第52話魔石で作って遊ぼう

 今後の付き合いも考え、領地周辺の鬼族を次々殲滅していく。腐敗し疫病が広がらぬよう広範囲攻撃用の炎壁型も試験運用してみる。火力を意図的に上げたところ、すぐさまに燃えカスとなった。大地の良い栄養となるだろう。


 発動の射程を調整すれば地面を隆起させたり、遠隔発動もできる事に気づく。エステリちゃんにみなはしないのかというと、手元で発動させる方が魔力の消費が断然低く、そんなに遠距離発動できる魔力はないとのこと。

 試しにエステリちゃんに発動させてみると成功することができ、ポカンと口を開けていた。

 なんでできたのか分からないと聞いてくる。


「我の加護でエステリの器を拡張したからの。発動も魔力の回復も大きくなっているのではないか? どれもう一度試してみようぞ」


『ミコトちゃんデータ取ってね』


『あいあい~』


 魔石の吸収によってある程度メカニズムは判明している。コアに吸収した魔石とリソースを使用するとともにエステリちゃんの魔石を圧縮拡張、器を広げ強固に作り変えて行く。生命体に使用したのは初めてだが同化することにより失敗はしない。自分自身を改造することにかけては長けているからだ。

 エステリの情報イデアを優しく保護しながらの施術だ。多少は息苦しく感じるが傷付けたりなどは絶対ない。


 エステルちゃんの様子が落ち着くと碧眼が銀色の虹彩へと変化していく。俺は黒目なのだがな。


「エステリ、すまない我の銀が混じったようだ。眼の虹彩が銀になってしまった」


「むしろ光栄です、死人様に加護を得られて感激していますよ? 身体から溢れ出る魔力と膂力が比べ物にならないくらい凄いです」


 手を握ったり発動待機させてある魔方陣を展開したりしている。


「次の獲物へ試射でもしてみるかの?」


「ぜひッ! お役に立ちますとも」







 すごいやエステリちゃん、人間砲台のようにバカスカ目標に火矢の雨を撃っている。

 狼や牛の頭で迫りくる獣族の胴体を破裂させたり燃やしたり。彼らは基本四足で地をはしり、言葉も通じないようだ。

 ケモミミやネコミミじゃなくて良かった。


 あっ、集団魔法の重力系を単独発動させている。積層する魔方陣は綺麗なものだな。


 粗方殲滅した後ドローンで魔石を回収。満足したのかエステリちゃんが小走りで抱き着いてくる。


「素晴らしいッ! 死人様の加護とはこんなにも凄まじい物なのですか!」


「喜んでもらえて幸いだ。だがこの加護は特別な人物にしか与えぬ。分かるか?」


「――はい。ありがとうございます。死人様の為に精進いたします」


 膝を付き忠誠を誓うようにこうべを垂れる。


「精進するのはいいが、お主は士官兵だろう忠誠は領主へ向かっておる、だろう? 個人的に我と良くすればいいのだ」


「――お気遣いありがとうございます。共に生きていけたらと思います」


 気軽に行こうよエステリちゃん。







 エステリちゃんは現在領主の館に鬼族や、獣族の殲滅報告に向かっている、俺は何をしているかというとハンガーの[ラボラトリー]に来ている。

 魔石を微細化し圧縮したり、金属と練り合わせたりしている。金属との相性はいいようで魔力を帯びたり、魔方陣の刻印を行うと火や水が発生したりしている。

 魔力の生成量は少なく蓄積する為の魔方陣を刻印か大量の魔石を圧縮すればバッテリーとして使用できそうだ。


「障壁の刻印

を魔石を練り込んだ装甲に換装することで光、熱、物理に耐性が出るようだな」

『ですぅ~より装甲を薄くできますし、積層化すれば重量は上がりますがぁより防御力は上がりますよう~。この世界での戦闘を考えると急務でぇす』


『父上、重力の刻印欲しい。空中機動戦艦に取り掛かることができる』


『ハザマ、まずは魔力生成するエンジンと推進機構の開発が先ですよう~。磁、雷核石を使用した重力場発生装置と重力魔方陣の合成の検証がひつようですよぅ~』


 魔石というブレイクスルーにより開発が一気に進む。科学と魔法、魔科学かな。お父さんは子供の為に魔石回収を張り切りますかな。


「試験機として一人用の簡易ドローンというか空飛ぶ魔導車でも作ってみたらどうだ? 磁核石でフレームを作り、重力魔法の指向性を微細刻印で制御し風系で推進機を作れば試験機くらいならいけそうじゃないか?」


『ですでぇすッ! 明日には作って見せますよう~ハザマ、徹夜ですぅ~』


「いや、そんないそがなくてもいいのだが。まあ頼んだよ」


 俺自身も楽しみだけどな、雷核石でエネルギーを賄えるようになればいいんだけど基礎研究は時間がかかるからな。魔力は使うがひな形でもできればいずれ核石=魔石ができればエネルギーの使用選択もできるしな。

 

 魔石、電核石を圧縮、魔方陣の微細刻印で炉ができ、それを搭載されたエンジンなど最高にカッコイイではないか。重力魔方陣の解析が進めば重力場を利用した縮退炉、いわゆるブラックホールエンジンも夢ではない。もちろん兵器転用も考えてだ。

 熱核融合炉ならば現在でも生成は可能だが機体の動力炉には向いていないため搭載されていない。解析はだいぶ進んでいづれ空戦機も自作できるが、未だエネルギー効率は悪い。さすがは黒柱製技術、敵ながらいい物を作る。


 自作した機体は廉価版として売りにも出せるが地球で戦争でも起きたらたまったものではないな。人類でも解析できる技術だからな。


 理が違うだけでこんなにもデータを得られるとは思ってもみなかった。赤柱もなかなかやるではないか。


 二人に任せるだけではいけないと思いファクトリーの工作機器を作動させると。フレームの作成に取り掛かる。

 コアに魔石を取り込んだことにより変化があるかもしれないと思い個人情報を閲覧する。


個体情報:コア[死人]シビト

ソウル:[見つめる眼Ⅱ][魔の理Ⅰ]

ソフト:[身体自在Ⅲ][生産加工Ⅲ][ウィザードⅢ][殺人Ⅳ]

ハード:[アートマン]

ツール:[ミコト][ハザマ][ハンガー][お部屋Ⅲ]

タイトル:[邪悪の卵ハンプティ・ダンプティ]


残1893ZP Resultリザルト↑15393SP


 どういうことだ? これは鬼族と獣族の討伐でSPを獲得している。[魔の理Ⅰ]は魔石の吸収で手に入れたのだろう。今後も吸収すれば位階が上がる可能性がるな。


 ZPが心許ない数値になって来たな。だがゾンビが見当たらないんだよな、死の谷とやらがあるのならばそこで回収できればいいがな。


 一先ず魔石の回収を優先し、明日も鬼族や獣族の討伐に精を出そう。







 宿泊している部屋に礼服姿のエステリが帰って来た。 


「どうだった領主は? 近場はなるべく殲滅を控えていたのだが」


「大喜びでしたよ。確かに狩りを専属する者は多少困るが、生産活動や採取活動が活発になるし、何より人の安全にはかえがたい、魔石は他の領とも取引ができるし近場もどうぞ。だそうです」


「そうか、それは良かった。明日も討伐にいこうかと考えていたのだ。エステリ、加護の事は言ったのかな?」


「いえ、言っておりません。私事ですし、大切にしたいのです」


「わかった、ありがとう。こちらで一緒に酒でも嗜もうではないか」


 夜はまだ長い、エステリを隣に座らせると酒を楽しみながらのんびりと過ごす。まるで悪い男みたいだな『わるいおとこですよぅ~』。


 失礼な、阿岸の事も忘れてないぞ? 一年は越えないよう足早に頑張ろうかねぇ。






 

 あれから半月ほど殲滅を繰り返すと[魔の理Ⅰ]は位階が上がり[魔の理Ⅱ]になり、速度は出ないが簡易飛行できる魔導車のようなものができた。領主のアードルフ君に見せるとハンドルを握りしめて離さなくなってしまったよ。

 魔力の消費効率はまだよくないが複数台プレゼントした。他の領主に自慢でもしてくれ。


 すっかりエステリも俺専属が当たり前になり死の谷へも同行してくれるようだ。身分証のようなものと領主の後ろ盾を証明する手形のようなもの貰った。ZPを稼いだらいろいろ融通してあげよう。

 すでにアードルフ君新製品を楽しみにしてるようで魔石回収を他領と取引してでも増やしてくれている。よほど空飛ぶ魔導車が気に入ったのだろう。製造方法も簡易的だがレクチャーしてある。

 兵器になりえるがもちろん秘匿情報として扱い。ブラックボックス化の方法も伝授してあり、開封すると自壊する、刻印の積層化技術も教えたら、研究者は驚いてたな。これでコアの形に円形刻印の積層化をおこなえることも教えたらこの領地だけ現代化しそうだな。


 ミコトちゃんのプログラム技術と魔導刻印の相性が抜群に良い。刻印をプログラム言語、刻印をプログラム言語に置き換えるだけで処理の速度が倍増じゃないくらい上がったのだ。


 恐らく概念を象徴する刻印を使用することにより情報の圧縮と高効率に成功したのだろう。


 ミコトシスターズの電脳のようなものもセキュリティ、性能共に上昇している。そろそろ自己判断でき個性も生まれるかもな。

 アンドロイドとして、機械生命体が生まれると嬉しい。

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