189.シースルーと半透明?
「マリーちゃんのバケツプリン……最高ね」
『トロトロなのに、玉子の風味がしっかりと……美味!』
お子様プレートを食べきったその後は、もちろんデザート。
シースルーなリアちゃんもご満悦ね。
ただ、ふとある事に気づいてしまったわ…………これ、共食……。
『ラビ、何か失礼な事考えてないかい?』
『凄いわ、リアちゃん。
聖獣なのは伊達じゃないのね。
そうね、確かにこれは失礼な考えだったわ。
ごめんなさいね』
『……素直に謝られるって……何を考えてたんだろうね』
『さあ、何かしら?
それよりおかわりはいかが?』
『いただくよ!』
ほっ、良かったわ。
気づかない方が良い事もあるわよね。
「そうだ、公女」
なんて念話を楽しんでいれば、ひと足先に食べ終えて満足そうなお顔の2人のうちの1人が口を開く。
「何かしら?」
「討伐した一角兎の他に兎熊の肉も持ち帰っているんだが、公女もいくらか持って帰るか?」
「まあ、本当に?!
嬉しいけれど、兎熊は痛みが早くてなかなか手に入らないお肉だから貴重よ。
いいの?」
兎熊は熊のような体つきで、お顔は可愛らしい兎よ。
一角兎のボスが長生きすると額の角を体内に吸収して兎熊になると言われているわ。
でもその場で素材を取って血抜きして、保冷剤効果を付与した魔石で保存しても、状態によって翌日には駄目になって強烈な生臭さを放つのよね。
新鮮なお肉は何も下処理しないと筋があってクセもそれなりに強いの。
貴重だけど、人によってより好みされる味と肉質かしらね。
『久々にラビの兎熊料理が食べられるのかい!
あの柔らかく筋がほろほろ崩れる肉質!
絶妙な加減のまろやかな肉本来のクセ!
食べたい!』
まあまあ、赤基調の小鳥ちゃんが小踊り始めたわ。
ああ、可愛らしい。
時折見せるふわふわしてる羽毛が……
「ああ、かまわない。
そもそも傷みやすいし、他のパーティーメンバーが遠慮したから8割くらい持ち帰ったが、俺は焼くくらいしかしないから」
はっ、いけない。
まだ話の途中ね。
自主規制しなくっちゃ!
「なら一旦持ち帰って、少し保存期間が延びて柔らかくなるような下処理をしたものを後日またおすそ分けし直しましょうか?
焼くだけで良いようにしておくわ」
「あら、あの兎熊の肉がそんな風になるの?」
あらあら、昔何かでドジを踏んで逃亡&潜伏中にどうしてもお腹が空いて、携帯していた生臭い兎熊のお肉を食して吐きながらしのいだという伝説を持つ王家の影も興味津々ね。
「ええ、少し手間をかければ筋もほろほろで臭みも和らいで食べやすくなるの。
今日戻ってきたのなら、暫くお休みよね?」
「ああ。
美味くなるなら、頼みたい。
保存期間が延びるなら余計だ。
持ち帰った物を全て頼んでもいいか?
他にも分けたい人に分けてくれればいい」
「わかったわ。
ガルフィさん、良かったわね」
「ええ、ありがとう!
あなた将来いい男になるわ!」
「……そ、そうか……」
ふふふ、隣の席からずずいっと近寄る押しの強い美人オネエ様に圧される厳ついラルフ君……良い!
これはこれで滾る構図!
『ラビ、次の小説の題材が決まったみたいだね!』
プリンを食べ終わったリアちゃんが私の頭に再び鎮座してテンションを上げているわ。
『ええ!
早く帰って書くわよ!』
『よっ、作家先生!
エロスも頼むよ!』
『任せてちょうだい!』
まずは大奥物を完成させて……。
「そういえば公女の兄と妹を学園で見かけた」
まあまあ、それとなくオネエ様から距離を取ったうちのリーダーの言葉にうっかり現実世界に舞い戻ってしまったわ。
「あらあら、2人が?
生徒会のお仕事かもしれないわね」
「いや、兄の方は第一王子と校内を歩いていたからそうかもしれんが、妹は……」
首をひねったわね。
どうしたのかしら?
「なんとなく半透明だった?」
ラルフ君の言葉に私も首を捻っちゃうわね。
半透明って何かしら?
幽体離脱?
ホラーなお話かしら?
思わず頭の鎮座ド派手鳥なる聖獣ちゃんを見上げそうになってしまったわ。
リアちゃんは完全なるシースルー状態だけれど。
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