第45話ひとまずの帰還。嫁増えましたね。

 激しい運動のあと眠りついていると室内に警報が鳴り響く、目を覚まし状況を確認する。


『ミコト状況は分かるか?』


『昼間の生物兵器ですよぅ~、あのままずっと出てきてるみたいでぇす』


『なんだあれか。ポイント獲得できないとモチベーションに繋がらないよな』


 椅子に座り窓から外を眺めながら煙草に火を付ける。しばらく煙を吹かしていると漸く水無瀬も警報に気づき目を覚ます。


「な、なななんんだッ? 火事か? 火事なのか? てか、おまえ何呑気に煙草吸ってんだよ!?」


「ああ、この警報ダンジョンの生物兵器が出回っているらしいよ?」


「危ないじゃねえか? 逃げなきゃいけないだろ?」


「いや別に危なくはないよ? 何か大切なものがあったり大事な人いる?」


「んと…………えっと、いない、かな?」


 ものすごく悩んだ挙句いないようだ。なら問題はあるまい。


「コレうるさいよね。せっかく気持ちよく寝てたのに」


「お前大物だな、まあお前がそうなら大丈夫なんだろ。ちょっとシャワー浴びて来るわ」


「それなら俺も浴びるか。うるさいけど」


 非常事態なのだが警報は気にせず体を洗いあう、いい感じにキモが座ってるな水無瀬も。それからゆっくり風呂に浸かり終わると着替えを終わらせ窓の外を見る。


 深夜だったので被害が物凄そうだな、あちらこちらから火の手が上がってるわ。


 ダンジョンで景気がよさそうにしてたのにこれじゃなぁ……。やっぱ黒柱碌な事しないわな、トリガーは多分俺だけど。すんませんね。


「ICいる? 強奪できるけど」


「やっぱ普通じゃねえなお前。一周回って頼もしいわ。別にお前が養ってくれんだろ? なら嫁ってやつはどっしり構えて家を守るもんだろ」


「一周回ってお前が可愛く見えて来たわ。そんだけキモが太いなら俺も安心だわ。それと軍の倉庫とか分かる? 核石だけでも回収しようかなと」


「う~ん、車が良く出入りしてたところなら分かるかな?」


「じゃあ行こうか。屋上に行くぞ」


 非常口の鍵を破壊し屋上にのんびり登っていく。広いスペースに出るとハザマを出現させる。


「水無瀬ハンガーで待ってる? 機体に乗って観戦するのもありだけど?」


「すっげええぇぇえっ! かっけえじゃん! 髑髏フェイスのロボットとかマジ痺れる!」


『父上、この人分かってる』


『ああ、分かってるやつだな』


『しんじらんないですぅ~』


 ハッチを解放し水無瀬をお姫様抱っこして搭乗席に座る。正面が閉じると全天型のモニターが周囲を表示する。


「おおーッすっげすっげぇ!」


「ちなみに空を飛ぶぞ。水無瀬にも空戦機プレゼントするから楽しみにしてな」

「まじかッお前の嫁になってよかったぞ!」


 嫁になるより喜んでそうだな水無瀬。







 軍事施設の上空にステルス状態で滞空し探査を行う。軍の部隊はすべて出撃しているらしくもぬけの空だ。


『ミコトちゃんどう? 見つかりそう?』


『数か所に分散はしてますが何とかなりそうですぅ~? 強奪ってた~のしぃでぇすね』


『待機状態での警戒は任せる父上』


『わかった。ハザマ頼んだぞ』


 ハッチを解放し降下準備をする。水無瀬にはさすがに待ってもらう。


「水無瀬、機体内で待っててくれ。自動操縦になってるし景色でも楽しんでくれ」


「分かった。しくじるんじゃねーぞ?」


「あいあい」


 機体から飛び降りるとサイコキネシスで慣性を緩和させるとふわりと着地する。隠密行動で目的地まで一直線に向かう。途中途中施錠してあるが破壊しながら突き進む。警報が鳴りっぱなしの為警備もゆるくなっているようだ。


 目的地の倉庫に着くとさすがに警備の人間が歩哨しているようだ。

 背後から近づき延髄へ針で一突きすると声すらも封じられ、二突き目で心臓に刺す、暫くすると生きることを停止させ、ゆっくりと床に降ろす。


 もう一人もいたが手間が惜しかったため顎から後頭部に向けてブレイドを振り上げる。ランスを突き刺し同じ処理をする。


 南京錠で施錠されている鍵を引きちぎり、扉をゆっくりと開く。中は暗闇だが視覚の補正で暗闇でも良く見える。当てにしていたコンテナを開く大量の核石が保管されている。恐らく貿易用のコンテナだろう、同じものがかなりあるようだ。


 半分程吸収していき、残りは研究用にコンテナを持ち上げハンガーに収納する。すると今更ながらに倉庫内に警報が鳴り響く。

 

「うわ、コンテナに警報機でもついていたのかな?」


 すかさず服を脱ぎステルス化する、数秒後軍人は突入してくるも気づいていない。もったいないので他のコンテナの核石を全て吸収し撤退だ。全滅させてもいいが防衛戦力は残しておいた方がいい。




◇ 




 操縦席に座る俺の太ももの上に水無瀬が座って二人でモニターを眺めている。機体を空中に待機させ足元には防衛線を引き抵抗している軍人とハンターがいる。


「どうしたい?」


「どうも、しないかな? 助けても機体をよこせって言われると思うよ?」


 だろうな。容易に想像できるのが悲しいよな。ありがとう君は英雄だッ! とはならない。守れるのは腕の中に納まるだけだ。救いながら逃走するってなんか違うだろう?


『あの黒柱への対策思い付いた? 正式に攻略しようとしても辿り着けない気がするんだけど』


『ですねぇ~、恐らくどこかでループしてますよあれぇ』


『地下まで一気に撃ち抜くにしても火力足らないしね』


『あっても黒柱がなくなるころには地球が無くなってそうですよぅ~、探査しただけでもマントル迄いきそうでしたしぃ~7kmまではさぐりましたけどぉ』


『それ単純計算で千階層越えてない?』


『ですですぅ。あの生物兵器どれだけでてくるんですかねぇ~』


 マジで黒柱一本でその国詰みそうじゃない? 西州の黒柱を撤去しててよかったわ。あの黒柱が特別なだけ……という事はないだろうしな。対策され過ぎだろう。


・物理的に浸食できない

・物理的に破壊できない

・正式に攻略できない

・物量で攻めて来る

・そもそも本数が多すぎる


『■■■さんこれどうしようヤバくない?』


『おかあさーんこれマジヤバいってよぉ~』


『母上これはムリゲーというやつでは?』



――クエスト世界を回りやがれ。が発行されました

――期間は設定されていません



『やれるところからやりなさいって怒られたよ』


『ですよねぇ~最近ママにあまえてましたぁ』


『我もっと強くなる』


「ちょっと八つ当たりしますか。ロックオン補正よろしく」


『はいなぁ~Fullburstブッコロス


指光線発射finger beam


「どうした? うっわぁ」

 

 数瞬でモニターにはロックオンのレティクルが数多にも表示される。


 ハザマの全ての副腕の指40門から赤い光線か地上に降り注ぎ、頭が消し飛び、胴体を焼き尽くし、下半身を蒸発させる。

 幾度も幾度も繰り返され数分後には周辺の生物兵器は全滅していた。これ以上出て来る奴は知らない。

 水無瀬を拾った記念だ、何もされてはいないが出会いの対価として置いていってやろう。


「帰るか」


「お、おう。なんだか良く分かんないけど死人ん家に行くんだな? 楽しみだぞ」

 水無瀬はずっとそのままいてくれよ?







 明け方の空を空気の壁を突き破り、自宅に帰還する、もちろん近辺ではご近所迷惑になる為減速する。

 家の鉄扉の降り立ち機体を収納する。


「ここが家だぞ、朝早いからなるべく静かにな?」


「おお~、立派な要塞だな? 家なのか?」


 デバイスを認識させ鉄扉を開くと中に入っていき家の玄関を潜る。すると目の前には阿岸の怒った顔が出迎えてくれた。


「あら馬鹿亭主は二晩も夜遊びしてくるのね。良いご身分だわ」


「いや、あのな、中部地方まで行って黒柱の偵察とダンジョンがな……」


「おはよう! 俺も嫁だぜッ! 仲良くなっ!」


 そういうとこだよ水無瀬。俺が悪いんだけど。


「あら、新しいお嫁さん? そういえばね昨日から相倉さんも住んでるの。種付けされたからって。ねえ、重婚は良いとは言ったけど限度を考えていただけませんこと?」


 今日はものすごく怒られそうだ。


「なあなあ飯にしようぜッ!」


 水無瀬はバ可愛いなぁ~。

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