逃げるゾンビは悪いゾンビだ襲ってくるゾンビはいいゾンビだ?

第40話新しい嫁さん来たよ

 阿岸宅へ帰ってくると阿岸親子が揃って居る。これって結婚生活なのか? 家族サービスでも考えた方がいいのだろうか。


「ただいま阿岸。復興はどうだった?」


「おかえりなさいあなた、他のギルドの構成員も吸収してギルド連盟を発足するらしいわ。物資も戦力も私たちのギルドが一番影響力があるからね。一応役場の人間も多少は残っていて部長クラスが戸籍の申請を促していたわね。一日目にしては迅速な方かしら?」


「防衛もギルドがするのか?」


「軍属はほとんどいないわ、ギルドが委託業務で役所から受ける、という形にするか今頃徹夜で会議ね、源三が頭を抱えていたわ」


「ご愁傷さまだな、それとここの家の防衛戦力増やしていいか? タレットを強化しておきたいんだけど。それと阿岸専用の空戦機持ってきたよ」


「ありがとうね、娘たちから聞いたわ支援してくれていたんでしょう? 嬉しかったのよ? 自慢の旦那だわ」


 阿岸が近寄って来て良い雰囲気になっていると。


「えふんえふんっ! 目の前でいちゃいちゃされると溜まったもんじゃないわよ? お母さんもっ!」


「相思相愛でいいとおもうけどなー、お姉ちゃんお父さん取られて悔しいの?」


「そんなわけないじゃないッ! あんたなんか……まあたまにはかまいなさい」


「あら、朱里に亭主を寝取られるのかしら? 負けないわよ?」


「そんな幼い顔で言わないでよお母さん。なんか負けた気になるわ」


 こうしてコミュニケーションを取っているのだろう。それにしても朱里と嫁さんは見た目だけはそっくりなんだよな静里は双子なみだけど。


「数日したら俺は遠征にいくぞ、他の地方の黒柱とゾンビを調べたいからな」


「あら、もう置いていかれてしまうのね? 今日は覚悟しなさいよね?」


「はいよ、明日には機体と武装を出して置くから訓練しろよ? 重要部品のエネルギーキューブも出しておくからな」


 みんなの頭を丁寧になで、夕飯の準備をする今日は鍋でも食べるかな、阿岸と食べた思い出の味だ。







 空戦機を軽やかに操縦する阿岸と飛行訓練をしている、元ギルド長だったため戦闘能力は高いようだ。通信で操縦感を確認する。


「どうだ乗り心地は、武装はまだ許可できないが」


『最高だわ、これならゾンビが来ても怖くないわね』


「マザーにだけは挑むなよ、あくまで防衛だ。娘たちと編隊を組んで飛行訓練するといい」


『私達の方が先に乗ってたのにお母さんの方が操縦上手いなんて……』


『お母さんすごーい』


「お前たちも空戦機に乗り換えたばかりだから操縦に集中しろよ? ボディースーツ着ていても怪我するときはするんだからな」


 全員に銃器や装備、機体の予備機も含めこの家に防衛力を強化している。ギルドの幹部以外には渡すのは危ないからな。軍人はほとんどいなくなったが今度は治安が悪くなりそうだからな。


 煙草に火を付けゆっくりと肺に落とす、煙の向こうには空戦機がドックファイトしている、おい、元気な母ちゃんだな。


「阿岸、元気だな、あんなにしたくせに」


『あら、あなたは元気ないわね? ナニが減ったのかしら?』


「勝てる気がしないよ。どうぞ尻に敷いてくれ。あとその空戦機はお前たちだけ専用機だからな。一応デバイスを改造して遠隔で単純操作ができるし自爆もできるからな?」


『わかったわ、あなた達もパパのプレゼント大切にしなさいよ?』


『『は~い』』







 半月程訓練と自宅の改修をしていた頃、源三に相談があるといわれギルド会館にやってくる、ギルドZKゾンビーキリングはギルド総合本部になり、いくつものギルド及びギルド員が統合、再編された、外観は変わらないが人の出入りが多くなっているようだ。


「呼び出してすまねえ、死人」


「おう、相変わらずしけたツラしてんな」


 何も言わずに日本酒をデスクに置く。


「酒ありがとよ。しけたツラは余計だ、忙しいんだよ。要件は簡単だ、現在の日本の西部地方、俺たちがいる州だな。連絡の取れる全ての地域のゾンビ共の大移動が確認されてい居る」


 簡単な地図と現在の州の状況が簡単に分かるよう記入されている。


「よく他の西部の県に連絡取れたな」


「ああ、ここら一帯のゾンビが誰かさんのお陰でめっきり減っちまってな。仮設の電波塔を大量増設したんだよ」


 現在俺たちが住んでいるのが、日本の西側の領土、西日本で西州地方だ。


「んでようやく通信インフラが仮に整い、連絡が取れたと」


「周辺に面している県の防壁都市までは通信が取れているな、あの機体でガンガン仮設電波塔ぶっ刺しにいったんだよ。」


「ゾンビ共はどこを移動しているんだ?」


「海だ」


 地図を指でなぞっていき最後には海上に辿り着く。


「どうやら方角で云えばアジアなどの他国、それと本土に向かっている、らしい」

「この西州の安全度が増したな」


「嬉しい限りだが、死人が黒柱をこの西州を中心に潰して回ったんだろ?」


「ああ、他の防壁都市にはいかなかったけど進めている」


「それが関係してんじゃねえのかと思ってな。ちなみに死人の情報は上げてねえぞ? やれ、機体よこせなんて言われたら血の雨が降るぜ」


 まあそうだな、たまに救出したにもかかわらず機体を接収しようとしてくる奴が多いな、特に軍人。


「ウチの陸戦機を強奪しようなんて奴も出て来てやがる、そろそろ掃除も考えないとな」


「任せておけ。陸戦機を隠せる場所ないか? 予備機を支給しておくよ、その代わり自爆措置はしておくがな。それとチップをインプラント処理しておくか? 思念で遠隔操作ができるぞ? もちろん機体に個人認識でデバイスの自爆命令も解除できる」


 手元に注射器を数本出すと源三に渡す。


「極小の演算装置を注入すると皮膚下に小さなシートを生成する。バイタルチェックや、機体状況を手首上にスクリーン投影してくれるぞ? 網膜投影するにはこめかみに注入しないといけないから、手首にチップができるくらいならあまり怖くないだろう?」


「それでも十分怖いな。いや死人の事だ安全を考えてくれているのだろう」


 そういうなり手首に短い針を刺す。思い切りがいいな。生成には数秒程度でできる。


「思念制御で表示を命令すれば数値が浮かぶはずだ、網膜投影にしたければ言ってくれ。機体に登録すれば通信が届く範囲であれば起動もできる」


「なんか死人だけ未来を行っているな。これと陸戦機はありがたく使わせてもらう」


「陸戦機っていう名前じゃ味気ないって言うから、阿岸が機体に命名してたぞ? カラーリングをド派手なビビットピンクにして桜丸さくらまるってな。俺に時間があればカスタムとカラーリングするぞ?」


「おおッ! カスタム専用機か、それはすげえな、仕事の息抜きに遊びに行かせてもらうぜ」


「酒をたんまり用意しておくよ」


 酒を飲みながら情報を交換していく、黒柱が関係してるのは明白だな、牧場の家畜が逃げ出したのか何なのか分からないが、接収した施設も三桁を越えている。おかげで兵器開発が進んでいる、ミコトちゃんの下位互換のスレイブシステムを複数産み出して兵器開発製造を任せているからな。もうハンガーじゃなくて中規模の軍事施設みたいになってるな。


 ゾンビの核石の買い取りを物資との交換レートを決め、源三に集めてもらうようにお願いをした。核石が全然足りないんだよ、こういうのは自分で回収するより人手を使った方がいい。まさか使うことになるとは思わなかったけどな。


 核石がないか聞いたところ輸出が停止していて経済が滞っているらしい。

 もちろん全部買わせてもらう、物資払いでな。源三は大変喜んでいたがこれからさらに忙しくなるのを分かっているのだろうか? 源三に専用機の設計図作っておこうかな。


 源三の部屋をでて、街でも散策しようかと思っていたところ、相倉に捕まった。捕まったと言えば言い方が悪いが、大きな胸を腕をしっかりと押し付けられている。


「死人さーん、約束覚えてますよね? 釣った魚には餌を与えないといけないんですよー? ちょっと飲みに行きません?」


 しばらく会っていなかったが妖艶な雰囲気が増しているような気がする。


「わかったよ。おすすめの場所に連れて行ってくれ」


「落ち着いた雰囲気の所ができたんですよー、今日は遅くまで良いんですよね?」


 相倉が頭を肩に擦り付けて来る。女性特有の甘い匂いに誘惑に負けそうだ。


「明るい家族計画。二人で相談しませーん?」

 





 酒の匂いと煙草の煙と淫靡な香りのが漂う部屋に満足そうな顔をした相倉とベットに寝転がる。すでに朝日が差し始め何回したのか分からない部屋の様子だ。

 薄っすらと目を開けると大きな胸を俺に押し付け相倉が抱き着いている。


「おはよう相倉」


「もう、美奈子って呼んでよー、あんなにシタなんだし」


「わかった、美奈子そろそろ支度して帰るぞ」


「はぁい、できてたら楽しみね。うふふ」


 明るい家族か分からないが怒られないように頑張ろう。


「ほら風呂入るぞ」


「はぁーいダーリン」

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