プロローグー召喚された勇者

異世界アイテール。この世界で大きな権力を持つ国、王国では復活が近づいている魔王を倒すために、異世界から勇者召喚の術を行っていた。


異なる世界から異世界人を移動させないといけないため、神から託された魔法陣があったとしても召喚はとても困難だった。


しかしついに長時間に及びた召喚は無事成功し、1人の少年と3人の少女がこの異世界、アイテールに召喚された。


「つ、ついに召喚が成功したぞ!!!!!!」


「「「やったぁぁー!!!!!」」」

 

「「「バンザーイ!!!!」」」


レンガづくりの塔の中心にある魔法陣で黒ローブの男たちは肩を抱きながら一斉に歓声を上げ始めた。


「えっ、ここどこ!?」


「僕達さっきまで学校で授業を受けてたよね?」


「なのになんでこんなとこにいるの?」


「この人達は誰.....?」


涙を流しながらも喜ぶ黒ローブの男たちとは反対に4人はひどく慌てふためき、小柄な少女は泣き出してしまっている。


彼らの名前は桐生 翔斗きりゅう しょうと#九条 菜々くじょう なな鳳凰 梨奈ほうおう りな、そして早乙女 愛梨さおとめ あいりだ。


有名私立高校に通う彼らは授業中に召喚されたため、全員制服姿だ。


「召喚は成功したのですか?」


「「「「「「「マリア様!!!」」」」」」」


4人があわふためいていると、新たに真紅のドレスと華やかなアクセサリーを身にまとった女性が現れた。マリアと呼ばれた女性はは光で輝いている黄金の髪に、歩けば十人が十人振り向くほどの美しい顔立ちを持っていた。


「あの......ここどこですか?どうしてここに連れてかれたんですか?」


「あっ、申し訳ありません。説明まだでしたね。詳しく説明するので一度応接間えいらしてください。」


女性はそう言い彼らを豪華な応接間に連れて行った。


「それで本題に入りますが、あなた達を召喚したのは他でもありません。皆さま、勇者様がたには人類の敵である魔王を討伐してほしいのです。」


「「「「魔王!?」」」」


「はい、私の世界には様々な種族がおり、そのうちの一つ、魔族達の動きが活発になっており、魔王の復活が近づいているのです。そのため勇者様の召喚を行ったのです。」


そのことを聞いた四人は黙りきってしまう。それもそうだろう、彼らにとって魔王とは御伽話の中の存在でしかなかったのだから。


そんな中、勇者である翔斗はなにかを思い出したように顔を上げた。


「あの、王女様?」


「王女様ではなくマリアでいいですよ。それから皆さん、敬語ではなくタメ口で話してください。」


「それじゃマリア、僕らは日本に帰ることができるの?


翔斗が放った質問に他の3人がつばを飲んだ。いくら高3でこの状況に落ち着いて対応できるとはいえ彼らはまだ子供、突然知らない場所に連れてこられて混乱するなと言うのは無理がある。


「残念ながら、私達には勇者様をもとに戻す力はありません。」


王女の言葉4人は落胆する。


「ですが、魔王城の最奥には日本に帰ることができる魔法陣があると聞いています。」


「てことは......」


「はい、その魔法陣を使えば皆様を日本へ送り返すことができます。」


王女が続けた言葉に全員は顔を見合わせ、その場の雰囲気は一気に明るくなった。


「それで魔王討伐は......」


「もちろん、引き受けるよ!!!!」


「魔王を討伐しなきゃ地球に帰れないみたいですしね。」


「それにこの世界の人達をほっとけないし!!!」


「わ、私なんかで良ければ......」


王女の言葉に4人は真剣な顔つきで肯定の言葉を述べた。


「皆さん......ありがとうございます!!!」


その言葉に、王女は顔をほころばせた。


こうして無自覚鈍感チート勇者と、それを振り向かせようとするヒロインたちの物語が始ま......ったり始まんなかったり始まんなかったりする。

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