神に地上に落とされた元女神は前世の記憶を取り戻し、神に復讐する。

汐田 連

プロローグ

プロローグ−神界

人間達が住む上の上の上、神達が住む神界で、とある一人の女神が神達の手で処刑されそうになっていた。


彼女の名前はネフティス・レイ・ノワール。破壊と夜を司る闇の女神で、世界の頂点に立つ創造神に次ぐ権力と力を持つ7神の一人だ。しかし創造神を除いた神達の中で一番力を持ち、不吉とされてる闇を司っていることから他の神達に邪険にされていて、たった今その神達に殺されそうになっていた。


「創造神様にぞっこんな光の神様がこんな真似をするとか......正気なの?」


ネフィテスの処刑を先頭に立って行っていたのは、一番ネフィテスを邪険にしていた、闇の真逆に位置する希望と昼を司る光の神、ヘルヌス・アロン・アズベルドだった。


「正気さ。君が消えればあの人も喜んでくれるだろうよ。」


その言葉にネフィテスはきれいな顔を歪めた。


ヘルヌスが言うあの人とは、創造神アディア・デミス・アイテール。この世界、人族、動物、植物、神そしてこの神界など全てを作ったとされ、神界から人間達を見守っている.........といえば聞こえはいいが、ようは人を操り神界から高みの見物をしているだけの自分至上主義なくそビッチなのだ。


そんな彼女は自分を超えることも力を持つネフィテスと、自分を超える美貌を持つネフィテスの妹を敵視していた。


顔やスタイルが良く、また魅了を使えるアディアは数多くの男神を虜にしてきた。(そのため女神達からは恨まれていたが。)ヘルヌスも犠牲者の中の一人で、顔もよくネフィテスの次に力を持ち、また他の神達からの信頼もあるヘルヌスは彼女のお気に入りだった。


そんなお気に入りが目の上のたんこぶだったネフィテスを処刑するのならばいくら彼女が作った存在で、ネフィテスが神だったとしてもなんの罪にもとわれず逆に褒められるだろう。


これ以上あらがっても仕方ないと覚悟を決めたときに、彼の口から出た言葉にネフィテスは呆然とした。


「そうそう。君一人じゃ寂しいと思ってね、.........君の大事な大事な妹ちゃんも一緒に落としてあげることにしたよ。」


ヘルヌスが言う落とすとは地上に記憶を消され、落とされることだ。彼だけ聞けばそんなに重い罰ではないと思うだろうが、神のプライドなどを抜きにしてこの罰は処刑の中で一番重いものだ。なぜならば地上に落とされた神は10年がたてば強制的に殺される運命だからだ。


また、それも苦しみながら死ぬことになる。


ヘルヌスの言葉ではおそらくもう妹は地上に落とされている。今はヘルヌスに魔法で拘束されているため身動きを取ることができない。そのことでどんどんネフィテスの顔が絶望的になっていく。


「あははっ、その顔。その顔が見たかったんだよ!!」


ヘルヌスは顔を歪めながらネフィテスが絶望した顔を見て笑っていた。


「この外道が!!!」


「だいたい闇の神なくせに僕より力を持つのがいけないんだよ!!!闇の神なんて僕らの影でコソコソしてればいいのさ!!!」


ヘルヌスは顔を歪めながら話を続けた。


「お前の妹もそうだ!!!アディア様よりいい美貌を持ちながもこの僕とアディア様を無視しやがって......あんなやつ地上に降りてせいk.........


ヘルヌスが最後まで言えなかったのはネフィテスが顔を歪め、殺気を全力で放ってきたからだった。自分が恨まれていることも分かっていた。だけど自分はどうなってもいいから妹にだけは幸せに暮らしてほしかった。ネフィテスにとって妹は、この世でたった一つの宝物だったのだ。


「とにかく時間だ。いくらアディア様でも神を消すことはできないからな。直接殺せないのが残念だが、君が死ぬように設定してるよ。」


ヘルヌスは何かを思い出したような表情をし、彼女にこう告げ地上に落とした。


安心しなよ。君の大切な妹もすぐそっちの世界に生まれるだろうから。


長年ライバル視していたネフィテスをやっと地上に落とすことができ、いい気分になったヘルヌスは彼が慕う創造神の元へ向かった。




彼女、......ネフィテスの口元が狐を描いていたことにも気づかず。

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