181.恋多き女とただれた小説

「それより例の子は見つかったの?」

「例の子?」


 いやん、お膝の上にちょこんと乗って首をかしげる小鳥ちゃん、可愛いわね。

長い尾っぽも素敵よ。

抜けたらまた貰いましょう。

やりたい事があって、コレクションしているの。


「あらあら?

確かリアちゃんの眷族の子達が騒いでいたと思うのだけれど?」

「ああ、あの話か。

さあ、どうだろうね?

私の眷族が見かけたのもたまたまなだけのようだったから。

中に入ってたのが生き物だったのは確かみたいだけど、何かまでは中の魔力が濃すぎて分からなかったらしいし」

「まあまあ、そうだったのね」


 何か月か前、リアちゃんの眷族は川にぷかぷか浮いてる卵っぽい何かを見たって騒いでいたの。

どんぶらこっこと流れて最後は滝壺に落ちていったらしいわ。


 リアちゃんの眷族が騒いでいたから鳥類系統の卵だと思っていたのだけれど、違ったのかしら?


「まあ中は何であれ親のいない子だったようだし、自然淘汰されてしまっても私達は手を貸さないからね。

聖獣の素養はありそうだと騒いでたから、少しばかり惜しい気はするけど」

「そうね。

それが自然の摂理ですもの、仕方ないわ」


 可哀想だけれど、こちらの世界も自然界への干渉ルールはあちらの世界とほぼ同じなの。


 あちらでも手負いの野生動物だからと、闇雲に保護してはいけないでしょう?

捕食されかかっている野生動物が可愛いからって、捕食している側を蹴散らしたりもしないじゃない?


 下手に保護すると生態系が変わる事があるのは同じでも、こちらの世界の自然界の方があちらの世界よりも弱肉強食のルールは色濃いの。


 例えば巣から落ちた卵や雛を元の巣に戻しても、結局親鳥が育児放棄してしまう事はあちらでも多いけれど、こちらでは育てなくなっちゃう。


 本当に卵だったとしても、川に流れている時点で何かしらの理由が卵にある可能性も否定できないし、どのみち元の場所には戻せないわ。


「それが卵だったとしても、私の管轄じゃない類の子の可能性もあるんだ。

孵化しないとわかんないもんだし、孵化してもまともに育つかなんて未来さきの事はわからないさ。

次代として聖獣になれるかは更に怪しいし、昇華するには手を貸す方にも膨大な魔力が必要だからね。

ただ、それをまともにできるのは王族と四大公爵家の直系の中でも一部だろう。

更に言うとラビ以外の者が関わる昇華で手を貸す聖獣もいないさ。

まあ後は引き継ぎできるタイミングかね」

「そうね。

ラグちゃんの時のように上手く事が運ぶかはわからないわね」

「ふん。

あれはあの時の聖獣が夫婦で、子供作ってたくらいには互いの魔力が体の隅々まで馴染んでたからだ」

「ふふふ、リアちゃんが言うとちょっぴりエロスね」


 ちなみにリアちゃんは既に多くの卵を生みまくっている上に、お相手だって両手両足では足りないくらいいるはずよ。


 元は鳥型の魔獣だし、お相手を固定する事のない種みたい。


 それに鳥型の寿命サイクルは他の魔獣の中でも短い部類だもの。

本人は聖獣ちゃんだから長生きだけど、お相手は違うし、そもそもが添い遂げるわけでもない。


 つまりは恋多き女!

それが聖獣ヴァミリアよ!


「やれやれ、何か失礼な事を考えていないかい?」

「あらあら、私はいつでもリアちゃんを称賛しているわ」


 真顔で力説するけれど、どうしてか腑に落ちないっていうお顔をされてしまったわ?


「素直に受け取れないのはどうしてだろうね。

大体、そこでそんな事を連想したなんてあの狐と竜が知ったら大騒ぎものだよ。

可愛らしい愛し子への幻想が酷い狐や蛇が見るからラビの小説もひかえめだけど、かなり具体的な描写のそっち方面のただれた小説だって最初は堂々と書いてただろう。

まだまだとおにも満たない人間の子供が真顔で書いてた時は、さすがの私もどうかと思ったよ。

前世のラビが旦那と仲良くやってたのは良い事だけどね」


 そうね、今世の私の物書き人生ってかなり早くから始まっているの。


 でも情報源は必ずしも前世の実体験からでもないし、ただれた小説まではいってないはずよ?


 せいぜいガチムチのR18指定くらいのものだわ。

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