180.朝チュンがスパークした奇襲
「……ビ、ラ……」
何かしら、あお向けで眠ってる体の上で何かが跳び跳ねているわ。
きっと素敵なお羽根の聖獣ちゃんとの朝チュン……。
待って……まさか起こそうとしてるの?
ああ……そんな……中盤とはいえ、まだまだ遅寝遅起き強化月間は続く……。
「ったくしょうがない子だね。
ラビ、起きな!」
グサッ。
「んぅいたぁー!」
突如おでこに突き刺さるような痛みを感じて、強化月間もどこへやら。
絶叫しながら飛び起きたわ!
バサバサと羽音がしたけど、今はそれどころではないの!
やだ、何事?!
思わず両手でおでこを高速でさすって痛みを緩和する。
「おはよう、ラビ。
私も行っていいかい?」
「……ふ、ふふふ、おはよう、リアちゃん?
まどろんだ朝チュンがスパークする、素敵な朝ね。
どこにか今はピンとこないけど、もちろん一緒に行きましょう?
それよりもおでこの真ん中あたりがとってもジンジンするのだけど、何の奇襲作戦を決行されてしまったのかしら……」
あまりのビックリに何か夢を見ていた気がするけれど、記憶の彼方へ飛んで行ってしまったわ。
行き先もどこの事だかさっぱりね。
「夏休みだからってだらけすぎだよ、可愛い私の愛し子。
ちょっとクチバシでつついただけじゃないか」
「そ、そうね?
可愛い愛し子のはずなのに、起こし方がスパルタで雑……」
まだヒリヒリするわよ、おでこ。
血は出ていないから手加減はしてくれたと信じたいけど、力はそこそこに入れたクチバシ・チョップだったに違いないわ。
学園が夏休みに入ってから確かに夜ふかししたり、朝もゆっくり起きるようになったから反論はしないけど、まだ先は長いわ。
もう暫くオカン鳥のお節介をかい潜って、ダラダラ生活をエンジョイしたいものね。
だってほら、夏休みにだらけて過ごす事こそ学生の特権ではない?
宿題は夏休み終了3日前から徹夜で終わらせるのがセオリーだったと思うのよ。
前世の双子の息子達や孫達の何人かはそうだったわ。
うちの家族、前半に終わらせてぱあっと遊ぶ娘のタイプと、先にぱあっとしてからラスト数日前に慌てる息子達のタイプに綺麗に別れてたのよね。
前世の私は手の空いた時にコンスタントに終わらせるスタンダード型だったのだけど、あの子達、誰に似たのかしらね?
ふふふ、旦那さんは仕方ねえなあって、うちでやる宿題には付き合ってあげてたの。
息子の時はぷりぷり怒りながら、孫達には笑ってね。
孫達にはヒント与えまくってほぼ答えを教えてたから、親になった子供達に旦那さんは叱られたりして、子供の頃とは立場逆転よ。
夏の……冬休みもだったから、長期休みの風物詩ね。
私は前半組の子達とデザートを作って見守っていたわ。
宿題を手伝うのは旦那さんにお任せしてね。
それより今日は何をするつもりだったかしら?
ふむ、とまだ寝ぼけた頭をフル回転。
「ああ、そうそう。
商会に寄ってからの、SSS定食の日ね」
思い出せて良かったわ。
はっ、もしかしてあのクチバシの奇襲は新手の忘却魔法かしら?!
この私が以前から楽しみにしていたSSS定食を食べに学園の食堂に行くつもりだったのを忘れるなんて、ありえないもの。
思わずジトリと見つめれば、私の考えなんて簡単に見抜いたのでしょうね。
「私のせいにしないでちょうだい」
「まあまあ、冗談よ」
呆れたお顔が打ち返されたわ。
そうね、開口一番に行っていいか聞いた聖獣ちゃんがそんなチンケな魔法を使うはずがないわね。
寮生活の学生の為に食堂は空いていて、事前予約を入れていれば寮生じゃなくても利用できるのよ。
薄手の掛布越しに私のお膝の上にいるのは、朱色をベースに光の加減で5色に見える羽根に飛翔すると両翼の他に長い尾羽根がふわりと優雅に舞う、とっても美しい鳥型の聖獣ちゃん。
普段は手乗りサイズで、長い尾羽根をずるずる引きずってぴょんぴょんしてるオカン体質な小鳥ちゃんよ。
大きさは変幻自在らしくて、少し大きなサイズで頭に乗ってると派手なカツラみたいになっちゃうのよね。
彼女の名前は聖獣のヴァミリア。
私はリアちゃんて呼んでるの。
とっても長生きしていて、建国当初から生きている最古の聖獣ちゃんよ。
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