第42話ギルド強襲

 水無瀬に案内されながらギルド会館に向かう、主要な役所や軍事施設、商業施設などをバギーを運転し軽く回る。助手席に乗ってはしゃぐ水無瀬に追加のお菓子を渡してやる。

 

 この都市最大手のギルドにつくと駐車場にバギーを止める。


「少しギルドに用事があるが付いてくるか?」


「ハンターはガラが悪いから嫌だ。待つから早く戻ってこい」

 

 念のためハンドガンを渡すと驚いた顔をしていた、使用方法などを説明すると恐る恐る持っていたな。追加のお菓子も渡すと子供じゃないと怒られてしまう。さっきモリモリ食べていたのにな。


 ギルドの自動扉を潜り抜け受付に向かう、ファンタジー小説定番の新人いじりは無いようだ。受付には若くて綺麗な髪を後ろにまとめた女性が座っている。


「ここはダンジョンらしき情報の提供を求めるにはどうしたらいいのかな?」


「ダンジョンの概要程度でしたら軽く説明はできますが、階層や出土するアイテム、ゾンビの情報でしたらお買い求めいただくことをお勧めします。日々更新しておりますので当ギルドで購入いただくと安く更新料をお支払いいただくだけで情報の更新も行います。現在の基本料金がこちらです」


「購入します。ICはこれで」


 デバイスで決済を行いデータを受け取る、すぐにミコトちゃんが分析にかける。黒柱の概要とすり合わせてるようだ。


「出土されたアイテムの販売は行っていますか?」


「ダンジョン自体が現れたのは最近ですので現在鋭意調査中です。ハンターの方でしたら挑戦してみるのも一考かと」


「販売はしていないから取ってこいか。分かりましたありがとうございます」


 カウンターを後にするとニヤニヤと笑うハンターが数人いる。どこにでもいるものだな、割かしまともな対応だったが構成員はやはりハンターだしな。


 駐車場に戻ろうとしてると、発砲音が聞こえて来た。急いで向かうと水無瀬がハンターにハンドガンを向けている。


「どうした水無瀬?」


「こいつらがバギーを奪おうしてるんだッ!? 嫌だって言うのに降ろされそうになって」


 ハンターを見るとニヤニヤと汚い口を吊り上げている。四人組でアサルトライフルをこちらに向けて来る。


「どういうことだ? 説明しろ」


 どうせこういうやつのパターンはいつも同じだ。会話する必要もないが一応確認する。


「ウチの受付ちゃんがてめえが大金持ってるって教えてくれてよぉ、有り金とその良さそうなバギーちゃん渡せばそのガキが撃ってきたとこをゆるさんでもねえぜぇ?」


 ああ、軍人の端末を使ったことでハッキングされていたか。このギルド自体がこういうことを行っているのか。


「そうか――死ね」


 発言すると同時にブレイドモードを発動させ横に薙ぎ払う、10m以上もの銀の刃が奴らの胴体を分断するアサルトライフルすらも焼き切れ、地面へと落下する。

 

 ブスブスと奴らの胴体から肉の焼ける焦げた異臭が漂い嫌な気分になる。


「ミコト」


『はぁい、ブッコロでぇすね!』


『……射撃補助頑張る』


「ガトリング八門展開。目標――ギルド会館だ」


 ギルド会館の入り口に再び戻ると受付から幽霊でも見るような目で見られる。両手や背後にそうにされたガトリングに気づき逃げようとする。


「残念、貴様も同罪だ」


 背後から弾丸を叩き込み胴体が引きちぎれ床に臓物がばらまかれる。好い面しながら人を食い物にしてきた報いだな。

 周囲のハンターの頭や胴体も巻き込みながら階下を上っていく。


 ロビーの異常に気付いたのかこちらの迎撃にやってくるハンターたち、さすがは悪徳最大手のギルド、反応はいいようだ。

 こちらに手榴弾が投げ込まれるもこのぐらいの威力じゃ衣服程度しか損傷しない。

 弾丸じゃ一気に壁を抜けれないな、展開しているガトリングを収納する。


「モード・スパイダー」


 八本の銀の槍が体に展開し壁を刺し貫いていく、壁に隠れながらも射撃していたハンターの側頭部に突き刺さり、引き抜くと足元の力が抜け壁にもたれかかる。


 次々に銀槍が貫き蜘蛛のように狭い廊下を走行していく、この方が遭遇した時に感じる絶望感もひとしおだろう。


 シャカシャカと蜘蛛の怪物ごっこをしながら最上階までの存在する人間を殺しつくす。

 一際大きな会議室らしき扉を開くと一斉に弾丸の雨が自らに振りそそぐ。


「はははははっ化け物めッ! 死にやがれッ!」


 死んだふりをしていると楽しそうに追撃の弾を撃ち込んでくる。


 粘体になり、あえてリーダーらしき以外の四肢や胴体に細い針を刺し込む。

 銀の粘体に口だけを出現させ集団に問いかける。


「さて君たちの命は俺が握っているのだがダンジョンの情報を渡せば生かしてやる事も考えないこともない。ああ、俺の身体は特別でね、銃弾は効かないのだよ?」


 情報が出尽くし一人一人を殺していくと、話が違うと泣き叫んでいたが知ったことじゃない。弾薬も支払ったICも元以上、いや膨大な金額を稼いでしまった。

 核石もたんまり倉庫にあったし、ダンジョン産のアイテムも確保した。ミコトちゃん行きだけどな。盗賊退治は儲かりますな。


 駐車場に戻ってくるとバギーの車内に縮こまって隠れている水無瀬がいた。


「ただいま、用事が終わったよ? 逆に儲かってしょうがなかったよ」

 と、笑顔で答えると水無瀬は驚愕の顔をして。


「あんたがとんでもねえ奴なのは分かったよ。ちゃんと稼がせてくれんならそのまま雇ってくれよ」


「意外だな、逃げ出すかと思ってたのだが」


「肝が据わってなきゃおまんまが食えねえよ。せっかくのチャンスなんだ」


「……わかった。雇ってやろう。まずは風呂にはいろうぜ?」


 何を想像したか分からないが顔が少し赤くなっている。軍人がやってくる前にさっさと移動してしまおう。


Resultリザルト↑13127SP







 都市内の高級そうなホテルに宿泊し風呂に入る、浴槽は足が延ばせるほど広くサウナもついている、風呂場から見える景色は高く夜景が綺麗だ。さすがは10万ICもする高級ホテルだな。

 ボロボロになった装備で受付に行くと嫌な顔をされたがICを払うと丁寧な対応になったな、ハンターも来たりするからだろうか。

 装備はすべて廃棄し頭からシャワーを浴びている水無瀬が裸の姿で入って来る。


「どうした? そういうことは頼んだいないが?」


「……体洗ってやんよ」


 水無瀬自身もかなり汚れていたのでお互いに洗いあうことにする、髪の毛を念入りに何回も洗い。体の垢も落とすと若い肌が水を段々と弾いてくるようになる。胸の下も洗っていると顔が俯きこちらを見れないようだ。

 磨きすぎたためか少し肌が赤くなってしまったがそれはしょうがない、浴槽に一緒に浸かり一息ついていると。


「……私は十六歳、大人だ」


「で? ICもたんまり渡したし、当分苦労はしないだろう?」


 水無瀬は背中を向け俺の腕の中に居たのだが、振り返りポツポツと何かを呟いている。意を決したのか俺の方に振り返り跨って来る。


「わたしは強い人に守られたい」


 浴槽内には赤い血液が漂った。







 水無瀬はバスローブを着て大きなベットに猫のように丸まり、うんうん唸っている、よほど恥ずかしかったようだ。

 窓際の椅子に座りプカプカと煙草の煙を吐く。テーブルのグラスの中にはウイスキーが入っておりチビチビと楽しんでいる。


「……痛かった。優しくしろよな」


「それはお前が悪い、思い切りが良すぎだ」


愚痴を吐いているが俺も予想外だったよ、そりゃ痛いさ。


「これであんたの女だ、守れ」


「なんつー現金な女だ、だが嫌いじゃない。力ある限り守るよ」


 逞しい奴だなこいつ、生きることに貪欲なのは好ましい。裏切らなければな。

 水無瀬がバスローブを脱ぎだし放り投げるとこちらに裸体を晒して。


「一回じゃ物足りないだろ、どうぞ」


 顔を俯け体を差し出してくる、若く瑞々しいくやや肉付きは悪いが綺麗な体だ。


「ご相伴にあずかろう」

 

 若く高い声が夜通し部屋の中に響き渡る。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る