第32話能力の確認は基本だろ!

 期待を鉄扉の前に止めコアに格納する。地面に降り立つとデバイスをかざし開錠する。すっかり自宅の認識になっている門をくぐり抜け玄関を開く、帰って来た家の匂いを嗅ぐと心が落ち着くようだ。


「あれ、姉妹がいないぞ。もしかしてて偵察任務が長引いているのか?」


『デバイスに着信通知が一杯来てるですよぅ? 通信つなげるですぅ?』


「頼む。デバイスなくても通信できるようになったのか、地味に便利だな」


『処理能力上がったので個人のデバイスの位置も把握できるし端末さえあればICの吸い上げも楽勝ですぅ~。すーぱーみことちゃんでぇすよ』


 視界上に通話を表示する受話器のアイコンが表示される。芸が細かいな。しばらくコール音のち、やかましい声が聞こえてくる。


『あんた今どこにいるのよッ! こっちは大変なんだから!』


「家に帰ってきているが大丈夫か? 援護が必要か?」


『静香が怪我してる、まずい状態よ。位置ポイントを送信したわ早く助けてッ!』


「わかった待ってろ、必ず助ける。状況を把握していたい通信はそのままにしてくれ」


『分かったわ、どうやって来るの? 時間はどれくらいかかりそう』


「飛んでいく。時間は数分だ。会話の時間が惜しいので情報を端的にまとめろ。いいな」


『……了解』


 即座に外へ飛び出しコアから機体を出すスラスターを全力で吹かし空へ舞う。


「ミコト案内してくれ。全力だ」


『あいあいさぁ~まかしてくぅださい~』


 帰り道の速度をはるかに超え音速の壁を超えるとソニックブームが発生し爆音を奏でる。すぐさまポイント上空に到着する為、減速し索敵を瞬時に行う。


「自動射撃開始、敵目標を殲滅せよ。出力は調整しろ味方に当てるな」


『ブッコロスでぇす』


 ビームガンを両手に装着し出力を最小限にしゾンビ共を次々に撃ち殺していく、あまりの速度で撃ち殺している為に空からビームが雨のように降り注ぐ。

 安全確保ができ次第、コアに格納、静里の元へ自由落下で駆け付ける。

 着地と同時に砂煙が起こるも黒柱施設から強奪した止血剤にと再生剤を注射器で打つ。朱里はぽかんと顔を空け呆然としているがすぐに正気を取り戻し静里の安全を確認してくる。


「恐らくこれで大丈夫だろう。ゾンビに噛まれたり刺されたりはしてない?」


「多分、殴打で吹き飛ばされているから問題ないとは思うけど」


「念のため抑制剤も打っておこう。ここの責任者は誰だ?」

 

 周囲を見渡すと皆呆然としていた、そりゃ空からビームが降って来て男も飛んでくれば驚くわな。


 源三が出て来てこちらに声を掛けてくる。


「死人助かった、いきなりゾンビ共が活性化しだしてな、うちや他のギルドの大分やられちまっている。死人がゾンビぶっ殺してくれて助かったぜ」


「問題ない、他に怪我人があるならこれを使え。止血剤と再生剤だ。噛まれているならこの抑制剤をうてば間に合うかもしれん。急げッ!」


「分かったッ! 感謝するッ!」


 大量の薬剤を出すと慌ただしく治療に入る。ゾンビ化の兆候は見られないが一晩の経過観察は必要だがな。



 激戦の様だったようで処理したゾンビの核石を集めている、けが人は休息し。穏やかな空気が流れている。俺は眠る静里の横で飲み物を飲み一息ついている。


 再び源三がやって来てギルドのメンバーが次々とお礼を言ってくる、ある程度は俺の存在を匂わせていたのか以外にも受け入れられている。少し気が良くなったので大量の飲み物や軽食を出す、驚いてはいるがありがたく受け取っているようだ。


 苦笑いしながら源三が声を掛けてくる。


「秘密を晒せてしまってすまない。本当にありがとう、ここに近い所に拠点にしている場所があってそこに移動するんだが、護衛を頼めないか? 負傷者も多いんだ」


「了解。気にするな、案外あんたを気に入っている。友人と呼べるくらいはな」


「…………ありがとう」


「ハゲ頭が照れんなよ。さ、行くならでるぞ」


 怪我人を簡易の担架にのせ移動を開始する。ゾンビ共は急に大量に現れたらしくバギーなどが押し倒されている。バギーを起こし各自搭乗すると拠点に移動する。静里と朱里も一緒に俺の運転するバギーに乗っている。


 なぜかもじもじしている朱里が。


「ありがとう死人、もう駄目かと思ったわ。本当に感謝してる…………その、ちょっとはカッコよかったわよ」


「ん、なんだって? もう一度言ってくれないか?」


 ニヤニヤしながら聞き返す。


「あんた聞こえていて言ってるでしょッ!! バカッ!」


 ハンドルを握る腕は叩かないでくれたまえ。







 拠点に着き、廃墟を整備した建物の前にバギーが大量に並べられている。確かに入り組んだ道を入っていき、やや高台にある為拠点としての条件は良さそうだ。

 部屋数はかなりありベットも用意してある。ベットや医薬品も必要か聞くと是非とのことなので備品管理の木山キヤマという青年に手渡していく。


「ありがとうございます。死人さんのことはギルド長に聞いていたもので。本当に何でも出せるんですねッ! 対価は今用意できていませんが必要なものを取り寄せて欲しい時は遠慮なくいってくださいっつ! では治療に行ってきますので」


 見事な敬礼をして走り去っていってしまった。


 空き部屋に次々と高級そうで柔らかいベッドを出していく、おまけで会議室にテーブルにソファー、イスもだしお酒に、缶詰も出す。ちょっと出し過ぎたか? まあいいや。快適な分問題ないだろう。


「ミコトちゃん今俺のステータスどうなってるんだろう?」


『見ますかぁ? 管理はばっちりしてますよぅ~』


個体情報:コア【死人】シビト

ソウル:[見つめる眼Ⅱ]

ソフト:[格闘Ⅱ][情報処理統括MIKOTO][殺人Ⅲ]

ハード:[基礎能力Ⅱ][筋力Ⅱ][同化浸食Ⅱ][耐性Ⅱ][機械獣Ⅱ][巨人の血脈Ⅰ][お部屋Ⅰ][カメレオン]

ツール:[ハンガー]

タイトル:[指名手配][殺しの極意][獣の系譜][鉄の心得][半流動体][射撃の死神] 


残6745ZP 残178SP


「うわぁミコトちゃん榴弾どれだけ撃ったの?」


『2000発以上は撃ってますよぅZPたんまりですぅ』


「恐らくそれがきっかけで何かしらのトリガー引いたのかもな。何の目的で黒い円柱が落ちてきたのかも分からないし、俺たちが原因かはわかないけどな」


『■■■ちゃんはとりあえずゾンビぶっ殺して、黒柱を制圧しろって言ってましたぁ~理由はきいてないですぅ、でもでもZPもSPも情報イデアっていうことはわかりましたよぅ? リソースも情報イデアですしなにか関係ありそうでぇす』


「そうか、普通の人間はZP取得できないからな。一部地域による急激な情報イデアの減少が原因かもな、このシステム自体黒い柱に互換性はありそうだけど■■■のやつ違法に使用してそうだし」


 考えても情報が足りない、依頼者クライアントの要望には応えなきゃな。ステータスは全体的に[Ⅱ]に上がっているな、タイトルも殺人が付いていたものが消えて[殺しの極意]にまとまったのかな? 芋スナイパーが無いのは少し寂しいね。

 

 [基礎能力Ⅱ][筋力Ⅱ]が上がることにより今ならあの巨人と殴り合える気がする。とうとう超人になってしまったようだな。ツールの[ハンガー]はよくわからない俺外付けでくっつけられたのか?


「ミコトちゃんが[情報処理統括MIKOTO]になってるけどどんな感じ?」


『なんかすっごくなってるかんじでぇす』


「うん、ミコトちゃんがすっごいって言うならすっごいんだろうな」


ソフト面を全然技能選択していなかったから少し見てみるか。


[ソフト][ソート]

[格闘Ⅲ]

[ゆあなんばーわん?]10000ZP

[射撃Ⅰ]

[ひつよう?]1000ZP

[武器Ⅰ]

[みにつけばなんとなくうまくなる]1000ZP

[芸術Ⅰ]

[うたえばいいこえでるがっきも]

[体術Ⅰ]

[よけるのがうまいね]1000ZP

[隠密Ⅰ]

[かくれんぼにいいかも]1000ZP

[生産加工Ⅰ]

[かじする?ぶきせいせいにはいいかも]1000ZP

[機械操作Ⅰ]

[ミコトちゃんにおすすめ]1000ZP

[機械不正操作Ⅰ]

[ミコトちゃんにおすすめ]1000ZP

[システム構築Ⅰ]

[ミコトちゃんにおすすめ]1000ZP


……ミコトちゃんおすすめされてるぞ?


『これほしいですぅ~機体の操作にハッキングの補正がかかりすぅ~』


「わかった。ミコトちゃんが稼いだんだしこれを取るね? あと[生産加工Ⅰ]は俺の機体に搭載できる武器を加工できるかもしれないから取ろうかな」


[生産加工Ⅰ][機械操作Ⅰ][機械不正操作Ⅰ][システム構築Ⅰ]を取得、これは内的変更なのから体への変化はない。


残2745ZP 


 次は一応確認するがハード。外的要素だな。


[四腕四目]

[うでとめがふえるきもい]1000ZP

[鋼の血潮]

[からだがぶきになるかも]1000ZP

[騎兵のプライド]

[らんすしようにほせい?]1000ZP

[竜の本能]

[りゅうっぽいかっこいい]2000ZP

[射突の心得]

[とっつきができるろまんだね]500ZP

[細胞活性]

[なんかつよくなる?]1000ZP


 身体能力を十全に把握していないために大幅な変更しても分からないんだよな。[射突の心得][細胞活性]なら分かり易いが。[竜の本能]はブレスが吐けて空でも飛べそうだよな。機体がある状態でそれ今必要? なるので今回は見送りだな[鋼の血潮]もランスもブレイドも十分そろってるためパスだ。身体をいじり過ぎると十全に使えなくなりそうだから基礎能力を中心に伸ばしていきたいところだ。

 [射突の心得][細胞活性]を取得。試運転が楽しみだ。


残1245ZP


 今気づいたのだがこれはZPという名の情報イデアを■■■さんが作った設計図に当て嵌め加工してるのではないだろうか? ZPを使用するもしくは消費させることに意味が……そのことによって黒柱が召喚されて……まあ不都合はないし気にするまでもないか。


 SPはそもそも人間とゾンビの情報イデアは全くの別物で感染すると消費させるべき感染者(ZP)になるからあんなに殺せと。感染することによって情報イデアが浸食されるのか?

 

 蘇生もZPは有機物無機物関係なしに生成できるがSPがないと人間の情報イデアが生成できないのだろうな。とするとそれは本人なのか?


 これで骨のかけらが必要ないなら魂の存在と自我の連続性が証明ができなくなるぞ。ガフの部屋が存在してアクセスして蘇生とかならわかるが。今度■■■さんに聞いてみるしかないか。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る