第41話俺の運はとても悪いようだ

 上空に上がりハザマの索敵機能と、ミコトちゃんの探知機能を作動させゾンビの動向を探る。確かに大移動とまでいかないが群れで移動しているな。

 

「ミコトちゃん射撃管制お願い。ハザマ武装展開、超長距離射撃装備で頼む。マザーを仕留める」


『狙い撃つちゃうぜぇ~』


『……姉上は最近アニメをよく視聴している。ロングレールキャノンセット』


 二つの大型キューブを展開、半分に割れ砲身が伸びる。二つの砲身が合わさり30m程の長大な砲身になる。エネルギーチューブを機体に接続し充填。目標をターゲティングづる。


『3.2.1.充填完了』


「撃て」


 砲身より射出された質量弾が上空からマザーに向けて撃ちだされた。

 音を切り割き突き進む。轟音が遅れて発生し、地上に爆音が鳴り響くころには目標であるマザーは爆発四散している。



――ゾンビーポイントを獲得しやがりました



[特別指定個体ゾンビの討伐を確認]

[特別報酬ポイントが蓄積されます]


「核石と素材の回収に向かうぞ、周囲のゾンビも掃討射撃たのむ」


『あいあいさぁ~』


『新素材楽しみ』


 現在のハザマは髑髏フェイスのバイザーに機体が二回りほど大きくなっている。がしゃ髑髏の素材をしようして制作したのだがミコトちゃん曰く可愛くないとのことだ。

 磁核石を使っての重力攻撃できる兵器開発はまだ進んでいない。目からビームを撃てるのだがビームガンがあるのに必要かどうか疑問だが、ビーム展開したまま薙ぎ払えるので使い勝手がいいようだ。







 本州に向かうマザー個体を次々と仕留める、中には光の膜を展開したりする異常個体も現れビームを回避しながら接近戦で仕留める。やはり数が膨大ですぐには終わらなさそうだ。


 

 方針を変え本州に進路を向ける、偵察が目的なので速度を落としゆるりと地上を調査していく。西州の端に辿り着くと、海峡が見えて来る。橋は意図的に破壊されたのか知らないが、崩れ落ちている。ちらほらと海を泳ぐゾンビが居るので念入りに殲滅していく。


 この辺りは汚染されていないのか廃墟には様々な植物や蔦が生えていて、ゾンビのコロニーになっている所もある。

 挨拶がてらにビームをありったけ撃ち込むと周囲の植物に燃え広がり、煙を巻き上げる。知能が発達したのか部族みたいな集落もあった。叫び声をあげ、泣き叫ぶ。無慈悲にも淡々とトリガーを引き――殺す。


 一体何の目的でゾンビは発生したのかは分からないが、強者の種属であるのは間違いないだろう、容易に人をゾンビに変質させ進化し増殖する。

 

 人間の生存圏の為だ。死ね。

 まだ俺は人間よりなのでな。家族がいる以上譲ることはない。







 中部地方の上空に到達する。

 ゾンビやマザー個体は発見するも黒柱が見つからない、西州にはあれほどあったはずの黒柱がだ。


「ミコトちゃん探査に引っかからないのか?」


『小癪な事にジャミングされているですぅ~。発信源のモノリスでも回収して解析すれば解除はできるでぇすよ?』


『機体の調子がおかしい……むかつく』


「このまま飛び続けるのもマズイな。この近くに防壁都市があるようだ、そこで情報の収集を行う」


 ハザマを地上に着地させコアに収納、ハンガーからバギーを出し防壁都市を目指す。


『こうしてバギーに乗って風を感じるのもひさしぶりにかんじますぅ~。ホットドックが食べたいですぅ』


『我も食べてみたい。父上買ってください』


「いいぞ。俺の分も出してくれ」


 ZPを使用し熱々のホットドックに齧りつく、なぜ出来立てなの分からないが香りが口内から広がりマスタードとケチャップのバランスが最高だ。ソーセージから溢れ出る肉汁とキャベツのシャキシャキ感が歯ごたえを楽しませてくれる。


 食後は煙草を咥え煙を吹かしながら片手で運転をする。お部屋で煙草を吸おうものならミコトちゃんとハザマに怒られるからな。綺麗にしてるから禁煙だって、喫煙者は肩身が狭いな。


 そのお部屋も高級感溢れる高層マンションみたいな室内になっている。5LDKでリビングには大型テレビにゲーム、黒革のソファーにふかふかの絨毯が敷かれている。

 ミコトちゃんの部屋はぬいぐるみが沢山おいてあり大変ラブリーでハザマは大量のプラモデルや自作でフィギュアやオリジナルのロボット、戦艦を作っている。男の子だなぁ。

 俺の懐かしいボロアパートは俺の自室にある。懐古主義とでも呼んでくれ、あの原点の冷蔵庫はなくしがたいんだよな。







 中部防壁都市の検問所にバギーで辿り着き車両専用の検問に並ぶ、この地域でもハンターはいるようだ。俺の順番になり、源三に発行してもらった西部の身分証を提示する。


「ん、これは……西州の身分証か、こっちに来い」


 止められて連行されるのがデフォルトなのか? また指名手配されなきゃいいがな。クリティカルに運が無いらしいし。


 車を停車させられ尋問室に連れていかれる。部屋には数人の軍人が銃を向けてきている。


「で、この偽造された身分証はどこで手に入れた? 本当の事を言えッ!」


「偽造してないですよ、正規に発行されたものです。何でそう思われたんですか?」


「現在、西州とは船での往来は停止してるはずだ。そもそも港から来ない方がおかしいだろう」


「海峡渡って来たんですよ。ちゃんと身分証調べてくださいよ。データ入っているでしょう」


「確かにはいっている。どうせ盗んだか何かだろう持ち物を出せ」


 こいつら、身分証に顔写真入っているのに横領でもしているんだろうな。


「一つ言いたい、それはお前らの命より大切な行動なのか?」


「お前どんな立場か分かってんか? 逆らえばここに住めなくなるぞ? 早く持ち物を出せ」


 ハンドガンをホルスターから引き抜きこちらの額に突き付けて来る。ここでもこんなのばかりか……。


 五指と副腕を伸ばし目の前クズの手首を切り落し、周囲の軍人の脳天を細く鋭い銀で貫く。叫び声をあげられる前に口を塞ぎ、床に叩きつける。


「さて、ゆっくりと情報をもらおうかね」


 叩きつけられた軍人は震えながら藻掻いている、いちいち拷問するのは面倒なんだがな。

 連れてこられた検問所の詰め所の人間は全て殺しバギーも回収する。顔が割れないように監視システムも破壊しておく。趣味になりつつあるデバイスからICを抜き取り銃器もハンガーに放り込む。

 1ZPでも購入できるが貯め込み癖というやつかもしれない。


 あらかた必要な情報を吐かせた軍人を首を切り取り、ブレイドに付着した血液を振り飛ばす、壁に血液の模様が描かれ現代アートのようになる。


 軍人の持ち物からは強い匂いを漂わせる麻薬が見つかった、他の軍人からもだ。

 

 アジア方面から核石の取引と共に輸入されてくるらしい、ゾンビ共の蔓延る世界で戦意高揚や恐怖心緩和で使用するならまだ話は分かる。娯楽目的での中毒者が都市に蔓延してるとくれば頂けないな。外国によるある意味侵略行為だよなこれ。法律も糞もない世界になったもんだ。

 

 西部防壁都市と比べればこじんまりとした所だが活気はあるようだ、都市は基本海に面しており、貿易とゾンビに襲撃される箇所を限定する目的があるのだろう。


 一番の有益そうな情報が半月以上前に【ダンジョン】ができたらしい。なんでも有用な武器や防具、薬などが手に入るとか。

 詳しい情報を手に入れる必要があるな、黒柱が見つからない事に関連していそうだ。

 

 そこらの住民にギルド会館がどこなのかを捕まえて聞くか。


 みすぼらしい格好をした少年なのか少女なの分からいが座り込んでいるので話を聞いてみる。ストリートチルドレンが多いのかここは。


「いろいろ案内してほしいのだが。お礼はこれにICを入れている。何なら食い物でもいいがどうする? 仕事をするか?」


「……わかった。報酬が先だ。食い物も寄越せ」


 リュックに手をいれ美味しそうな菓子パンと炭酸飲料を購入して手渡す。ひったくるように奪われると、凄い勢いで食べつくしていく。


「お代わりがあるから落ち着いて食べなさい。この都市を案内するだけでいい、ちゃんとICも渡すから落ち着け。取って食おうとしてるわけでもない。これでも稼いでいるからな」


 次に暖かいホットドックを渡す、熱々なのだが食べることに手中して不思議にも思わないようだ。

 

 お腹いっぱいになったようで、お腹をさすり一息ついている。


「名前は? 俺は死人シビトだ。ハンターをやっている」


「水無瀬だ。ほらデバイス寄越せ、個人認証は外せよな」


「もちろん初期化している奴だ。ICは……こんなもんでいいか?」

「……! こんなに渡すなんて何させんだよっ!」


「別に悪い事じゃない、ギルド会館の場所が知りたいだけだ、あとはダンジョンの事かな?」


「あんたみたいな奇特な人間は初めてだよ。わかった知ってることは何でも話してやる。これでもスラム歴は長いからな」


「まず初めにやることがある」


「なんだよ?」


「お前臭いからこれに着替えろよ。水とタオル上げるから体も拭け」


 リュックから定番のパーカーとタオルも渡す。羞恥心は残っているらしく恥ずかしがりながら引っ手繰り陰に隠れて着替えている。


「ほら、これでいいだろ。まあ色々くれんのは感謝してやるよ」


 はすっぱな言動だったが意外な事にやや栄養不足な少女であった。

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