界の一部だからね。
あの卵を孵化させようとする行為は、あくまで自然の成り行きでもあるさ」
リアちゃんがほっぺに頭をスリスリしてくれる。
「他人の魔力を無理矢理集めるのは人の業だけどね」
キャスちゃんの尻尾が私の後頭部をナデナデする。
仮に孵化した後で何かしら起こるのがわかっていても、自然界に多大な影響力を持つ聖獣ちゃん達や契約者の私は手を出さない。
だって卵の中身ちゃんが生きたいと望んでいるからこそ、魔力を抜き取る事ができているのだもの。
この世に生まれた以上、生きたいと望む事自体は自然の摂理。
ごく当たり前の欲求を聖獣ちゃん達と愉快な仲間達は無碍に扱わない。
「ただ、マーキングしたのは別の誰か。
シエナだけでは不可能よ」
「ぶふっ、それはそうだよ。
本来なら魔法の素質なんてないもの」
キャスちゃんたら、頭上で吹き出さないで?
「そこは努力したからよ。
努力の結果の方向性はどうかと思うけれど、あの子努力だけはちゃんとしたのよ?」
「この世に努力する者はたくさんいるけど、成果があれば他人を傷つけて良いわけじゃない。
ベルだって努力して、沢山傷つけられてても最期はその場にいた人も僕と竜以外の契約してなかった聖獣も、皆助けて未来に繋げた」
「キャスちゃん……」
「次はもう置いてかないでよね!」
「んぷっ……行ってしまったわ」
尻尾で顔面ポフンをしてから、どこかに行ってしまったわ。
「次はちゃんと一緒に連れて逝くのに」
「それが狐との約束だったね」
「ええ。
時々嫉妬で情緒不安定になるくらいキャスケットが望んでしまうなら」
やっぱり狐は犬科ね。
忠犬さながらに、いつかを信じて私を待ち続けたのだもの。
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