188.フードファイター降臨と共闘

「ゴホン、それで?」


 頬を赤くするといつもの美人さんの中に可愛らしさが出て魅力増し増しだったのに、咳払い1つで素に戻ってしまったわ。


「いただきながら話しましょう。

このオムライス、絶品よ。

ユストさんがかつて夫婦めおと漫才を繰り広げていたオバサンがあそこの店主さんと仲が良くて、昔お仕事を紹介してもらったの」


 せっかくのSSSトリプルS定食が冷めちゃう。


「そうね。

……んんっ、本当、美味しい!

玉子がとろとろ。

そういえば前にそんな事を言ってたわね。

公女が何してるのかって呆れたけど、家庭環境考えたら5歳の子供とは思えない英断に行動力だったと思うわ」

「ふふふ、ありがとう。

フライもサクサクよ……さすがマリーちゃん。

もちろん当時は身分と年齢を偽っていたわ。

5歳くらいから2年ほど芋剥きと皿洗いと、最後の方は夜に働く人達用の賄いメニューを担当していたかしらね。

辞めた後もユストさんを通して時々お願いされれば、お手伝いしていたのよ」

「それにこのパスタ!

ソースが濃厚!

それはそれでツッコミどころ盛り沢山だけど、まさか王子と婚約後も手伝っていたの?」

「嬉しいわ。

そのソース、マリーちゃんの旦那さんと私が一緒に考案したソースなの。

旦那さんとしてはいかがなものかと思うけど、料理人としての腕は良かったのよ。

その手のお付き合いは大事だし、ユストさんも初心忘るべからず主義だもの。

繁忙期は週に2日はユストさんのフォローもあって手伝いに行っていたわ」

「……それを聞くとより複雑な味ね……色々な意味で。

影の目をすり抜けて外で働くなんて……時々得体がしれない動きするんだから」


 怪しい何かを見る目つきは止めて欲しいわ。


 でもその様子では私の隠密行動はバレていなかったのね。

さすが聖獣ちゃん達と私。


『そりゃそうさ。

私達が手厚くサポートしてたんだからね』


 鳩胸を張るリアちゃんは、何て可愛らしいのかしら。

もちろん鳩ではないのだけれど。


 ああ、そのふわふわに柔らかいお腹の羽毛にほっぺをすりすり……。


『ちょっとラビ、鼻の下伸びかけてるよ!

外では自主規制しな!』

『や、やだ、いけない!』


 さすがに聖獣ちゃん達と愉快な仲間達の言うところの残念な変態的お顔はガルフィさんであっても曝せないわ!


「ねえ、後でそのプリンのおすそ分けしてちょうだいね。

絶対美味しいやつでしょう」

「もちろんよ」


 セーフね。


 にこりとおねだりしながら食べるのに集中し始めたオネエ様には気取られなかったみたい。

いつの間にか髪を流行りのシュシュでくくっているわ。


 リアちゃんとの会話に夢中で気づかなかったのね。


 あのシュシュ、私がユストさんに初めてプレゼンした時の物なのよ。

スケッチのお礼にいつも通り献上したの。


 それより私もいい加減、食べるのに集中しくっちゃ。


 ポケットからシュシュを取り出して髪をくくる。


 フードファイター・ラビ、降臨!

食べるスピードは男性並みのオネエ様にだって負けないわ!


『リアちゃん!

やるわよ!』

『まかせな!』


 今日の私達は共闘よ!

いつの間にか首にシュシュをはめているシースルーなリアちゃんも気合い充分!


 もちろんシュシュは私のお手製。

色々魔法をかけてある特別製よ。

聖獣ちゃん達皆にプレゼントしてあるわ。


 シュシュだけど、使い方がチョーカーみたいになっているのはあえてつっこまないわ。

首輪みたいなんて口が裂けても言わない。


 そうして半分ほど黙々と食べ進めた時よ。


「公女もそれを食いに来てたのか」

「まあまあ?」


 向こう側からよく知るお顔が近づいて来ているとおもったら、うちのグループリーダーね。


 ラルフ君は厳ついお顔と体格にそぐわない、優しい心の持ち主なの。


 野営の時には私の料理をいつも美味しそうに、気持ちの良い食べっぷりを披露してくれる、下位貴族の次男坊で将来は冒険者を目指しているわ。


 下位貴族といっても、生家は辺境にある領の領主様なの。

私達のクラスの卒業研究でもご当主にはお世話になっているわ。

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