103.仲間割れの激化とド正論

「俺はその2人を受け入れるつもりはない」

「「そんな?!」」


 ラルフ君の言葉に金髪組は瞬時に絶望的なお顔になったわ。

静止画の呪いは解けたのね。

良かったわ。


「俺はこの森を出た後の心配より、如何にして自分の仲間を無事にこの森から出すかしか考えていないと言わなかったか?」

「だから私達も手伝いますわ!」

「もちろん俺だって協力する!」


 その言葉にお孫ちゃんは顔を顰め、ラルフ君はため息を吐いてしまう。


「A級冒険者並みの実力があってもチームワークが悪ければ生き残れない。

それが蠱毒の箱庭という場所だとも言っただろう。

手伝う?

協力?

何様だ。

それにもう1度言うが、未だに何かしらのプライドも捨てられずにそんな心づもりしかないなど、危機感が無さ過ぎる。

それに相変わらず俺達グループを下に見ているだろう。

そんなお前達と、まともなチームワークが取れるとでも?」


 ラルフがわからず屋さんにもわかるように言葉を砕いているのだけれど、やっぱり理解できていないみたい。


 金髪組はラルフ君に詰め寄るわ。


「で、ですが……私達の方がそこの名ばかりの公女より魔力は上ですし、ずっと使えますわ」

「そうだ!

だから俺達も共に……」

「必要ない」


 あらあら、そんな分かりきったお話をして優位性を発揮しようとしても、パフォーマンスは低いと思うのだけれど。

もちろん私の本当の魔力量のお話ではないわよ?


 うちのリーダーも金髪君の言葉は途中で遮ってしまったわ。


「「そんな!!」」

「お前達の不愉快な言葉に耳を貸す必要もない。

ウジーラ嬢、そういう事だ」

「わかった。

無理を言ってすまなかった」


 最後とばかりに深く頭を下げるお孫ちゃん。

覚悟はしていたのね。


「ちょっと!

勝手に決めないでちょうだい!」

「そうだ!

大体、俺達と同じ侯爵家だろう!

いつも偉ぶっているのが昔から気に入らなかったんだ!」

「そうか。

ならば君達は君達で好きに行動するといい」


 まあまあ、金髪組が食ってかかって、とうとう仲間割れがピークに達してしまったわ。


 でもうちのお孫ちゃんはこうなると推察していたのかしら。

全く動じていないわ。


「それなら俺は無理矢理でもあいつらについて行く!」

「私もよ!」


 ふふふ、実力行使発言ね。


「勝手にすればいい。

だが下手についてくれば、逆に危険だと理解はしておくんだな。

お前達が考えているほどこの森は甘くない。

それに何があっても俺達がお前達に手を差し伸べる事はないから、ついて行けばどうにか混ざれるとは思わない事だ」

「何だと!

下級貴族が!」

「そうよ!

将来冒険者になるなら手を差し伸べるくらいなさい!」

「馬鹿なのか。

冒険者が優先するのは己と己の仲間の命だ。

仮にこの森でお前達を見捨てても、誰も何も言わない。

恥ずべきは弱者を見捨てる事だが、自らのパーティーの命を意図的に脅かす者を命をかけて守る義務も義理もない。

そもそもお前達のグループは魔力量だけなら俺達よりもずっと多いし、学園でも優秀とされる高位貴族の令嬢や令息達だろう。

弱者とも言えない」


 ふふふ、ド正論ね。


「「なっ、」」


 金髪組も絶句してしまったわ。


「加えて俺達はこの魔獣避けも必要なだけの食料も置いて行くと伝えたはずだ。

その上でお前達を受け入れられない理由も説明した。

お前達と分かれて行動する理由は十分に正当性があると判断しているが、もしこの森から互いに生きて出た後にお前達が訴えたとしても、お前達がこれまでにしてきた事も含めてこちらは身の潔白を主張できる材料は揃えている」

「はあ?!

どういう意味だ」


 金髪君てばお馬鹿さんなのかしら?


 予め卒業生から忠告を受けているのに、大半が下級貴族や平民で構成するDクラスが何も準備していないなんて考えているの?


 Dクラスが最終学年のAクラスに争っても無事でいられる方法なんて限られているでしょうに。


 それに、このグループには私がいるのよ?

生徒達がどう噂していようと、この国の第2王子と婚約をしている四大公爵家の1つであるロブール公爵家の令嬢の私が。


 金髪ちゃんはもう察したのね。

私の方を見て青くなって震えているわ。

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