第46話そしてまた嫁、節操ないのかな俺
ごはんをたべるときはよくかんでおしゃべりしないでおいしくたべようね! おかあさんとのやくそくだよ!
いや、静かすぎだろ。
ウチは和室のテーブルで食事をとるんだけど俺の両脇に
みなさんもくもくと食事をとっていらっしゃる。いや水無瀬は元気よく頬張っているけど、さすがにお嫁さんが数日で二人も増えたのはまずかったかなーなんて、こんな俺でも居心地が悪いですわ。
「えふんえふん、ちょっと海外に悪い奴を
「
水無瀬は今日もバ可愛いね。でも今はちょっと待ってね。
この面子に三重が嫁に増えそうなんて言えないよぉ。ふえぇぇん。
「こらみんな、仲良くしなさいな。馬鹿亭主だけど甲斐性はあるんだからあんまりいじめないの」
「分かったわ、浮気性の死人」
「お母さんが増えるんだねぇ」
「ちゃんと囲ってくれるならいいですよー?」
「死人お前嫁が一杯だな! ちゃんと養えよな?」
嫁三人に娘が二人、大家族になりつつありますねぇ。
食事が終わって食休みに談話をする、本当に海外に行かなきゃいけないのでキチンと伝える、それと部屋の改装や必要な物を聞いていく。
「美奈子と水無瀬に必要な物教えてくれ、部屋に行って用意するからさ」
「うふふ、おっきなベットがいいなあー、それと可愛い鏡台がも。お洋服もカタログ見てたら欲しいのがあったの。お願いねー。あ、早く私に仕込んでね? ダーリン出張多いでしょう? ちゃんと繋ぎ止めておいてね?」
と相倉、可愛いお願いだ全力でかなえよう。
「欲しい物かー、俺は空戦機が欲しいぜ! もちろん子供もな! お嫁さんになるの夢だったみたいだ俺……頼むな」
水無瀬いい母ちゃんになるよきっと。空戦機はカスタム機にしてあげよう。カラーリングは何色がいい?
それぞれの部屋に物を置いていったあと朱里がやって来る。何か不満そうだ。
「安全が確認出来たら海外に私も連れて行きなさいよね? 行ってみたいのよ。ちっさいころからゾンビが出てさ、一度もないのよ。まあ静里もだけど」
「そうだな、どんな被害が出ているか分からないがいいぞ? ハンガーに居れば問題ないし家族総出でもいいと思うぞ。阿岸と相談してみなさい」
「わかったわ! ありがとう。パパ大好きよ」
にこやかに去って行った。パパという言葉は麻薬のようだな、中毒性が高いぞ。
ちょっと用事があって阿岸を探しに行く。キッチンで洗いもをしているようだ、後ろから近づき抱き締める。
「阿岸、午後にちょっと出かけないか? デートに誘ってるんだけど」
「あらあら、御機嫌取り? そうねぇ乗ってあげようかしら? 私を一番に愛しているのでしょう?」
「もちろんだ。一番愛している、空の散歩にでも行こう」
「あの時にはこんなになるなんて思わなかったわ、でも騒がしいのもいい物よ家族が増えるんだから」
「ほんとに君はいい女だよ」
◇
午後になるとハザマを現界させ阿岸と一緒に搭乗する。
昼間の空の上空へ向かい、ゆっくりと上昇し高高度を越え成層圏付近まで到達する。
俺の方に抱き着きモニターを見ないままでいてもらったが、ゆっくりと振り返ってもらう。
雲の上を突き抜けると、地球の縁が薄水色から宇宙に向かって藍色のグラデーションを描く。
その狭間はゆるく円を描き、地と天は移ろい易い、眼下には青く生命の源が溢れ眼上は深く虚ろい死に飢えている。
「阿岸ここまで来たのは阿岸が初めてだぜ?」
「……………………ああ、綺麗ね。そう、とっても」
どうやら感動して涙を流している。しばらくそっと抱き締めておこう。
ハザマに現在位置から流されないよう機体制御を任せつつ小一時間程まったりと景色を楽しむ。
意識を漸くこちらに向けて来た阿岸はおもむろにキスをしてくる。長く唇を触れた後、真剣な顔をしてこちらに言葉を放つ。
「やらなきゃいけないことがあるんでしょう? ちゃんと待っているから行ってきなさい」
「そこまで遅くなるつもりはないさ。頑張って来るよ」
しばらくお互いの体温を交換し合った後地上に帰還する。
◇
今日は日本の全域を偵察する、海外に行く前に西州に影響が無いかの最終確認だ。先日ダンジョンから生物兵器が溢れ出した都市上空に来ているのだが。
「ミコトちゃん人間らしき生命反応は?」
『あー、ちょっとまってくださぁい。えっと、ちらほらいますが見事に壊滅してますね。生物兵器も粗製乱造で寿命尽きて死んじゃってますよぅ』
「促成栽培過ぎて死んだか。黒柱もコスト掛け過ぎで停止していればいいが」
『相変わらず元気っぽいですよぅ?』
「次行くか」
◇
日本の元首都、東部中央都市上空。
「うわぁ、黒柱とかいう問題じゃねえなこれ」
そこには大規模なクレーターに海水が流れ込み円形の入り江ができていた。首都はとっくに無くなっていたのだ。
人類の兵器では起き得ない不可思議な現象だ。降下して良く調べてみる。
「どうだ?」
『うーん、わからないですねぇ~、黒柱にメリットもないですしぃ』
「次行くか」
◇
海峡を越え北州に入る、黒柱は存在せず、平穏な北州の防壁都市が眼下に見受けられる。
黒柱を破壊したら周辺一帯が敏感に反応しているのかそれとも指揮系統が違うのか分からない。
「良く分かんないな黒柱って」
『いい迷惑ですよぅ~、出現していないならないでいいですよぅ』
◇
中部防壁都市が壊滅、東部中央都市が存在しないこと、北洲は現在安定している事と西州の現状の映像資料を源三に提出する。
「助かったぞ、日本の現状何て知れる事なんてほとんどないからな。貿易で情報が小出しにはいるくらいだ」
「気になっていたんでな。ここはもうホームみたいなもんだ」
「死人が居りゃあこころ強えがな、お礼じゃねえがこれが現在のアジア圏とEUの情報だ。貿易ついでに調査してもらった」
デバイスに転送してもらうと情報を軽く精査する。
「赤い柱に青い柱、その一帯にはゾンビが近寄れなかったり、豊穣を齎す……と」
「日本にもあればとは思うがどう掌を返されるか分かったもんじゃねえ。ゾンビがいなけりゃ人間の力で何とかするものだ」
「源三カッコいいなぁ。さすが西部防壁都市長様で」
「なに押し付けられただけだ。死人の支援なしには詰んでいた。正直膨大な物資は安寧を齎している。ほれ新しいリストだ、海外に行く前に倉庫に寄ってくれ、核石も引き取れよな」
リストを受け取ると部屋を出ようとする。
「帰りに三重に顔を出していけ。拗ねてるぞ?」
「はいよ」
戦闘部隊隊長室へ向かう、ここに来るのは初めてだな。いつもどこかで会っていたし。
「はいるぞ」
部屋を開けると着替えをしている三重と遭遇する。もちろん着替えを見たままでだ。
「相変わらずいい体してんじゃねえか三重」
「もっとドキドキしろよ死人、相倉を先に住まわせて、私は忘れられたのかと思ったぞ」
「とても魅力的だぞ? その筋肉にしなやかな肉体美、目が離せないよ」
三重の下着姿の腹筋を下部から上部へ指先で撫でる。反応しているようだが気にせず続ける。
三重は体を震わせ俯きながらも俺を見つめて来る、服を握りしめると恥ずかしそうに呟く。
「ん……今日は返さねーぞ?」
「もちろんだ」
また阿岸に怒られるかもしれないな。
◇
三重の自室で椅子に座り酒の入ったグラスを傾けゆっくりと飲み干す。ベットの上には生まれたままの姿に汗をかいた三重がこちらを見つつぐったりとしている。
「なぁ死人」
随分と甘えた声で聴いてくる。おねだり系か?
「ん?」
「私の機体もカスタムしてくれんのか?」
「もちろん。というか空戦機に切り替えてもらう予定だが知らなかったのか?」
「まじかよ? 相倉の奴なんも言ってなかったのによ、隠してやがったのか」
「カラーリングも帰れるし、武装も増えれるぞ? 現在の陸戦機を予備機にしたらいい」
「やった! 旦那様愛してるぅ!」
「戦闘部にも陸戦機の配備数増やす予定だぞ? 防衛戦力と土木に使えば良いと思うぞ」
「訓練忙しくなるな、ありがとう死人。それから家に挨拶に行こうぜ?」
「いたたまれない空気にならなければ良しだ」
もうここまで来たら開き直るしかない、ちゃんと囲うだけましなのだと言い聞かせよう、自分を。
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