第44話軍には碌な奴がいないな

 ダンジョン探索を切り上げ地上への入り口を目指す。何度か蜘蛛の無人機が出てきたため切断し回収、そのまま同化し逆に侵入し辿ろうとした所即座に回線を切られてしまった恐らく俺がいる事に気づかれてしまったがしょうがない。


『ミコトちゃん解析結果どうだった?』


『蜘蛛さんは大したことなかったですぅ、構造の勉強にはなりましたが武装は[切り裂く]のみで手足が鋭いだけでしたねぇ~、雑魚キャラとして設定したんじゃないですかぁ? ダンジョンマスターとしてはぺーぺーですよぉ~』


 最近ミコトちゃんがダンジョン育成のゲームをやっているのを見かけたような。


『[見つめる眼]で解析できたか? 俺じゃ時間がかかり過ぎる』


『まだですよぅ~、黒柱って空間から出て来てたじゃないですかぁ? その技術なのか色んな所で眼が飛ばされるんですよぉ、モノリスにもそんな技術はなくて送り込んできた先の技術かもでぇす? 用心深いでぇすねぇ』


『まあポンポン吸収できてたのがおかしかったわけか、三桁も吸収できたのは僥倖だったな。対策が早い向こうが一枚上手だがな』


『こっちはてさぐりなんですよぅ~、■■■さんもそうなるの分かっていて功績ポイントリソース貯めてるんじゃないですかぁ? 個人や機体の強化にも限界がありますしぃ』


『できる範囲で調べてくれ、いつもありがとうなミコトちゃん、頼りにしてるよ?』


『えっへへぇ、あ、言い忘れたんですけどぉ浅い層に変な生物がうじゃうじゃ産卵してましたよう? 餌でももらってるんじゃないですかぁ?』


『……早めにここ出るか。いやな予感がするわ』


 トボトボ歩いていたが速度を速め、急いで出口を目指す。


「どうしたんだよいきなり走り始めて」


「嫌な予感がする、早く出るぞ」

 

 走り出した途端地響きがし始める、なんてタイムリーな。これがクリティカルに運が悪いということなのか。

 現在まだ登り始めたところなので地上部にはまだ早い。


 地響きが近づいてきている、そろそろ嫌な予感と対面か……。


「水無瀬、ちょっと部屋を用意するから入っててくれないか?」


「は? なんだよどこにあるんだよ?」


「これだ」


 ハンガーを開き入室する内部には様々な期待や武器、工作機械などが沢山置かれている。簡易宿泊施設に連れて行き部屋を開ける。


「まあ色々秘密の能力があってな、これもその一つだ。ただ開いたところから移動ができなくてな。俺が脱出するまでここで休んでくれ。好きに飲み食いしてもいいぞ」


 ここには非常食や沢山の物資がある。長期滞在しても問題ないようにしてある。


「まあ心配しないでくれ。あと機体や武器には触らないでくれ、危ないからな。良い子にしてればちゃんと触らせたりプレゼントするから待っててな」


 そういうと返事を待たずに水無瀬にキスをして部屋を出る。


 ハンガーからダンジョン内部に戻ると突き当りから大量の新種のゾンビがやって来る。これはまんまゴブリンにオークにオーガか黒柱が養殖しているのかゾンビをまき散らしたのが濃厚だな。もはや感染の能力が無ければゾンビとは言えねえぞ。悪質だな。


『能力が分からない、侮らずに殲滅するぞ。All weapons freeなんでもいいぜ?


『あいあいさぁ~Full shooting全力射撃


『……我の出番』


 副腕すべてに最近小型化に成功したビームガンを全腕に装備し乱射する、ゴブリンの胴体を貫通し、後方にいるオーガの脚部をも焼き尽くす。苦しむ間もなく乱射されるビームの嵐にすぐさま全滅する。

 

 ブラスターでも良かったのだが放射熱が半端ない、このような閉鎖空間では熱いし質量弾も跳弾が鬱陶しい、それでこのチョイスだ。まあビームガンも放熱はするがブラスターよりマシだ。


 それよりもゾンビーポイントの獲得アナウンスが無い、殺し損だ。相手にしてられない、ソウルポイントもない事から培養されて繁殖されている生物兵器なのか? 意思というものがないから情報イデアないのか?


 思考しながらも次から次へとやってくる生物兵器にうんざりする。死体が溜まっていき通路が埋まりつつある。ビームガンの光が壁面を溶かすも外壁の外は地中だ。


「消し去る兵器なんてないからなあ、重力弾と原子分解弾とか欲しいけど自分が撃たれるとマズイ兵器は存在しない方がいいよな」


『死人さんキリがないですよぅ~どうしますぅ?』


「ルートはここだけか?」


『迂回すれば後二つありますよぅ即殺速攻でいきますよぅ~』


「よし案内宜しく」


 全速力で通路を駆けて行く、最小限の射撃で頭蓋を撃ち抜いていく、死体を壁へ蹴とばし、通路を割り込んでいく。先程壁に穴が開き排出されていることから急いだほうがいいだろう。


 オーガが行く手を阻む、胴に切れ込み入れる一閃を薙ぎ、そのまま前蹴りをくらわすと後方に倒れれそのまま踏みつけ前方へ。


 オークがすぐさま襲い掛かるが体を後方へ回転させ右側頭部へ回転蹴りを振り抜き壁へ叩きつける。


 うじゃうじゃとやって来る生物兵器を回避、攻撃、射撃、迂回を繰り返しながらようやく地上階に到達する。


 入り口には状況をまだ理解していない軍人が塞いでいる、ご苦労なこった。


「貴様ッ! 待て!!」


「俺の後ろ見て言えんのそれ?」


 出入口を塞ぐ軍人の足を引っ掛け、後方へ蹴とばすとそのまま出入口を出る、異常な状態に待機している軍人が問いかけて来る。


「中はどうなっている!?」


「なんか変な生物がうじゃうじゃ出て来てますよ~」


 移動を開始すると捕まえようとしてくる。軍人という生き物は死にたいのかな?


「貴様には説明してもらう、出入り口は封鎖していたはずだぞ! おい待て動くなよ! 撃つぞ」


「だから変な生物が出てきますよって言ってるじゃないですか。ほらあそこ」


 会話している最中にゴブリン、オーク、オーガが溢れ出してくる。周囲にいた軍人やハンターに所かまわず襲い掛かる。


「お前が犯人か!?」


「んなわけないでしょう、中の人達助けなくていいんですかぁ~?」


「クソッ! あの生物に発砲しろッ! 応援を呼べッ!」


 銃撃戦が始まる、ゴブリンはすぐに死ぬがオークやオーガの耐久性は高いそのうち耐えられなくなるだろう。戦闘が始まるどさくさに紛れて逃走する。


 ダンジョンがあった場所は都市から離れた位置にあったのでしばらくは持つだろう、あの生物兵器もどきがどれだけ生産されていたか知らないが感染しないのならまだましだろうよ。


 少し離れてバギーを出す。

 水無瀬は落ち着いてから部屋から出すとするか。

 都市中心に向かいバギーを走らせていると軍の車両に止められる。


「止まれッ! この先のダンジョンの説明をしろッ! 連絡が取れなくなっている」


「へいへい、なんか変な生物がうじゃうじゃ出て来てますよ。大量に」


「そうか、では案内しろ」


「嫌ですよ、帰って休むんですから」


 急にハンドガンを突きつけられる。

 はぁ、この軍服見たら即殺でいい気がしてきた。


「これは命令だ、従いたまえ。命が惜しいだろう?」


 大型トラックに乗っている十名ほどの軍人がニヤニヤしながら銃を向ける。


「これは命令だ。命が惜しければどきたまえ。最後のチャンスだぞー?」


 お返しに挑発して見せる。


 発砲音。もちろん弾き飛ばす。


「残念。死ね」







 「ッち! しけてやがる」


 軍人さん貧乏でした。再び高級ホテルに宿泊したのだが一泊分にしかならなかったな。


「おまえすげーな、そのデバイスの数。それ軍用だろ? ぶっ殺したのか?」


 寝転んで足をプラプラさせながら水無瀬が聞いてくる。


「もちろん、撃たれたし。軍人はここでも高圧的なのか?」


「そうだよ。あいつらいつも偉そうに金を毟るんだよ。あやしいやつめーとか言ってさ」


「軍の基地ってどこだっけ? 明日案内してくんない?」


「まさかおまえ…………」


「いや、ちょっとぶっ殺そうかなって。でもちょっと爆撃するだけだぞ? 全滅させないよ」


「短気だな、でも撃たれりゃそうなるよな、うん」


 慰めるように寄り添ってくる水無瀬、彼女なりの励ましなんだろう。よろしい今日は戦争だ。


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