151.逃走センサーと愚行の理由と騒がしい顔
「心遣い、礼を言う。
今日こちらに来た理由を話しても良いか?」
「もちろんでしてよ」
お兄様に続いて第1王子からもお礼を言われたけれど、何だか後ろめたいの。
もちろん連日の徹夜続きの執筆作業で疲れきった自分の為に甘めの紅茶をチョイスしただなんて、今さら言わないけれど。
でもちょっと待って?
第1王子がお兄様と連れ立ってここに直接来た事に、何だか違和感があるわ。
逃走センサーが今頃になってビビビと反応して逃げろと告げているのだけれど……。
ああ、どうしてうっかり食い気味に了承してしまったのかしら?
逃げにくくなってしまったじゃないの。
それとも今すぐテーブルをちゃぶ台返しなんかして、前世の昭和の頑固親父もびっくりな、怒涛の帰りやがれ!!!!をお見舞いしちゃう?
ああ、でもこのテーブルは駄目ね。
お兄様の強い希望で新調したんだもの。
お陰でとっても残念な事に、こうして3人で腰かけても問題なく着席できてしまっているわ。
もちろん当初はほぼ1人用のあのテーブルが使い勝手も良いし、そもそもこのログハウスでテーブルに腰かけるような
そうしたら哀愁漂うワンコみたいなお顔でしつこく懇願されて、結局この小さなリビングキッチンが手狭になるのにも関わらず頷いてしまったわ。
「いくつか理由はあるが、まずは今回の経緯から……」
了承はしたけれど全く話に集中しきれないのに気づくはずもなく、とうとう話し始めたわね。
「あの時の転移陣の書き換えを直接行った者の正体や狙いは未だにわからない。
その者を探し出そうとこの件に関わったのが判明した元ニルティ家公子のエンリケ、ペチュリム=ルーニャック、マイティカーナ=トワイラの周囲を調べたが痕跡が見つからなかった」
それはそうでしょうね。
奴らは狡猾で慎重だもの。
そんなに簡単に足がつくような事はしないわ。
悪魔については伏せておくのかしら?
ある意味王家の汚点の象徴みたいだから、一介の公女にはそうするのも仕方ないわね。
「ただ、その3人が愚行を犯したのはそなたが理由だ」
「まあまあ、左様ですの?」
随分面倒な事を手軽な理由でやったのね?
「……もしや気づいていなかったのか?
共に箱庭にいたそなたのグループやウジーラ嬢はその3名がそなたを狙って仕掛けていたと証言しているが……」
「あらあら?
特に何もされていませんけれど……ああ、それならグループの方やウジーラ嬢が未然に防いでくれたのではないかしら?
それとも第2王子の取り巻きとして当たりが強い事でしたの?
正直、今さらね?
特に実害もありませんでしたし、適当に聞き流しておりますから、その程度なら気にするほどのものではありませんことよ?」
「…………そうか」
まあまあ、お兄様ったら。
それ、どういうお顔なのかしら?
そうね、言うなれば……。
『え、何言ってんの、コイツ』
みたいな?
未知の生物を見るような感じ?
第1王子の方が身分が高いからか、説明の間は口を挟まないのでしょうけれど、それにしたってお顔が騒がしいわ。
「ごほん、まあそこは置いておこう。
その3名は転移陣の書き換えを行った何者かと接触した可能性は極めて高いと思われて聞き取り調査を行ったが、接触したのはエンリケだけだったようだ。
しかしエンリケもフードを被った女だという事以外の情報がなく、現状としてはこれ以上の調査が難しい」
「転移陣の書き換えは誰でもできる事ですの?」
白々しく尋ねてみるわ。
どこまで把握しているのかは私も知っていていいわよね。
「いや、そうそうできるものではない。
しかし学園内はもちろん魔術師団、冒険者の中でそれが可能な者をできるだけ当たったが、状況的に不可能か、もしくは動機に乏しい者達ばかりだった」
「左様ですの。
でしたら仕方ありませんわね」
やはりそんなに簡単には見つからないのね。
となると、その3人のある意味動機の原因になった存在も対象から漏れたという事ね。
それでいいわ。
私も直接的な確信はないから。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます