104.支離滅裂な自論と明後日の方向で全力疾走するアピール
「一々加害者のお前達に教えてやるはずがないだろう。
それより最後の忠告だ。
少しでも命を生き長らえさせたいなら、むしろ自分達と似合いのそのグループでどうにか生き残りを模索すべきだ。
行こう」
金髪君を相手にする事もなくラルフ君は気絶する家格君を含めた上級生グループとの話を打ち切ったわ。
自分達の張ったテントの方へと踵を返す。
「「「了解」」」
もちろん私達2年生3人はそれについて行くわ。
「お待ちになって、ラビアンジェ様!」
けれどラルフ君の後に続こうとした私の腕をガシッと両腕で捕獲する金髪ちゃん。
何だか素手でカツオ漁でもしているみたいになっているのだけれど、私の腕はそんなに力いっぱい抱きしめなくても、ビチビチ暴れたりしないわよ?
「まあまあ?」
「仮にもあなたはロブール家の公女でしょう!
身分が下の者を助けるべきではなくって?!
ここを出たら態度も改めて差し上げるし、出てからも愛称で呼んでもかまいませんことよ!
ですから私達を取りなしてそちらのグループに加えてちょうだい!」
「あらあら、困ったわねえ」
随分と支離滅裂な持論、いえ、この場合は自論とでもいうべきね。
自論も酷いけれど、この子が提示するメリットも酷過ぎじゃないかしら。
ふと視界の端でこちらにゆっくり近づく人影が映ったわ。
きっと奇行に走る金髪ちゃんを引き剥がそうと思ったのね。
もちろんうちのリーダーのラルフ君とあちらのサブリーダーのお孫ちゃんよ。
目を合わせて頭を振って止まってもらったわ。
錯乱する人に近づくのは良くないもの。
「あなた色々と思い違いをなさっているわ。
公女だからこそ、下の身分の者を誰でも助けたりはしないのよ?
むしろ高位貴族になるほど、誰彼構わず助けたりはしないのではなくて?
侯爵令嬢として生きてきたのなら、それくらいは教わってらっしゃるわよね?」
「それは下々の場合でしてよ!
私は高位貴族、侯爵令嬢ですわ!」
「ふふふ、それこそ利害関係によって軽はずみに助けたりすべきではない身分ではなくて?
それにロブール公爵家からすれば、あなたの家門も十分下々になってしまうわ」
「何ですって!
馬鹿になさるつもり!!」
あらあら、本当の事を伝えただけなのに怒られてしまったわ。
そのせいか彼女の口調が乱暴になってきているわね。
「それにあなた達は何度も私を公女らしくないと言ってらしたじゃない?」
「だって本当の事じゃない!
だから今こそ私に公女らしさを示しなさいよ!
私は公女と違ってAクラスで上級生なのよ!」
あらやだ、怖い。
半狂乱というのは、今の金髪ちゃんみたいな状態を言うのかしら?
髪を振り乱して、目が血走っていない?
口調もすでにお嬢様を逸脱してしまったわ。
金髪君とお休み中の家格君以外の私に向ける眼差しが、何だかとっても心配そう。
「ただ上級生だからと命のかかったこの場で、どう考えても自分達を死に追いやりそうなあなた達を相手にそれを示せと?」
「そうだ!
無才無能で魔力も低く、婚約者の王子からも嫌われ、ロブール家からも煙たがられている公女には、俺達を通してそれぞれの侯爵家に恩を売って後見につけても損はないだろう!」
今度は金髪君も参戦ね。
頑張ってアピールする割には、アピールの方向性も、彼自身の貴族令息としての価値も、まるで明後日の方向を向いて全力疾走しているかのよう。
そもそも私を煙たがっているのは実母と、義妹で従妹のシエナだけのはずよ?
うちの当主はそれ以前の問題ね。
私に興味がないから。
煙たがる程の関心は持ち合わせていないもの。
「何故そう思えるのか不思議ね。
そもそも私に何かしらの後ろ盾は必要無くてよ?
もちろん生家であるロブール公爵家すらも。
だって王子の好意にも将来の王子妃や公女の立場も私が必要とした事はないもの」
「何を強がってるのよ!
シエナからは色々聞いているわ!
嫉妬して義妹を常に虐めているらしいじゃない!」
金髪ちゃんてば、鬼の首を取ったようなお顔で見当違いが過ぎるわ。
そもそもが鬼のような歪んだお顔だけれど、貴族令嬢以前に女性としてどうなの?
まあ誰情報かはあえて聞かないでおきましょう。
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